小麦不足でアメリカの在庫量60年来の低水準・国際小麦価格は急騰へ

2008年02月10日 12:00

小麦イメージアメリカ農務省は2月8日、2月の穀物需給に関するレポートを発表した。それによるとアメリカ産の小麦の推定期末(2008年5月末)の在庫量を昨月末と比べて2000万ブッシェル減の2億7200万ブッシェルと下方修正した。在庫量は1947年以来もっとも少ないもの(Ending stocks remain the tightest levels since 1947.)となっている。輸出量が大幅に増えたことなどが要因。これをきっかけに小麦供給に関する不安が増大し、小麦などの商品価格は高値を更新している(【発表リリース】)。

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レポートによると2008年2月現在の推定による期末のアメリカ国内における小麦在庫量は2億7200万ブッシェル(1ブッシェル=約35リットル、小麦なら27キロ前後)。在庫用として卸された小麦は500万ブッシェルに減らされた一方、輸出用が2500万ブッシェルに引き上げられるなど、小麦価格の高騰を受けて需要に応える形で在庫を放出している形。

世界全体の小麦の推定期末在庫量は昨月の1億1090万トンから120万トン減り、1億0970万トンになった。こちらも輸出量が増え、蓄積量が減った形(主要生産国のアルゼンチンは1550万トン、オーストラリアは1300万トン)。大豆は先月の1億7500万ブッシェルから1億6000万ブッシェルに在庫が減っている。こちらも輸出用で1000万ブッシェルなどが計上されたのが減少の理由。一方バイオエタノールの材料としてもっとも注目されているとうもろこしはアメリカ国内の在庫は14億3800万ブッシェル、全世界の在庫量は1億0188トンで昨月の在庫1億0130トンとほぼ変わらず。

アメリカの小麦在庫が減少していることを受け、小麦相場は急騰。1ブッシェルあたりの価格は2月8日現在10ドル90セントの域に達しており、史上最高値を更新している。これにはアメリカの在庫量不足だけでなく、オーストラリアやヨーロッパなどの生産国で不作が報じられていること、さらには中国やインドなど新興国の需要増加が原因として考えられている。

シカゴ取引所における昨年後半以降の小麦価格の変移
シカゴ取引所における昨年8月以降の小麦価格(先物)の変移(【フジフューチャーズ】から)。この半年で2倍近くに跳ね上がっているのが分かる。先日までは「12月に最高値をつけたあとはボックス圏内で安定している」と表記したが、2月以降再び急騰し、先日最高値を更新した

「小麦が足りない」という雰囲気(あるいは事実)を元に、世界中の商社・食品メーカーが小麦を買い求めようとし、輸出できる余裕があるアメリカの小麦に殺到している形。売り手が同じで買い手が増えれば、値が釣りあがるのは商売の常であり、今回の小麦価格の上昇は必然的なものといえる。特に食品用として使われるデュラム小麦の価格が急騰しており、争奪戦になっているという話も伝えられている(【Financial Times】)。

また、アメリカの在庫量が激減している現状から、「アメリカは手持ちの小麦を売りすぎている。このままでは将来国内需要を満たすためにカナダから輸入しなければならなくなるだろう。そうなればアメリカから小麦を買えなくなる他国にとって大きなインパクトとなる。同時に小麦輸出が出来るヨーロッパの地位が相対的に上昇する」と分析するヘッジファンドマネージャーもいるという。

21世紀は恐らく、バイオエタノールだけでなく需要急増・価格上昇という要素からも、農業が今まで以上に注目される世紀となることだろう。

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