親は9割賛成、子どもは……携帯フィルタリングサービスのジェネレーションギャップ
2008年02月19日 08:00
【IMJモバイル(4305)】は2月18日、携帯サイトのフィルタリングサービスに関する意識調査結果を発表した。それによると保護者の約9割が携帯電話におけるフィルタリングサービスに賛成していることが明らかになった。携帯コンテンツ提供会社にとっては死活問題となりうるだけにさまざまな論議を呼んでいる「フィルタリングサービス」だが、最大の対象となる子ども達を持つ保護者には好意的に受け止められているようだ(【発表リリース】)。
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●認知度はそれなりに高い「フィルタリングサービス」
今調査は2月5日から6日、インターネット経由で行なわれたもので対象は「携帯電話を持つ15~18歳の男女」と「携帯電話を持つ15~18歳の子どもを持つ男女(保護者)」。有効回答数は1032。子どもと保護者の割合は1対1。男女比はそれぞれ各個1対1。子どもは15~18歳(高校生)が、保護者は41~50歳の層がもっとも多い。
フィルタリングサービスにも多種多様のものがあるが、大まかなものとしては「サービス提供側が基本ルールを設け、保護者側が細かい設定をした上で携帯電話に'保護機能'を設ける。利用する子どもは、その'保護機能'をクリアしたコンテンツしか利用できない」というもの。パソコン上で子どもにも問題なく閲覧できるサイトのみ表示するフィルタリングサービスと概要は同じ。
総務省では各携帯電話会社に対してフィルタリングサービスに関する要請を行い、すでに新規契約者に対する(該当契約者の持つ端末への)サービスを開始。既存契約者に対しても順次実施することを予定している。今後数年間で子ども達の利用する携帯電話にはフィリタリングサービスが適用されているのが常識となるだろう。
このフィルタリングサービスについて知っているかどうかを尋ねたところ、保護者は7割、子どもは8割が「内容まで理解している」と答えている。
■フィルタリングサービスについての認知度
1.保護者
・知っている……39.1%
・大体知っている……31.0%
・聞いたことはあるが内容は知らない……22.7%
・知らない、はじめて聞いた……7.2%
2.子ども
・知っている……51.2%
・大体知っている……27.3%
・聞いたことはあるが内容は知らない……14.9%
・知らない、はじめて聞いた……6.6%
「フィルタリングサービス」という名前だけなら親子共に9割以上が認知していることになる。
●高まる親の期待
保護者側はフィルタリングサービスについて大いに賛同し、必要性が高いと考えているようだ。「必要性」について尋ねたところ、9割以上が同意を示している。
フィルタリングサービスの必要性
程度の差はあれど必要性を感じている層は「当然」「やや」を合わせて93.0%に達している。
一方、現状のサービスが「規制のあるなし」の二者択一でしかないことなど、そのサービス内容に問題意識を持つ意見も多い。
■フィルタリングサービスへの考え方
1.携帯会社によって、有害なサイトを制限する取り組みは良い事(好ましい事)である……80.8%
2.携帯会社は、サイトを閲覧制限する際に基準を提示するべきである……50.8%
3.年齢によって、閲覧に制限のあるサイトを分けるべき(小学生も高校生も一律というのはおかしい)……40.3%
4.フィルタリングに関して利用者(消費者)への説明が不足している……39.3%
5.識者を中心とした審査委員会など、第三者機関によって検討するべきである……24.4%
6.サイトを制限するのではなく、利用の危険性について啓発をするべきである……21.3%
7.閲覧サイトの制限(選択)は親権者にまかせるべきである……20.5%
8.携帯会社が閲覧制限するサイトを決定するのは好ましくない……7.8%
……など
まったくの賛同、とは読めない意見も多いが内容的には完全な否定ではなく、改良して欲しい点が挙げられているものが多い。問題提起がこれだけ多いということは、これらの点の改善を望みたいと期待している、ポジティブな意見と受け止めることができるだろう。
また改善を求める意見の多くは「開示情報不足」「機能の拡張」の2点に絞られることも分かる。特に情報不足については「何の説明もなく単に'問題があるから'というだけで携帯電話会社から一方的に規制を受けるのは問題だ」という意志があるように見える。個別サービスの商品として販売する場合には企業秘密のベールという問題があるが、プラットフォーム側が提供するサービスの場合には指摘の通り、積極的な情報開示を果たすだと思われる。
●子どもはフィルタリングサービスに懐疑的・反対派
一方フィルタリングサービスの適用を受ける子ども側は当然のことながらサービスの適用には反対の意向が強い。フィルタリングサービスの解除意向について尋ねたところ、8割近くが「解除して欲しい」と回答している。
■フィルタリングサービスについて(子ども側)
・絶対解除してほしい……45.9%
・できれば解除してほしい……31.1%
・解除してほしいと思わない……8.9%
・解除したくない……2.1%
・分からない……11.9%
「解除してほしい」
・保護者は(問題サイトを見せたくなくて)
「解除したくない」
「絶対に」だけでも半数近くを占めていることから、子ども側の拒否反応が強いことがうかがえる。ちなみに親の立場からは「理由を聞いてから解除する」が55.2%、「解除しない」が33.5%。理由次第では解除しないし、子どもは親が納得できないサイトを見たくて解除してほしいと思うパターンがほとんどだろうから、保護者と子どもには大きなギャップが生じていると見て良い。
さらに子どもに「フィルタリングサービスの導入で携帯サイトに絡む問題は解決するか」という問いをしたところ、「減ると思う」が34.2%だったのに対し「減らない」が過半数の51.3%を占めていた。適用される子どもたちの立場からでも、フィルタリングサービスの効用には懐疑的な意見が多いことが分かる(ちなみに「逆に増える」という答えも6.8%あった)。
保護者側は「まだあなたの年では自分で判断するには早いから」と規制をし、子ども側は「禁断のりんご」を求めるがごとく、あるいは「規制されているからこそ」対象サイトを(規制を潜り抜けて)利用したり解除を求めようとする。この図式は未成年者に利用を禁止しているお酒やたばこ、アダルト系冊子など、他の規制用品のそれとほぼ同じであるのが分かる。
お酒やタバコなどの子どもへの
規制のスタイルと同じ。
なぜこれらは比較的うまく
規制が働いているのか
↓
十分な「啓蒙」と「情報開示」
100%確実に、というわけではないがお酒などの子どもに対する規制がうまく働いているのは、しっかりとした法的ルールが定められているだけでなく、保護者をはじめとした身のまわりの人が事ある毎に「子どもはまだダメです」と、色々な理由を説明して啓蒙しているからに他ならない。もし仮に法で規制するのみで誰も啓蒙しなければ、お酒やたばこに対しても子ども達は手を伸ばしてしまうに違いない。
携帯電話においても、フィルタリングサービスの規制対象となるサイトの利用がどのようなリスクを持つのか、懇切ていねいに繰り返し、保護者や教師など身のまわりの人が教える必要があるだろう。そしてその説明を説得力のあるものにするためにも、サービス提供側にも一層の情報開示が求められよう。
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