アスコム、民事再生へ
2008年03月01日 12:00
出版業界紙【新文化】が伝えるところによれば、『借りたカネは返すな!』などのベストセラー、NHKの各種テキストブックを出版していた【株式会社アスコム】が来週にも民事再生手続きの申し立てをすることが明らかになった。2月21日から停止していた事業については3月上旬をめどに再開を目指すという。
スポンサードリンク
アスコムは2002年7月に株式会社アスキーの一般書籍編集部門が核となって設立された、出版事業会社。現時点での資本金は1億8050万円。当初は「アスキー・コミュニケーションズ」という名前だったが、アスキーとの資本関係が解消された2003年以降はアスコムに社名を変更している。NHKの「英語でしゃべらナイト」「ためしてガッテン」などNHKの人気番組の定期刊行化を押し進める一方、「借りたカネは返すな!」「「1日30分」を続けなさい!」など時節にのった書籍を多数発刊していた。
しかし出版業界全体の不況の波には勝てなかったようで、【一部報道(IT media)】によれば2007年3月期の売上は前期比-14%の15億1000万円、特損で1億7400万円を出し、当期利益は1億9500万円の赤字に転落している。
2月21日には営業のストップと東京麹町にある事務所が閉鎖され、社員が前日付けで解雇されたと報じられると共に、取引先や著者などに説明を行なっているとも伝えられた。これに伴い大手書店では同社の書籍を引き上げる動きも見られた。
アスコムからは正式な発表が(公式サイト上に)なく、まだ具体的な動きもないので帝国データバンクのサイトなどにも記載されていないため詳細は不明だが、元記事によれば
・現在の負債総額は14~15億円
・関係者らは民事再生についてはおおむね了解
・事業停止は破産も視野にいれつつスポンサー企業を探していたため
・10月に企画方針を変更した際に月次収支が悪化。それを見たメインバンクが1月末からデフォルト(借金の担保としている口座の凍結)をかけたため、現預金が動かせなくなった
・下期(10~3月)の売上計画では9億2000万円、通期では17億~18億円の増収計画を提示したがメインバンクの理解を得られなかった
・支援企業は現状では未公開
といった状況。
民事再生法適用の場合、会社更生法のそれとは異なり、基本的に経営陣は責任を問われるものの退陣させられることは無い。また、会社更生法などに比べれば手続が簡素に済み、経営状態が手をつけられない状態になる前でも申請できるのがポイント。破産との綱渡り的な状態ではあったものの、取りうる手としてはベストな選択肢と思われる。
具体的な動きについては来週以降に見られることになるだろう。奇しくもアスコムの分離元ともいえるアスキーの本体も、4月1日付けでメディアワークスと合併することが正式に決定している。アスコムを報じる一部メディアの分析では同社の最近の傾向として「話題に登ってもヒットセラーを生み出せなかった」と表現している。それが正しいのかどうかの判断は各自の判断にお任せするが、出版業界を取り巻く環境が大きく変化していることだけは間違いあるまい。
■関連記事:
【マガジンとサンデーが共同戦線・「探偵モノ」大作過去作品を増刊で発売】
【角川GHD、アスキーとメディアワークスの合併を承認・社長交代も発表】
(最終更新:2013/09/07)
スポンサードリンク
ツイート