不況からあなたのお金を守る5つの方法(日本版)

2008年02月14日 12:30

先に【不況からあなたのお金を守る5つの方法】でアメリカの新聞USA TODAYに掲載されていた「不況からあなたのお金を守る5つの方法」について、概要をまとめてみた。今度はその原文を元に、多くの読者にとってより役立つ「日本語版」……というよりは「日本版」を作ってみることにする。

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原文の「不況からあなたのお金を守る5つの方法」は、景気と不景気の境目は色々な判断が出来るためあいまいな部分も多いが、とりあえず公的発表における「リセッション」宣言が行なわれ雰囲気的な「不景気感」が蔓延する前に自己防衛の手を打とうというもの。日本では一応政府発表ではいまだに好景気が続いているが、【企業も消費者も「景気悪いね」~景気動向指数悪化・ITバブル崩壊後に近づく】にもあるように景気ウオッチャー指数など一般市民の雰囲気的には不景気真っ只中。企業業績の先行きを示す指標の一つである株価が低迷しているのも、一つの実情を表しているといえよう。

そのような状況において「不景気に'備える'」方法が役立つかどうかは微妙なところだが、何もしないよりははるかにマシであるし、あるいは「今まさにこの瞬間」活用される機会が起き得るかもしれない。少なくとも「知っていて損」となるようなものではないことだけは間違いない。

●1.現金最強伝説

現金イメージ原文の事例(2%の利子の方が10%の損よりマシ)や【株価急落!~資産をどこに移すべきか・株?債券??それとも現金!?】のロドリゲス氏ではないが、不景気・不況時において金融商品が値を下げるのが日常茶飯事となる昨今では、わざわざ値が下がるものを手にする必要は無い。大底だと確信したら、あるいは景気回復をしっかりと見極めてから「買い出動」に取り掛かっても遅くは無い。まさに現金はオールマイティに使える、「最高の投資」に他ならない。先のロドリゲス氏の名言「買い時は周りの人が『もう売るのは遅すぎるかな』と聞いてきたとき」も役に立つだろう。

ペイオフに関する考慮も必要だが、銀行や郵便局に預けることになる。事例では「短期国債もOKだよ」とあるが、日本では多少事情が異なってくるので簡単に説明しておく。

原文中の国債(正確には連邦債)は、満期が3か月・6か月・1年のものを指す。ここまで満期が短ければ(デフォルトの可能性の低さとあわせ)十分現金と同様の流動性を持っていると考えて良い。ところが日本の場合、現在「個人が買える」国債は2年・5年・10年満期のもののみ。アメリカの連邦債のように6か月・1年満期のもの(割引短期国債)もあるが、個人では購入できない(【国債Q&A(財務省)】)。満期前に換金することも不可能ではないが、元本割れしてしまう。

最低でも満期が2年という現実を考えると、この項目において「国債も選択肢に含める」というのは疑問符をつけざるを得ない。やはり現金、あるいは銀行や郵便局の満期が短い定期預金あたりを選ぶべきだろうか。たとえばゆうちょ銀行なら一か月満期のものから定期預金は存在する。普通預金よりちょっぴりだが利回りは高い。しかしその「ちょっぴり」が「ちりも積もれば山となる」なのである。

もちろん「退職・失職に備え半年分の生活費は常に確保しておくというルール」も、日本でもしっかりと通用する。お忘れなく。

●2.高利回り商品の誘惑にだまされるな

高利回りの商品販売の営業妨害をするわけではないが(笑)、この話も日本国内では十分に通用しうる。くだんのノックイン債をはじめ、最近では「金融工学を集結して創り上げた」かのようなうたい文句でさまざまな高利回りの金融商品が発売されている。また、世界中の高利回りな債券や投資信託も山のように用意されている。しかもネット証券上から気軽に手続きできるから、つい誘惑に駆られてしまう。

