4人に1人は「耳が痛くなったことがある」・携帯音楽プレイヤーの功罪

2008年02月10日 12:00

iPodイメージ調査会社のアイシェアは2月8日、携帯音楽プレイヤーに関する意識調査の結果発表を行なった。それによると携帯音楽プレイヤーの利用者のうち、約4分の1が「利用中に耳が痛くなったことがある」と回答していることが明らかになった。携帯音楽プレイヤーの多用による難聴のリスクが増大する件については以前から危惧されていたが、今回の調査結果はそれを裏付ける一つの資料になりそうだ(【発表リリース】)。

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直接的問題:自分の耳への負荷からか「耳にトラブル3割強」

今調査は1月25日から28日、同社のメール転送サービス利用者に対して行なわれたもので、有効回答数は499人。男女比は56.1対43.9で、年齢階層比は20代23.4%、30代71.3%、その他5.3%。

携帯音楽プレイヤーを持っている人の割合は84.4%に及び、その中でも持っている機種としてはiPodに代表されるデジタルオーディオプレイヤーが58.6%(複数回答において)に達するなど、かつてのウォークマンから今はデジタルオーディオプレイヤーが「携帯音楽プレイヤー」の代表的な機種となりつつあるようすがうかがえる。

イヤホンなどを用いることで基本的に自分にしか音が聴こえないように利用するのが、携帯音楽プレイヤーのあるべき利用方法。しかし実際にはついつい自分の世界にはまり込んでしまい、音量を大きくし、イヤホンから音が外にもれ出るほどの大音響で利用してしまうという経験(あるいは他人の状況を見た経験)がある人は多いはず。

そのような大音響で、あるいはボリュームが大きくなくともプレイヤーを利用していて聴力について気になる人もいるだろう。実際に「プレイヤーを使用していて、不安に感じたこと、感じることはあるか」という問いには、3割以上の人が「耳に何らかのトラブルを体験したことがある」と回答している。

■プレイヤーを使用していて、不安に感じたこと、感じることはあるか

・周囲の声や音が聞こえない時がある……42.5%
・耳が痛くなったことがある……26.9%
・耳が聞こえない(聞こえづらく)なったことがある……5.8%
・その他……24.7%


プレイヤーの音にかき消されて周囲の音が聞こえないのは、耳そのものの異常ではない。いわば間接的な不安要素。しかし「耳が痛くなったことがある」「耳が聞こえない(聞こえづらく)なったことがある」は明らかに何らかの問題が耳に起きている証拠で、直接的な不安要素といえる。単に負荷がかかりすぎて(音が大きすぎて)危険信号を出しているだけなのかもしれないが、注意をすべき内容ではある。

間接的問題:「自分自身は1割強」「目撃経験は3割強」他の音が聞こえないことによるトラブル

一方、携帯音楽プレイヤーを使って音楽などを聴いていると、どうしても注意がそちらに向かい、周囲の他の音も聞こえにくくなる。直接耳に負荷を与える問題ではなく、「他の音が聞こえなくなる、注意が周囲に行き渡らなくなる」ことによる問題もある。

自分自身がプレイヤーを使用している時に危険な状況に遭遇したこと・感じたことがあるかどうかについては、1割強があると答え、その多くは「注意力の散漫によるもの」「周囲の音が聞こえないことによるトラブル」だった。

■「自分が」プレイヤー利用時に危険な状況に遭遇した・感じたことはあるか

・ある……11.6%
・ない……88.4%

■どのような状況だったか(「ある」と答えた人)

・交通事故、接触事故など……47.5%
・周囲の音が聞こえないことによるトラブルなど……44.3%
・音漏れ、騒音によるトラブルなど……8.2%


一方、自分自身ではなく他人がそのような状況に陥っているところを見たことがあるかどうかについては33.4%の人が「はい」と答え、その多くは「交通事故、接触など」(63.0%)となっている。

人間は「携帯音楽プレイヤー」を聴くように進化はしていない

「難聴の可能性」「他の音が聞こえない」「注意力の分散」などは、携帯音楽プレイヤーの登場時から問題視されていた話。しかし実際にこのような数字となって現れてくると、プレイヤーの普及率の高さと共に「静かな問題」として浸透しつつあることが分かる。

もちろん個人差があるので、ボリュームを多少上げても聴力にまったく問題の無い人や、プレイヤーを使っていても周囲の音をしっかり聞き分ける人、注意力が散漫にならない人もいるだろう。しかし多くの人はついつい(聞きたい音楽に注力するために)ボリュームを上げてしまうだろうし、利用していない状況と同じように周囲の音を聞き分けたり、注意を図ることは出来ないはず。

例えば以前は「10」の注意・音の聞き分け能力を持ち、周囲に払って歩いていたところを、プレイヤーの音に「3」だけ振り分けるとしたら、残りは「7」でしかない。プレイヤーを利用することで能力が進化し、引き続き「10」の力で周囲への注力を続け、「10+3=13」で「13」の注意力を持つようになるわけではない。当然、「7」は「10」より小さいため、日常と比べて他の音を聞き逃したり、トラブルに巻き込まれる可能性は増えることになる。要は周囲に向けた自分の「アンテナ」がそれだけ弱まる、ということだ。

プレイヤーを使えば
それだけ聴力・注意力が
そちらに傾注される。

周囲への配慮がその分減る

「アンテナ」の弱体化

似たような話は携帯電話にも見受けられる。携帯電話の場合には音が他にもれる話はあまり考えられず、むしろ「ながら行動」による周囲への注意が分散してしまう問題の方が大きい。携帯電話でメールを打ちつつ歩いていて、つまづいてしまったり足を踏み外す経験を持つ人は多いはず。それならまだ良いが、事故に巻き込まれたりでもしたらお話にならない。

携帯音楽プレイヤーも携帯電話も、非常に便利で楽しい時間をいつでもどこでも利用者に提供してくれる。その点ではまさに「魔法のアイテム」に他ならない。しかし残念ながら人間はその「魔法のアイテム」を使いこなすように、生物学的に進化しているわけではない。その魅力にほれ込めばほれ込むほど、他への注意が散漫になるし、耳や指に負担をかけることになる。トラブルが起きても不思議ではない。

ボリューム調整をして「耳に優しく」、音もれに気をつけて「他人に優しく」、そして注意力が散漫になって事故に巻き込まれることのないよう気をつけることで「自分の体に優しく」と、三つの「優しさ」を持って携帯音楽プレイヤー(や携帯電話)を使うようにしよう。


■関連記事:
【移動中の携帯端末利用と「他人の目」】
【新型iPodは自動ボリューム調整による聴力保護機能付き?】


(最終更新:2013/09/07)

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