3年間でネットの通信量は約3倍に増加・動画投稿サイトが主要因
2008年02月23日 08:00
総務省は2月22日、2007年11月時点における日本国内のインターネットのトラフィック(通信量)についてまとめたレポートを発表した。それによると国内でネットを経由してやりとりされるデータの量はこの3年間で約2.5倍に増加していることが明らかになった。また、国外から国内への転送量が大幅に増加しており、動画投稿共有サイトの存在が通信量の大幅増加に深い関係があることも明らかにされた(【発表リリース】)。
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今調査はインターネットイニシアティブ(IIJ)、NTTコミュニケーションズ、ケイ・オプティコム、KDDI(旧パワードコムを含む)、ソフトバンクBB、ソフトバンクテレコムのISP6社7ネットワーク、そして江﨑浩東京大学教授、加藤朗東京大学准教授、長健二朗研究員(IIJ)及び、福田健介国立情報学研究所准教授らの協力や支援を得て行なったもの。集計対象は「契約者別トラフィック」「ISP間で交換されるトラフィック」(国内外)「国内主要IX(インターネット上の分岐点)におけるトラフィック」。
調査結果及び試算によると、日本国内のインターネット(ブロードバンド)でやりとりされているデータは、2004年11月の323.6ギガビットと比べて2007年11月の時点で、平均毎秒812.9ギガビットとなり、約2.51倍に増えた計算になる。
図版日本国内におけるネット上のデータ量(2002年以降を抽出)
ブロードバンド契約者の時間帯別トラヒック(ダウンロード)の変化
調査結果などから分かることは次の通り
・2006年5月~11月以降、国外からの通信量が急増している(直近一年で約2倍)
・平日より休日、日中より夜半(特に21時~23時)における通信量の伸びが著しい
・通信量のピーク時と閑散時の差は以前と比べて広がりつつある
2006年に日本国内の、とりわけ海外からの通信量を増大させる「何か」があったことになるが、これはすでにお気づきの方も多いであろう、動画投稿サイト(特に【YouTube】が原因であることはほぼ間違いない(P2Pの普及も一因だが、動画投稿サイトほどは一般化していない)。YouTubeそのものは2005年12月にサービスを開始している。しかし日本国内で急速に広まったのは2006年も後半に入ってから。掲示板の書き込みのように気軽に動画投稿が出来、不特定多数の第三者に閲覧をしてもらえるというだけでなく、その動画をブログパーツの形で提供し、自分のサイトやブログに動画をはめ込む形で提供できる「仕組み」を作ったのが革新的だった。
このサービスの提供で動画ですら「口コミ」で容易に、日本を含めた世界に「広める」ことが可能となったわけだが、文章や画像とはケタ違いに情報量を持つ動画であるだけに、やりとりするデータの量も多くなる。国外に本拠を持つ動画投稿サイトの利用が増えれば、国外との通信量が増えるのも当然といえる。
通信量の急増は
「動画投稿サイト」を
娯楽として楽しむ人たちの
急増によるもの
また、ネット上で画像を見るかのような気軽さで動画を閲覧できるようになった動画投稿サイトのおかげで、ネット利用者のライフスタイルも変わりつつある。ブロードバンドの普及で静止画像の質とデータの向上などサイト・ページのデータ量も3年の間に増加しているが、それだけでは「ブロードバンド契約者の時間帯別トラヒック(ダウンロード)の変化」における、平日夜半と休日におけるデータ転送量の急増は説明しにくい。
やはりブロードバンド環境の利用者の多くが、自由時間を持てる平日夜中と休日に、直接、あるいはサイトのコンテンツの一部として動画投稿サイトを楽しむようになり、結果としてこの通信量全体をかさ上げしたものと思われる。
今後この傾向がさらに加速すると、回線の混雑化や経費の増大による接続料金の値上げも考えられる。総務省でも一部で極端な利用をするユーザーに対してネットの利用を制限できる仕組みを設ける動きがある一方、技術革新で通信量の増大に対抗しようという考えもある。
日本は他国と比べてブロードバンド環境における費用の面で恵まれているという話もある。しかし今回のデータにもあるように、インフラの限界が見えつつあるのも事実。現状に安穏としていると、そう遠くないうちに春は過ぎ去ってしまうことになるのかもしれない。
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