カロリー表記はダイエットにプラスかマイナスか
2008年02月17日 12:00
日本の外食チェーン店ではメニューにカロリーと塩分の表記を行なうのがごく当たり前になっている。OLをはじめとした女性陣、カロリー制限をしている人たちなどへの配慮もあるし、健康志向のメニューを自慢にしているお店では「これだけの美味しそうなメニューなのにカロリーはたったのこれだけ」というアピールもあるのだろう。似たような仕組みが法律としてアメリカのニューヨーク市で導入されようとしているが、それが物議をかもしているのだという(【TheNewYorkTimes】)。要は「肥満対策にカロリー表記をしろというけど、逆効果じゃないの?」というお話のようだ。
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ニューヨーク市では3月末までにチェーンレストランに対し、メニューにカロリーを併記しなさいとうお達しが出されている。「ダイエットが必要な人に対しカロリーが分かるようにし、彼らを手助けするようにしなさい」「余分なカロリーを取らないよう、彼らに注意を与えなさい」という意向に基づくもの。
しかし肥満協会(肥満対策に従事する医師や科学者の集まり)のDavid B. Allison博士はこのニューヨークの方針に異議を唱えている。いわく、「高カロリー食だということがカロリー表記ではっきりしてしまうと、彼らはいっそうその食品を欲しくなり、口にしてしまう。まるでアダムとイブが禁断の果実であるリンゴを口にしたように」。
彼が以前に示した調査報告書などで博士は次のように語っている。
・肥満で食事療養をしている人に対し「高カロリーだ」と明示した方が、より食べすぎの傾向を示した。
・ニューヨーク市では仕事の合間に、ストレス発散のために食事を取る人も多い。だからカロリーが高い食品ほど「自我を抑えられずに」ストレスを解消しうるため、食べたいという誘惑が強いかもしれない(。それゆえにカロリーの明記は逆効果になりうる)。
・高カロリーの表記は一部の人にとってはカロリー過剰摂取の抑止力になるだろう。しかし低カロリー食を実践していた人のほとんどが、「十分な満腹感を得ることができず」後に高カロリー食に転向していることを考えれば、その抑止力も短命に終わるだろう。
そしてニューヨーク市の決定にはAllison博士は次のように冷ややかな反応を示している。「何が起きるか分からないね。予想するのは難しいよ」。
もちろんAllison博士の主張は肥満協会内でも大きな論議の対象となった。協会内ではむしろ博士の主張は少数派で「レストランへのカロリー表記は推し進められるべきだ」という意見が多数を占めている。
また、ニューヨーク市の衛星局長Thomas R. Frieden博士も、Allison博士のような主張に対し冷静に反応している。いわく「世の中には色々な意見があるものだ」「世の中には100%確実なものはない。けれども今回のカロリー表記の決定はきっとうまくいくという期待がある」と。
Frieden博士は次のように述べ、その具体的に起きるであろう「成果」を説明している。
「今回の法律施行で前菜の横に'2700キロカロリーです'という表記をしなくてはならなくなったレストランは、きっとその前菜そのものをメニューから除外するでしょうね」
少なくともレストランに対してはFrieden博士が主張するように「あまりにも高カロリーな料理が(配慮のため)メニューから削除される」という点で、ダイエット対策にはプラスになるのは間違いないだろう。ただしそれ以降の、お客一人一人の消費行動がどのようになるのかは、予想がつかない。
果たしてAllison博士の主張が正しいのか、それともFrieden博士やニューヨーク市などの主張通りカロリー表記はダイエットの促進をうながすのか。今後のニューヨーク市の動向に注目したいところだ。
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