GDH、高画質動画配信で金額が自由に決められる「寄付金制」を導入
2008年03月31日 19:30
【GDH(3755)】は3月31日、グループ会社のゴンゾ(GONZO)が制作する新作アニメーションのインターネット上での海外向け配信で、寄付金制(ドネーション、donation)を導入すると発表した。今春放送予定の『ドルアーガの塔~the Aegis of URUK~』『ブラスレイター』を海外向けに同日配信するが、動画配信サイト【Crunchyroll】における高画質ファイルダウンロードでこの「寄付金制」を採用する(【発表リリース】)。
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●良いものには対価で評価・そして評価が作品を育てる
この寄付金制導入では高画質な映像の視聴を希望するユーザーが、それぞれのエピソードに対して「相応しいと考える対価」を「任意に設定」。その金額を支払うことによって、ファイルをダウンロードできるというもの。ユーザーは視聴するアニメーション作品に対して、その価値を定価ではなく「任意の寄付金」という手段で示すことが可能となる。
多くの人に良い作品と評価された、あるいは気に入られた作品にはより多くの寄付(=対価)が集まることで、採算性が上がり、ユーザーの意見を取り入れた形で続編の制作などの可能性も高まるという目論見だ。
今回発表されたビジネスモデルの概念図。寄付金を支払う視聴者側はその額の多い少ないで、作品に対する評価と将来への期待を伝えることができる。
Crunchyrollはコミュニティ型動画配信サイトだが、広告をストリーミング配信することで広告収入を得て、「インターネット配信で作品製作側が、インターネット上の動画配信を用いて利益を得られるビジネスモデル」の実現を目指している。GDHでは今回このようなサービスを推進するCrunchyrollの動画配信サイト上で、コンテンツ企業としては初めて動画コンテンツへの寄付金制を採用。インターネット配信による新たな収益モデルの可能性を検証する。さらに日本のコンテンツビジネスが世界のアニメファンによって(寄付金という形で)育成されることを期待していると述べている。
Crunchyrollの最新情報によると3月21日の時点で、4月4日から『ドルアーガの塔~the Aegis of URUK~』が、4月5日から『ブラスレイター』が配信されること、従来の手法通り配信は無料だが同時に広告がストリーミング配信されることでクリエイターへの手助け(収益)になること、さらに「今はまだお伝えできないがもっと'他に'すばらしいものがあるだろう」と報じている。おそらくは今回GDHから発表された「寄付金制度による高画質版配信」が、その「他のすばらしいもの」に該当するものと思われる。
●寄付の方法は?
インターネット上の少額課金は世界中どこでも利用者・サービス提供者共に頭を抱える問題。欧米ではPayPalなどの仕組みが普及しており、それなりに有効な手立てとして用いられている。今回のリリースでは具体的な寄付方法は明記されていないが、おそらくはPaypalなどが用いられるのだろう。
一方日本では手数料の高さや手間がかかることなどから、少額決済の手法は普及率が今ひとつ。銀行口座を公開して寄付金を応募するという手法もあるが、「勝手に振り込み詐欺」に会う可能性も否定できない。今回あえて海外での寄付金制の導入を実施するのも、「少額決済の普及度」の違いがカギとなっているものと思われる。
ネット上でデータとしてやり取りがしやすいポイント(たとえばマイレージやアマゾンポイント、楽天ポイント、Wiiポイントなど)の換金性の柔軟さと広範囲な普及、そしてボタン一押しで寄付ができるような仕組みが広まることを望みたい。そうすれば、それこそ画面の上から10円玉や100円玉を投入する感覚でコンテンツを購入したり、今回のような「寄付金によるコンテンツビジネスの運営」も容易にできるようになるのだろう。またこのような「仕組み」を世に送り出すことができれば、日本における少額決済のリーディングシステムの地位を占めることもできるに違いない。もちろん評価に耐えうるだけの、良質な作品を送り出すことが前提条件だ。
……将来に向けた育成のための寄付金というのなら、擬似的な株式方式やファンド結成方式にするという手もあるのだが、それよりも気軽にということなのだろう。
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