「透明人間」あらわる!? 決定的瞬間を撮り続ける芸術家

2008年02月24日 12:00

透明人間!?イメージ自分の姿を透明にして他人から見えないようにする「透明人間になる仕組み」は昔からSFや漫画の世界で描写されてきた。それら小説に登場するような「包帯を取るとまったく透明に見える透明人間」が実在したらどうだろうか……それをリアルなシーンで再現した芸術家が【Daily News】にて紹介されていた。彼女の名はDesiree Palmen嬢。44歳のオランダ人である。

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エルサレムでの撮影写真。子どもの「ちょ、何アレ」という声が聞こえてきそう。
エルサレムでの撮影写真。子どもの「ちょ、何アレ」という声が聞こえてきそう。

「透明人間」といえば、最近のSF漫画では『攻殻機動隊』に登場する「光学迷彩」が有名。このスーツを着れば自動的に周囲の景色に溶け込み、見た目がまったく透明に見えてしまうというもの。この「光学迷彩」についてはイギリス軍をはじめとして各国軍も真面目になって研究に取り組んでいる。現在考えられている論理としては、忍者の「隠れ蓑(かくれみの)術」のように周囲の景色と同じ色柄でコーティングするのが一般的。だが技術のハードルは高く、静止状態ならともかく動いているものを「透明に見せ続ける」のは容易ではない。少なくとも「カメレオン」のようなものを創り上げるには、もう少し時間と技術の進歩が必要。

カメレオンが森の中で自分の姿を隠すように、人間も同じ仕組みで透明人間のように見せることはできないだろうか。もしそれが出来たら、とても面白いシーンが演出できるだろう。そう考えたのがDesiree Palmen嬢。

彼女は実際に光学迷彩を作るわけではない。彼女の作品が「静止画」であることから気が付いた人もいるだろうが、このシーンを撮影するために彼女はわざわざ「人物が背景に溶け込むような色に服(レインコートのようなスーツ)を彩っていく」のである。要はカメレオンが元から持っている体内の仕組みを擬似的に、手作業で再現したわけだ。

調べ物をする透明人間。本の部分の描写は大変そう……
調べ物をする透明人間。本の部分の描写は大変そう……
疲れ果てて居眠りをする透明人間。彼らとて人間なのです。
疲れ果てて居眠りをする透明人間。彼らとて人間なのです。

具体的な工法も元記事で説明されている。シーンを撮影する場所でまずは写真を撮り、情景を確認する。そしてその写真を元に、特定のポーズで対象となる人物が背景に溶け込むよう、綿製のスーツに背景をアクリル絵の具で描いていく。そして撮影現場に戻り、決めてあるポーズを取って見た目を調整し、「カメレオンのような状態の透明人間」を撮影するわけである。今流行りのコンピュータグラフィックで修正して、透明人間に見せるのではなく、あくまでも手作業で見せるのが「芸術家」たるゆえん。

電車での1シーン。彼らなら車掌さんに「お客さん、終点ですよ」と起こされることもない?
電車での1シーン。彼らなら車掌さんに「お客さん、終点ですよ」と起こされることもない?
透明人間同士のカップル。人目も気にせずいちゃいちゃできます(笑)
透明人間同士のカップル。人目も気にせずいちゃいちゃできます(笑)

実際に撮影している現場では、多くの人が周囲を取り囲み、関心の目で彼女達を見守るという。慌てたり、驚いたり、関心を持つなど反応はさまざまだが、ほとんどの人が「(周囲に溶け込んで)目に見えなくする衣服を着る、という考え方には好感を持っている」とのこと。

彼女は語る。

「現在は監視社会。どこにいても監視カメラによって見守られているようで、安心感はあるけれど同時にコントロールされているような気分にもさせられる。人の中には『監視の目から逃れたい』という願望が生まれているのよ。だから私の作品は、『透明になって自由になりたい』という、みんなの願望をそのまま表したようなものなの」


彼女は現在エルサレムやロッテルダム、ベルリンの通りに定期的に「作品」を送り出しているという。また【彼女の公式サイト】では、さまざまな場所での作品を堪能することができる。

彼女は「詳細な描写で見た目をごまかす」ことに高い関心を寄せているようで、これら「擬似光学迷彩」「透明人間もどき」なショット以外にも、「子どもが寄り添っているように見える」シーンなども作品として展開している。

前述しているが、最新のコンピュータグラフィック技術を用いればもっと高精度で動きのある「透明人間」を描写し、動画を創り上げることも出来る。しかしそれをわざわざ「実物」で再現し、作品に仕上げるのが芸術家たるゆえんであの、心ひきつける魅力を生み出しているのだろう。


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(最終更新:2013/09/07)

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