公認会計士がインサイダー取引疑惑・不正発覚を避けて工作活動も

2008年03月04日 08:00

株式イメージ職員数では国内最大手の監査法人である【新日本監査法人】は3月3日、同社の所属会計士1人が株式のインサイダー取引をしていた容疑がかけられ、証券取引当監視委員会から調査を受けている事実を明らかにした。市場の公正さを監視するサイドにある公認会計士によるインサイダー取引が発覚したのは今回がはじめてと見られている(【発表リリース】【参照:ブルームバーグ】)。

スポンサードリンク

発表リリースや各種報道によれば該当する公認会計士は2007年6月末まで新日本監査法人に所属していたが、当人が担当していた上場企業2社の財務情報を元に、株式の売買を行い利益を得ようとした。うち2006年2月に行なった1社(大証ヘラクレス上場のサービス業)の株式300株の売買では300万円の損失を出したが、2007年3月に行なったもう1社(東証2部上場の情報通信会社)の株式261社では空売りを行い、35万円の利益を得ている。

もちろんこの行為は職務を通じて入手した、その時点では公開されていない情報を元に行なったインサイダー取引であり、違法行為。当人は内部調査において「他の株取引で損失を出し、誘惑に駆られてインサイダー取引に手を染めてしまった」と違法性を認めているという。さらにリリースにはないが取引発覚を隠ぺいするために、知人女性の口座を使い売買していた。その上監査法人側では事前に各構成会計士に対し株式の取引経験の有無を報告させているが、当人は経験豊富であるにも関わらず「なし」と申告していたとのこと。

3日の記者会見で新日本監査法人側では「市場関係者に誠に申し訳なく心からお詫び申し上げる」と謝罪すると共に、リリースにもあるように弁護士10人ほどで構成する外部調査チームを編成して全構成員を対象に株式取引に関する実態調査を行ない、さらに外部有識者による第三者委員会を設置し、全社員を対象に調査や検討、再発防止策の取りまとめを行なうと発表している。また、同監査法人側の信用を失墜したとしてこの会計士に対して損害賠償請求などを検討していく方針を示した。

一部報道では該当会計士に対する課徴金の勧告が証券取引等監視委員会から金融庁に行なわれる動きがあり、さらに新日本監査法人に対する業務停止命令の可能性もあるとのこと。それとは別に日本公認会計士協会も、監査を担当する企業の株の取得を禁止した倫理規則に違反する疑いがあるとして、会計士の処分を検討しているという報もある。いずれにせよそう遠くないうちに、それぞれの団体から正式な発表があるはず。

例えるなら大学入試試験を作成した教授が、自分の子どもを合格させるためにこっそりと問題を教えたようなもの。あるいは警備員が自ら店の商品をフトコロに納めたとでも表現できようか。オマケにインサイダー取引をして損失まで出しているという(二回目はその損失を穴埋めするまでには至らなかったものの利益を出しているが)、モラルハザード云々の言葉で片付けるにはあまりにもお粗末で情けないお話ではある。

公認会計士の資格を得て日本最大手の監査法人に所属するためには、長年の勉強をはじめさまざまな努力が必要だったはず。それらを棒に振るようなことを「誘惑にかられた」とはいえ平気でしでかすあたり、当人の「人間力」の限界だったのかもしれない。

Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...

スポンサードリンク



 


 
(C)JGNN||このサイトについて|サイトマップ|お問い合わせ