しかし原文記事にもあるように、「ローリスクハイリターン」なものなどない。利回りが良いものはそれなりにリスクがあると見なければならない。投資の最終判断責任は各個人本人にある。投資と投機は別物。自分が投資をしているつもりで投機、果ては「投棄」をしていたということの無いように注意しよう。

●3.配当を考えよう

配当イメージ【過去60年間の日経チャートと「7%」「20年サイクル」・本当に「長期投資」は必勝法なのか】でも触れたが、日本株に限っては直近15~20年間(1980年代後半のバブル崩壊以降)において「長期投資」=「必勝法」ではない状態が続いている。この状態がしばらく継続するとすれば、原文記事の「利回りのよい銘柄を選んで投資し、インフレに打ち勝つ」という考え方は通用しないことになる。

しかし銘柄を慎重に選び、中長期的に「一定期間毎に配当と言う名の果実を実らせる、果実樹的なお宝銘柄」を取得できれば、収入に対する不安を減らすことができる。もちろん将来的に株価そのものが大きく値をつり上げ、売却益を得る可能性も(そのような堅甲な銘柄だからこそ)高い。

原文記事にあるように、減配しない、むしろ増配の傾向にある銘柄を選ぶのはもちろん、業績が(少なくとも今後数年は)堅調な必要がある。新興市場銘柄は夢があるが、今は夢を追い求めている状況ではないことを考え、除外。その他、以下のような条件付けで銘柄を選択してみることにする。

・東証一部限定
・金融、その他金融は除外(今後サブプラ問題が尾を引く可能性)
・時価総額2000億円以上(規模が大きければそれだけでリスクは軽減される)
・直近5~10年の間、減配の経歴が無い(会計期間変更などは除外)
・今期、さらには来期が黒字で、かつ増益


このような条件設定をするとどうしてもある程度セクターが片寄ってしまうが、これはこれで仕方ない。利回りは記事製作時のもの(イー・トレード証券の画面より)。

エーザイ(4523)……3.41%(株主資本配当率6.5%を想定)
参天製薬(4536)……2.83%(株主資本配当率5%を目指す)
武田薬品(4502)……2.73%(連結配当性向45%を目標)
HOYA(7741)……2.62%
日本郵船(9101)……2.42%(業績見通しなどを元に算出)
任天堂(7974)……2.35%(営業利益の33%を基準。自己保有を除いた流通株式で除した額か配当性向50%のいずれか高い方を年間配当金に)
住友ゴム工業(5110)……2.29%
トヨタ自動車(7203)……2.17%(配当性向30%を目標)


例えばアメリカへの輸出の傾注度が高い業態では今後アメリカの景気後退によって営業成績が落ちる可能性が高い。また医療制度の変更で医薬品の価格が落ち込み、薬品セクターの伸び率鈍化が懸念されるなど、それぞれの業態には多種多様な(しかも景気後退時だから通常より多くの)リスクは存在する。利益を元に配当を設定している企業では、今後営業成績が落ちれば減配の可能性は否定できない。

ただ、それらのリスクを考慮しても、これらの銘柄のような特性を持つところなら、比較的安心して「配当という名の果実」を楽しむことができるだろう。

また、これらとは少々状況が異なるが、【日本オラクル(4716)】【昭和シェル石油(5002)】などのように外資系の大株主な親会社を持つ会社では、配当性向が極めて高く、しかもよほどのことが無い限り減配しない傾向にある。「配当を楽しむ」という観点「だけ」なら、これらの銘柄を選ぶのも一興(ただし業態そのものの栄衰を見極める必要はある)。

●4.最悪の事態に備えよう

「1.」とかぶる部分があるが、不況下において最悪の事態とは失業に他ならない……というのは日本でも同じこと。しっかりとした会社に勤めていればある程度の期間は失業手当を受けることはできるし退職金などの取得も考えられる。しかし仕事を失えば新たに職を得るまで収入源を無くしてしまうのは事実。家計簿をチェックし、衝動買いを極力ひかえ、必要なもののみを購入するように心がけるという基本も変わらない。

