「着ているだけで携帯電話を充電できるシャツ」が創れる技術登場

2008年02月16日 19:30

発電シャツイメージアメリカのジョージア工科大学は2月13日、ピエゾ素子効果を用いた、圧力や振動などの力を受けると発電する特殊な繊維を開発中であることを発表した。風や音など微細な作用で動くものでも発電ができ、例えば布の繊維に織り込んで「着ているだけで携帯電話を充電するシャツ」などが作れる可能性もできるという(【発表リリース】)。

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リリースによれば研究チームは酸化亜鉛のナノワイヤー(ごく細いワイヤー)で覆った2本の繊維を2本作り、一方のブラシ部分に金をコーティング。繊維のブラシ同士が触れ合うと、圧電効果で電気が発生することを確認した。これは振動や圧力などの力が加わると電圧が発生し、逆に電圧が加わると伸びたり縮んだりする「ピエゾ素子(Piezoelectric-semiconductor)」効果を利用している。この実験では電流4nA、電圧4mVほどの発電能力が確認できたという。研究チームでは1平方メートルのピエゾ素子による布があれば、80mWの発電が可能と試算している。

実験に用いられた2本の繊維
実験に用いられた2本の繊維
ブラシ部分の電子顕微鏡による写真
ブラシ部分の電子顕微鏡による写真
実際に配線したピエゾ素子による発電繊維のイメージ図
実際に配線したピエゾ素子による発電繊維のイメージ図

この技術は現在上記イメージ図にあるように、複数のナノワイヤーを結合させ電流・電圧を増加させる試みが行われている。これらの素子結合帯でシャツのような洋服を作れば人が生活している普通の動きで電力が出来、「着ているだけで携帯電話を充電できるシャツ」の製作が可能となる。その他風や音、自動車が通り抜ける際の振動でも機械エネルギーとして受けて、電力に変換できる。まさに「エネルギーの有効活用」といったところだ。

ちなみに「ピエゾ素子」とは圧電素子とも呼ばれ、外圧で変形する特徴を持っている。現在でもインクジェットプリンタや圧電スピーカー、スキャナなどの精密機器で用いられている。

発電量、洗濯できない……ハードルはまだまだ高い

現在最大の難関は、シャツの場合における洗濯方法。酸化亜鉛が湿気に弱いため、シャツやジャケットを作ると一度の洗濯でその効果がなくなってしまう点。研究チームでは「洗濯機の水分から保護される仕組みを考えねばならない」と述べている。

また当サイトの読者の方ならご存知の通り、ピエゾ素子による発電シャツの開発はすでにオーストラリアでも同国軍の支援を受けて開発が進められている(【歩いているだけで携帯電話が充電できるシャツが出来る……かも?】)。こちにもやはり「重たい」という重量の問題のほか、洗濯が出来ない問題を抱えている。

今回発表されたレポートでは試算として1平方メートルあたり80mW(0.08W)と説明されている。これから換算すると、標準の白熱型40W電球をつけるには500平方メートルが必要となる。縦横22メートルの大きな布のピエゾ素子でようやく電球1個分ということだ。現行の効率では、充電シャツサイズではせいぜい発光ダイオード一つ分の電気が関の山で、携帯電話の充電など無理かもしれない。

しかし今後技術がさらに進み発電効率も高まり、洗濯や重量などの問題も解決できれば、「電池切れを心配せずに携帯電話をはじめとした携帯情報端末を利用できる日」がやってくるだろう。そしてそれはおそらく、皆が求めている未来図に違いない。そして先のオーストラリアの記事にもあるように、軍でも重大な関心を寄せている(その理由もちゃんとある)。案外その日が来るのはそう遠くないのかもしれない。


■関連記事:
【外出先での電池切れ経験は7割……携帯電話と充電器事情】

(最終更新:2013/08/11)

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