【更新】2025年には日本が資源大国に!? 三菱総研「アポロ&ポセイドン構想2025」提示
2008年02月20日 06:30
[日刊工業新聞]などによると、【三菱総合研究所】は「アポロ&ポセイドン構想2025(Apollo & Poseidon Initiative 2025)」をまとめた。主軸となる計画は「日本海で海藻(かいそう)を大量に養殖してバイオエタノールを得、さらに海水に溶け込んでいるレアメタルなども吸収させて回収する」というもの。2025年には年間2000万キロリットルのバイオエタノール、1950トンのウランが得られると試算しているという。
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●海藻からバイオエタノール、さらにはレアメタルも回収
具体的な「アポロ&ポセイドン構想2025」は三菱総合研究所のサイトで見つけることはできなかったが、同計画が昨年2月に内閣府のイノベーション特命室へ提示されたことは判明した([ポロ&ポセイドン構想2025])。それによると、日本海の排他的経済水域の1/3を活用して2025年頃までにマリンバイオマス(具体的には海藻)を用いて、バイオ燃料を2025万キロリットル生産するという構想。計画進行の概念論については[こちらに記載されている]。
元記事によると構想実現のために三菱総研では4月にコンソーシアムを発足。京都府立海洋センターや産業技術総合研究所、物質・材料研究機構などの研究者のほか、大手の機械、自動車、建設会社などが参加するとのこと。概要的には次のような話が記述されている。
・繁殖力の強い海藻「ホンダワラ」を用いる。
・従来硫酸などを用いていたエタノール抽出法には問題が多いため、電磁誘導で約170度に加熱した水蒸気を浴びせて一気に分解し、細胞壁を構成するセルロースをグルコースへと低分子化する手法を用いる(実験室レベルでは成功)。
・海藻が持つ物質濃縮、蓄積能力を活用し、レアメタルを濃縮するように品質改良をする。これにより、エタノール精製のために分解したあとの廃液からウラン、ヨウ素やレアメタルを回収できる。採算も取れる計算。
・日本海の浅瀬(排他的経済水域)を利用。6500万トンのホンダワラを養殖し、年間2000万キロリットルのバイオエタノールや1950トンのウラン(国内原発利用量の4割に相当)を回収する。
ホンダワラ
([京都府のサイトから引用])
読者の中にはすでにお気づきの人もいるだろうが、この「アポロ&ポセイドン構想2025」は先に【海藻(かいそう)でバイオ燃料問題が一挙に解決!? 東京海洋大や三菱総合研究所などが計画】で紹介した「日本海に1万平方キロメートルの養殖場を作り、年間2000万キロリットルのバイオエタノールを海藻から生産する」計画に相当する。もっとも当時はバイオエタノールの精製は話に登っていたがホンダワラの物質濃縮能力については「海中の掃除」程度のことしか公開されておらず、今回のように「ウランやレアメタルの回収に役立てる」というのは初耳。
今件をまとめた科学技術研究本部参与の香取義重氏によれば、今計画はアメリカ国の「アポロ計画」のような目的指向型・分野横断的技術開発戦略を促進し、「縮みゆくこの国の姿」に歯止めを掛け、「基軸産業立国」として世界のモノ造りの基軸を担う気概創りも重要な目的である、としている。確かに国家プロジェクトとして稼動すれば、日本の産業・エネルギー構造も大きな変化がおきる可能性はある。
●その実現性と挑戦者への期待・「イチローも三割打てれば強打者」
遺伝子組換技術を用いてまでウランやレアメタルを確保する、という考えは飛躍に過ぎる感もある。従来の構想手法(例えば【三井造船が行なっているような捕集材による回収】)などから始めた方が良い気もする。しかし「せっかくこれだけの海藻を使うのだから、ついでにウランやレアメタルまで回収出来るのならしてしまえ」とする考え方は合理的なのかもしれない。
また、今回発表された「アポロ&ポセイドン構想2025」の元になった、前計画「新生アポロ&ポセイドン構想」については【バーチャル マリンバイオマス フォーラム】にほぼその全景を見ることができる。技術進歩や情勢の変化で差異も多分にあるだろうが、全体像はここからも把握できるだろう。
先に三菱総合研究所のホンダワラを用いたバイオエタノール精製プロジェクトの記事を掲載した際には、「こういった計画はいかに無駄使いする資金を引き出すのかが目的。実際には何も成果を上げない」「エネルギーはどこかから降って沸いてくるわけではないのだから、それほど極端な量が精製できるはずもなく、必ずどこかで無理が生じる。妄想だ」など厳しい意見もいくつかいただいた。
人は夢を見て前に進むもの。
しかし計画や実験は(もちろん成功・実現化を目指すのには違いないが)必ず成功、実用化されるとは限らない。そもそも開発プロジェクトは幾多もの試行錯誤を繰り返し、その中から成功例を見出していくもの。携わる人たちの志が低かったりやる気がないのならともかく、成功を目指してまい進しようとする人たちに向ける言葉としては、多分に失礼な気がしてならない。失敗の中から成功は生み出されるのであり、失敗したからといって挑戦行為そのものを非難するのはお門違い。「まかぬ種は生えぬ」ともいうし、あのイチローだって三割打てれば強打者扱いされるものだ。
何しろ従来は「資源の無い国、周囲にあるのは海ばかり」と思われてきた日本が、大どんでん返しではないが「資源大国」になりうる可能性を見出してくれたことだけでも価値がある。それに科学技術の進歩についても【著名預言者曰く「2029年までにロボットは人類と見分けがつかなくなる」!?】レイ・カーツワイル氏の話を読んでいると「今は半ば無理と思えるようなことでも、努力を続ければ近いうちに可能になるかも」という気がしてくる。関係スタッフには期待に応えるだけの誠意と努力とモチベーションを持続してほしいものである。
難を言えば対象エリアが日本海側であること。最近も[日本海沿岸にポリ容器多数、発生源?韓国に善処要請を検討(読売新聞)]で報じられたように「困ったちゃん」的隣国である中国や韓国などが日本海をゴミ投機場のように扱い、汚染を続けている。今計画に支障が生じるかもしれないし、実働を始めると茶々を入れてくる可能性は多分にある(竹島の例にもあるように所有権を主張することも考えられる)。
いっそのこと瀬戸内海や太平洋側などに計画実行エリアを移した方が、色々な意味で健全かつ安心してプロジェクトを実行できるかもしれない。
(最終更新:2013/08/11)
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