【更新】地上波テレビ放送のネット配信は二つのニーズ「今週見逃した作品」「昔の名作」

2008年02月16日 12:00

テレビイメージC-NETは2月15日、動画コンテンツに関する調査結果の一部を公表した。それによると、インターネット上で動画コンテンツを利用する場合の要望について、「今週見逃したテレビ放送の再配信」と「過去の著名なテレビ番組の配信」の2項目で特にニーズが高かったことが明らかになった。テレビ局制作のコンテンツのネット動画配信で人気を集めるためのヒントもここにあるものと思われる([発表ページ])。

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「地上波テレビ」の権威と人気は絶対的

今調査は2月8日と9日、18歳以上のインターネットユーザー1000人に対して行なわれたもので、男女比は1対1。年齢構成比は29歳以下・30代・40代・50歳以上でそれぞれ1対1。

「動画コンテンツ」という言葉は今や「インターネット上で配信される動画」というイメージがあるが、「動画」の「コンテンツ(=内容、構成物)」であり、テレビや映画などネット以外から配信されるものも含まれる。それらも含めた「動画配信サービス」で現在利用しているものの中から多いものを3つ選んでほしい、というアンケートではやはり「テレビ」がもっとも高い得票率を得た。

■現在利用している動画配信サービス(テレビなどネット以外のメディア含む)で多いものを3つまで

・地上波のテレビ番組放送……75%
・インターネットの動画配信サービス……37%
・CSやケーブルテレビの多チャンネル放送……25%
・ワンセグ放送……18%
・インターネットにつなげたテレビ向け動画配信サービス……6%
……etc.


今調査が該当アンケートや電話・書面調査ではなく「インターネット経由で行なわれた」ということを考慮すると、世間全般の傾向と比べればインターネット関連の数字を多少かさ上げする必要があるだろう。それを考慮しても、やはり「地上波テレビ」の権威と人気は失われていないことが分かる。

「地上波テレビ」にはスイッチ一つですぐ視聴できる「お手軽さ」や「整然とされたラインナップ」、そして何より「プロが作った品質」があるのがポイント。最近は一部で品質について逆転現象が見られるし、素人が作った「カオス的」なものの中にも光り輝くものが数多く見受けられるようになったが、「ひとくくりまとめて見た時の安心感」は未だに「地上波テレビ」に軍配をあげねばなるまい。

期待の「地上波テレビ」のネット配信、ニーズは「今週見逃した作品」「昔の名作」

さて、元記事にもあるように今春から改正放送法が施行される予定である(【関連:総務省資料】)。これに伴い地上波テレビ局がこれまでに制作・放送した映像動画のインターネット配信が本格化する勢いを見せている。

法律の施行によって地上波テレビ局が動画配信をしやすくなった場合、過去に制作・放送した動画コンテンツをどのようにネット上に配信してほしいか。「ネットユーザーの」リクエストとしては「今週見逃した作品」「昔の名作」の2項目のニーズがもっとも高かった。

■地上波テレビ局の制作・放送した動画コンテンツをネット配信サービスで見る場合、どのように配信してほしいか

・過去の著名なテレビ番組を放送してほしい……53%
・最近(過去一週間前後)放送されたテレビ番組を放送してほしい……51%
・テレビ放送とほぼ同時に同じ番組を放送してほしい……28%
・テレビ番組と連動したコンテンツを配信してほしい……20%
・テレビ局で作ったネット配信専用コンテンツを配信してほしい……15%
・テレビ局が制作、放送した動画コンテンツをインターネット配信サービスで見たいと思わない……14%
・その他……1%


過去の名作番組のネット配信化は
テレビ放送動画を
写真や文章のログと同じような
知の蓄積データ」の座に
押し上げる

前者「過去の著名なテレビ番組を放送してほしい」は、地上波テレビ局の作った作品を書籍などと同じ「蓄積されうる情報知識(知の蓄積データ)」と見なし、新聞の圧縮版やネット上のログと同じように、いつでもデータとして参照したいというニーズから来るものだろう。現行法及び現在の世情では、過去のテレビ放送をライブラリ化しているところはほとんどなく、個人がビデオなどに収録したものを半ば非合法的に動画投稿サイトにアップロードされているに過ぎない。これが仮に各地上波テレビ局などが独自に「利用しやすい形で」インターネット上の動画コンテンツとして提供すれば、新聞記事やログデータなどと同じレベルで、しかも資料性の極めて高い「知の蓄積データ」として扱えることになる。

一方「最近(過去一週間前後)放送されたテレビ番組を放送してほしい」はむしろ「資料・データとしての動画利用」ではなく、地上波テレビを常日頃から利用していた人の「見逃し視聴」を求める人の声だろう。多くの人は月曜から日曜までの一週間でライフサイクルを過ごしている。平日に見逃した番組をまとめて土日に観たい、もしできるのなら利用したいと考える人も多いはず(ビデオなど各種映像レコーダーでそのような使い方をしている人も多いだろう)。

仮にNHKで平日早朝15分間放送されている「朝ドラ」が、週末に「今週一週間放送された分を一挙お見せします」と、ライブラリ的に公開されるような仕組みが出来上がれば、「水曜の朝、忙しくて見逃しちゃったので、つながりがよく分からない」と頭を抱える心配も無くなる。メインの「テレビ放送による地上波」へのニーズも高まるに違いない。

さらに地上波での放送直後から配信を始めれば、28%の「テレビ放送とほぼ同時に同じ番組を放送してほしい」の要望も取りこめるし、20%ほどの要望も生まれている「テレビ番組と連動したコンテンツを配信してほしい」のニーズに応える企画を盛り込むことも容易だろう。


テレビ放送業界、そしてそれをとりまくテレビ広告業界はくだんの2011年における「地デジ完全移行」をひかえ、大いに揺れている。さらに今回取り上げたように、インターネットの普及で急速に伸びつつある「ネット動画配信」との対峙・協調を余儀なくされている。中には現状を頑なに否定し、意固地になって見苦しい行動が見受けられるところもあるが、時の流れは誰に対しても平等で、現実から逃れることは誰にも出来ない。

現実を正しく認識・分析し、偏見無く未来を予見し、今までとこれまでの利用者のニーズに応えるプラットフォームを作るべく努力すべきか。それが出来る技術と器量と企画力を持ったテレビ局(やグループ)が、2011年前後以降に起きる「テレビ映像大革命」で主導権を握るようになるに違いない。

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