英政府、サブプラ問題で窮地のノーザン・ロック銀行を国有化で救済決定
2008年02月18日 06:30
【BBC News】や【Northern Rock銀行のサイト自身】が伝えるところによるとイギリス政府は2月17日、経営危機に陥っているイギリスの中堅銀行ノーザン・ロック(Northern Rock)銀行の一時国有化を決めたと発表した。同銀行はサブプライムローンに端を発する金融市場の混乱を受けて昨年9月に預金取り付け騒動が起き、イギリスの金融業界の中でも渦中の存在として注目を集めていた。
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同銀行は2007年9月にイギリス国内としてはほぼ100年ぶりの取り付け騒ぎを起こしている。この際混乱を抑えるためにイギリス政府側はノーザン・ロック銀行の預金を全額保護する方針を表明、多額の公的資金の融資で支えていた。
ノーザン・ロック銀行の救済については政府が民間からの再建策を募集。ノーザン・ロック銀行経営陣によるMBO(マネジメント・バイ・アウト、経営陣による買収)と、ヴァージングループによる救済が提案されていた。しかしながらイギリス政府側はすでに250億ポンドを投入しており、最終的には550億ポンド(11.7兆円)の公的資金が必要となる模様。この巨額の借入金に対する返済計画などの調整がとれないことから、混乱を早期に収拾させるためには政府自らが国有化することがベストと判断、救済に乗り出すことを決定した。
ノーザン・ロック銀行公式サイトのトップページ。「通常通り業務を行なうので心配するな」などと説明している
サブプライムローン問題をきっかけとする世界的な金融市場の混乱では、金融機関が中東をはじめとする政府系ファンドや大型の機関投資家から増資を受け入れて資本を増強する例が多数見受けられている。しかし該当国の政府が国有化を行なうのは、今件が初めてとなる。
ただし今回の国有化決定には、アプローチをかけたバージングループはもちろん、イギリスの野党からも反対の意見が挙がっている。もちろんノーザン・ロック銀行の株主からは賛成の声が挙がるはずもない。
●国有化は正しい選択なのか?
サブプライムローン問題の発火点となったアメリカ自身で金融機関への公的資金の投入が行なわれないのは、経済活動の自主性や自己責任問題という「根本的な理念」がくつがえされる可能性があるから、という考え方がある。何かあるたびに政府が手を差し伸べるのでは、金融機関に「何をしてもいざとなれば国が『お金を出してくれる』」とばかりになり、モラルハザードを引き起こしかねない、というものだ。
一方でアメリカが公的資金を大規模に、早期に投入していれば、現状のような世界規模の金融信用不安は広がらずに済んだのではないかという批判もある。また、日本でも2003年前後にピークを迎えた「金融恐慌」で転換点となり、経済の回復のスタートポイントとなったのもりそな銀行への公的資金の投入(による安心感の市場への提示)だった([このページ(nhk.or.jp)は掲載が終了しています])。
今回のイギリス政府の決断が正しいものとなるのか、それとも反対派の意見にあるように「民間による救済策」の方がよりよい手段だったのか、それは今後論議され、状況の変化によって判断されることだろう。
また今回の行動を市場が「政府が自ら乗り出さねばならないほどイギリスの金融機関は危機状態にあるのか」と悲観的に見るのか、「政府が本腰を入れて救済と事態収拾に立ち向かうと決断したのだから、経験則から考えると事態の好転は間違いない」と好意的に解釈するのか。現段階では分からない。今後の市場動向を見極める必要があると思われる。
なおノーザン・ロック銀行の公式サイトのトップページでは、上記にあるように「通常業務を行ないます」とのメッセージと共に「政府は顧客と納税者の利益のために同行を一時国有化することを発表した」「顧客には何の影響も与えない」「政府保証を受けているのであなたの貯金は安全です」「各種金融商品に関する条件などは一切変更がありません」「すべての部局は通常通りの業務を行ないます」などと説明文が記載され、顧客に安心するよう伝えている。
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