クレジットカードでバンバン買い物をしていたのなら、利用は極力控えること。これもまたしかり。

●5.ライフプランを構築しよう

「ライフプラン」と呼ばれる、お金に関する中長期のポートフォリオや計画を創り上げることは非常に重要。日本ではあまりお金に関してとやかく口にしたり考えることが好まれない傾向にあるが、資源のない日本で「売れる商品」はアイディアと情報と技術に限られる。そしてそれらを結びつける金融(要は「お金」)は必要不可欠なもの。江戸時代の身分制度を表す「士農工商」でも「商」は一番下にカウントされているが、生活の実情は逆から読んだ順になるようなものだった、という話もある。

ともかく、「不景気に備えて」というのをよい機会に、今後の自分自身における「お金の面での人生計画」こと「ライフプラン」を構築するのは悪くない。『「ライフプラン」でアマゾンを検索すれば』山のように参考文献が登場するし、金融系の定期発刊紙でも定期的にライフプランに関する特集が組まれるので、参考にすると良い。

「ライフプラン」の中でも重要なのが、大黒柱ともいえる「お金の働かせ方(「お金」は貯めるものではなく「働いてもらい、増えてもらう」という考え方)」を割り振りする、「アセットアロケーション(資産配分)」という考え方。先の記事でも説明したが、簡単に表現すると「資産を配分してリスクを回避しつつ利益を得る仕組み」。

「そんな都合の良いことなどできるか」という反論もあるだろう。確かにノーリスクハイリターンなものなどあるはずがない。しかしうまく組み合わせればリスクをそこそこ減らした上で、そこそこリターンが望める組み合わせは得ることができる。例えば国内株式・投信と海外株式投信、国内債券と海外債券などのようにいくつかの市場に運用資金を分散する、というのがもっともオーソドックスな手法だ。

アセットアロケーションイメージもちろん投資額や目標、自分の性格などで割合は変更する必要があるだろう。互いの相関関係が浅ければ(あるいは株式と債券のように相反する関係なら)、一つの部門が下落しても、他の部門がそれを補ってくれるはず。時々それぞれの部門の成績を見て、注力度合を変更すれば良い。

先日当方が受信したメルマガ【松本FP事務所「蓄財のネタ帳」】に掲載されていたのだが、【モーニングスターの金融電卓】が簡単で役に立つ。自分の手持ち資金や何年くらいかけて毎月どれだけ積み立ててどれほど貯めたいかを入力すると、どれほどの運用利回りが必要かをはじき出してくれる。さらにその利回りを得るためにはどのような投資スタイル(アセットアロケーション)を取るべきかのアドバイスもしてくれる。何しろ無料で提供されるサービスなのだから、利用しない手はない。

この仕組みを考えて、自分のポートフォリオを構築するは非常に時間と手間がかかるが、同時に面白い作業でもある。しかし面倒、あるいはよく分からないという人も多いだろう。この場合もアメリカの原文同様に、「ファイナンシャル・プランナーなどの専門家に相談する」という投資をするのも一つの手だろう。


景気ウォッチャー動向の状況や国内外の市場展開、海外の景気(特にアメリカ)の動きを見ると、日本国内の「不景気」はまだまだ続きそうだ。構造的な変革や「インチキしている人たち」の摘発など、打つべき手を打たないと、自然回復による景気の好転はしばらく先になりそうな気がする。個人的には今年前半一杯は辛い状況が続きそうな感がある。市場展開に限っても、本格的な回復は夏以降になるものと考えている(恐らく直近でもうひと波乱はあるだろう)。

まずは自分自身で、手の届く範囲でかまわないので、出来ることをしてしっかりと守りを固めておこう。そしてこの際、「ライフプラン」や「アセットアロケーション」など、一生活かせる考え方を身につけてしまおう。まさに「災い転じて福と為す」「ピンチはチャンス」「困難な時期は最良の時期」に他ならないのだから。


(最終更新:2013/09/07)

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