広がるネット・通販での食品購入
2008年02月11日 12:00
書籍やゲーム、おもちゃの分野で広範囲に普及し、既存の実店舗小売店の売上をおびやかしつつあるインターネット通信販売。最近では家具や装飾品など「趣味趣向」以外の生活分野にもその勢力を拡大しつつある。その中でも注目されているのが、これまで一部の乾燥食品以外は難しいとされていた食品分野での展開。冷凍技術などの発達で、採れたてを味わうものや、消費期限上難しいもの以外はほとんどがネット通販で購入できるようになった。手数料などの問題も残っているが、かつてと比べてハードルははるかに低くなり、それを飛び越えて利用する人は確実に増えている。
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gooリサーチが2月8日に発表した【食生活に関するアンケート】によれば、インターネットや通信販売で、食材を購入したことがある人は過半数の57%に登った。
インターネットや通信販売で、食材を購入したことがあるか
「食品」「食べ物」ではなく「食材」と表現していることに注意。要は「贈呈用」「イベント用」などの特殊な事情下におけるイベントアイテムとしてではなく、料理用の材料としての「食品」を購入した経験がある、ということ。最近【HK-DMZ PLUS.COM】さんにて事ある毎に『君乃家食品の業務用ジンギスカン』が美味い旨いとはやしたてているのを見ると、ついつい購入ボタンを押したくなる自分を省みるに、「浸透しつつある」様子が改めてわかる。
【少々割高でも便利、「ネットスーパーを使いたい」6割近くとの調査結果】でも少し触れたが、当方がかつて病気で難儀しほとんど外出できなかった時、西友の通販システムには非常にお世話になった。ネット通販・通信販売には上記の「ジンギスカン」の事例のように「自分の周囲では手に入りにくい食材が手に入る」利点の他に、「買い物に出られない人も食材が手に入る手段が得られる」というメリットがある。
また、現在まで当方が一部利用している「療養用食品(超低塩分しょう油など)」のように、かつては日本に点在している専門店でしか買えなかった特殊な事情で必要とされる食材が、日本中どこにいても手に入るのもありがたい。
これら通販のメリットが明確に分かるのが次の設問・回答。
「(ネット通販・通販で食材を買った人に)なぜ買ったのか。理由を二つまで」
もっとも多いのが奇しくも「スーパーなどでは手に入らない食材がほしかったから」と「自宅で気軽に注文できるから」が同列トップ。そして「値段が安いから」「買い物にでかける手間が省けるから」が続く。
先の「ジンギスカン」は「手に入らない食材」「手軽に注文」そして「値段が安いから」が該当する。外出がままならない時期の当方にとっては「手軽に注文」「出かける手間が省ける」が当てはまる。そして療養食品の場合は何よりも「手に入らない食材」が大きな理由となる。
手に入れたい食材の事情や買い手の都合で理由は多少異なってくるが、上位に占められた購入理由はいずれも買い手の要望に十分以上に応えるもの。デメリット、例えば手数料や「じかに食品を触れられない」というリスクを考慮しても、ネット通販・通販の方がメリットが多いと判断されたことになる(「じかに食品を触れられない」については他人の実体験レポートが参考になる。食品関係の口コミサイトやブログが人気を集めるのはここに理由がある)。
アマゾンで書籍が飛ぶように売れるのは、不特定多数のサイトやブログが「販売代理店」として営業できるシステム(アマゾン・アソシエイツ)を構築したり、それを手助けするプログラムを作りやすくする環境を整えた(AWSの提供)影響が大きい。しかしそれにも増して重要なのは、「在庫が目に見えて分かる」「ほしいと思った本がすぐに注文できる」点。最近では「お急ぎ便」を活用することで、手数料を固定化すると共に原則翌日に受け取ることも可能となる(一部地域のみ)。
・在庫の有る無しが分かる
→欲しい物は即効で「確保」できる
・販売場所を気にせず注文できる
→「どこでもドア」感覚で買い物
予約の場合はネット通販も本屋も同じだが、発売済みの本を手に入れる場合、本屋においてはその場で実物があれば「レジに持参」「購入」で済む。しかし在庫がないとなると「問い合わせ」「注文」「入荷」「連絡」「引渡し・購入」とかなりのプロセスを踏まねばならない。特に「注文」から「入荷」の過程で出版社側の対応が今ひとつの場合も(中小の本屋に対しては特に)多く、注文してから数か月経ってようやくお目当ての本が入荷した、などという事例もある。
ところがネット通販の場合、「在庫がある」「無い」で判断できるので、対象の本の在庫があれば即時購入ですぐに手配できるし、無ければあきらめるなり「入荷アラーム」の設定をすれば良い。どう考えても本屋の分が悪いのは見えている(もちろん手数料の問題や予約したのに手配が出来ず手に入らなかった場合、アマゾンではないが「出版社問い合わせ」で結局「ありませんでした」という事例もあるがそれはまた別の話)。
パソコンや携帯電話の普及で、ネット通販が出来る層が増加の一途をたどるにつれ、インターネット経由の買い物は確実に生活に浸透しつつある。これまでは書籍や玩具がメインだったのが、食材にも及び始めた。ただそれだけの話なのだろう。
いくらアマゾンが便利になっても本屋には足しげく通うし、週刊誌や定期購読紙の一部は本屋、コンビニ、キオスクなどで購入する。同様に新鮮さや購入量、柔軟性を考えれば、すべての食材をネット通販で購入する、という生活スタイルは想像しにくい。例えばネギ2本をネット通販で買う、という時代は恐らくやってこないだろう(地元密着型で直接まとめて配送、あるいはキープしておいてもらい自らが来店して受け取るというスタイルならありえるが)。それに、ずらりと並ぶ食材を見ながら一つ一つかごに入れていく「買い物の楽しさ」は、例えバーチャルリアリティなシステムを構築しても、ネット上では得がたい、楽しい経験でもある。
昨年当サイトで実施したアンケート「インスタントラーメンをどこで買うか」では、ネット通販を選択した人はほとんどいなかった。しかしラーメンそのものの単価が上昇を続ける現状を見ると、他の食材と一緒に・ついでに購入される機会も増えてくるだろう。
今後は比較的日持ちのする、あるいは周囲のお店では手に入りにくい食材を中心に、ネット通販の利用度はますます高まるに違いない。元記事にもあるが、その分流通業者には厳しい時代が待っているのかもしれない。
■関連記事:
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(最終更新:2013/09/02)
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