テンポスバスターズ(2751)の社長、信用取引で大損して会社から緊急融資・自社株の強制決済を避けるため
2008年02月05日 19:35
厨房機器販売の【テンポスバスターズ(2751)】は2月4日、同社の森下篤史・代表取締役社長に対し、社内で緊急融資を行なうことを決議したと発表した。森下氏が個人で行なった株式取引において自社株を担保にしていたが、この株式が損失充当のために強制決済にかけられる可能性があったための融資と説明している(【発表リリース】)。
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規模の大きな上場企業となれば話は別だが、中小規模の新興市場企業においては社長や経営陣が自社株を大量に保有している場合が多々ある。自社株を手放すことは経営基盤の弱体化にもつながるために滅多なことでは手放さないが、上場株式である以上担保価値があるので、(そのまま眠らせておくよりは、と)自社株を担保に用いた信用取引を行っている人は案外多い。
ところが昨今の急速な株価下落で自社株の担保価値が激減し、取引をしている株式に対して担保不足となり、追証(追加保証金:足りない担保分を現金で積み増す)を入金することもできず、強制決済(つまりあずけていた自社株を担保として取られ、現金化のために強制的に証券会社によって売却されてしまう)場合が発生してしまうことがある。
個人の信用取引の場合なら自業自得で事は済むが、今回のように「自社株を担保にした経営陣が信用取引で失敗し、担保株を市場で売られる」ことになれば、経営基盤の軟弱化、さらには経営権の失落の可能性も生じてくる。
テンポスバスターズの株価チャート(過去三日間)。強制決済による売りは避けられたようだが、詳細が報じられたことを受けた売りでそれなりに下げたようだ。
テンポスバスターズの発表によれば社長の森下氏は自社株を担保にした信用取引を行ったものの、自社株の下落で担保不足が発生。証券会社から「強制決済」、つまり同社の担保株式を市場で売却したいとの連絡があったという。最新の四季報データによれば森下氏は自社株の20.1%・9600株を持つ第二大手株主。仮に全株式が売却に回された場合、1日100株前後の取引が常の同社株は大混乱に陥るのは必至となる。
安定株主の維持と市場混乱を避けるため、慌てて同社側では緊急の取締役会を開催。追証としての入金用の資金2億円を融資したとのこと。融資条件は同社が子会社に行なう年利と同じ1.9%を適用。森下氏は自分が持つ土地建物を売却し、この返済に充てる予定(すでにテンポスバスターズ側が貸し出しの際に担保設定済み)。
似たような事例としては先に【井上工業の株価急落、社長保有の自社株強制売却が原因】で報じた【井上工業(1858)】の事例がある。この場合はどうやら社長側が決済期日を勘違いしていたようで強制決裁を受け、出来高を伴い大幅に株価が下落してしまった。
今回は最悪の事態は避けられたことになる。しかしこのようなことが起き得る可能性を考慮した上での信用取引にしては多分に注意が足りないとして、投資家らからは厳しい目が向けられることだろう。
(最終更新:2013/08/14)
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