平均金融資産は1259万円・減った人の過半数は「収入減少」が理由

2008年02月28日 08:00

資産イメージ日本銀行情報サービス局内に事務局を置く金融報告中央委員会は2月27日、単身世帯と二人以上世帯のそれぞれについて「家計の金融行動に関する世論調査」を発表した。それによると二人以上の世帯において貯蓄残高が1年前と比べて「減った」と答えた人が全体の39.2%に達したことが明らかになった。「増えた」22.4%・「変わらない」36.6%を上回る結果となっている。「減った」人のうち過半数の51.3%は「定期的な収入が減って貯蓄を取り崩したから」と回答している(【二人以上の世帯に関する発表リリース】)。

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今調査は無作為抽出により8000件の調査対象世帯を選び、郵送や訪問によって実施したもの。調査期間は2007年の10月から11月。回答数は3313世帯。

調査結果によると二人以上の世帯に関する(以下同)金融資産の平均保有額は1259万円。主な内訳は次の通り。

・預貯金……490万円(うち定期性預金は309万円)
・郵便貯金……179万円
・金銭信託や貸付信託……12万円
・生命保険や簡易保険(保険料総額)……205万円
・損害保険……29万円
・個人年金保険……70万円
・債券……54万円
・株式……107万円
・投資信託……78万円
・財形貯蓄……28万円
・その他金融商品……7万円


同調査は昭和28年(1953年)から連続して行なわれており、時系列でのデータも展開されている。一部(図版点線部分)でデータの不連続性があるが、金融資産の保有額においては全般的に少しずつではあるものの貯蓄が増加傾向にあること、バブル崩壊後はほぼ横ばいが続いていることなどが把握できる。

金融資産保有額(1978年以降・無貯蓄世帯を除く平均値)
金融資産保有額(1978年以降・無貯蓄世帯を除く平均値)

また、貯蓄が1年前と比べて増えた・減った人それぞれについてその理由を尋ねたところ、ベスト3の理由は次の通りとなった。

■増えた
・定例的な収入から貯蓄する割合を引き上げたから……27.3%
・定例的な収入が増加したから……26.8%
・配当や金利収入があったから……11.5%

■減った
・定例的な収入が減ったので貯蓄を取り崩したから……51.3%
・こどもの教育費用、結婚費用の支出があったから……29.7%
・耐久消費財(自動車、家具、家電など)購入費用の支出があったから……29.4%


減った理由のトップの「定例的な収入が減ったので貯蓄を取り崩したから」はここ十年来高い水準を示している。貯蓄と定期的収入とは少なくとも相対関係、多分に因果関係の要素があることが分かる。

ちなみに「全世帯の平均値で1259万円、保有世帯のみでは1624万円」という金融資産保有額について「そんなに無い」と異議を唱える人も多いと思われる。調査結果でも言及されているが、これには一つのからくりがある。

調査結果では平均値として1259万円が算出されているが、あくまでもこれは「全体を全部足して頭数で割った」もの。実際には全世帯の約7割が平均値よりも保有額が少ないという散らばり方をしている。今件の場合、資産保有額ゼロの世帯が682だったのに対し、5000万円以上は146に過ぎない。そして全世帯を金融資産の額の順に並べて人数的に真ん中に位置する人の金融資産保有額(「中央値」と呼んでいる)を見てみると、500万円となる。

中央値の考え方。今回の調査結果では中央値は500万円だった。
中央値の考え方。今回の調査結果では中央値は500万円だった。

つまり、全体世帯の金融資産平均値を中央値の2倍以上にかさ上げしているのは、一部の富裕層による金融資産であることが分かる(ただし平均値・中央値共に前年よりは増加している)。これを単純に「格差社会の広がり」と断ずることは安易でしかないが、一つの事実として認識する必要はあるだろう。


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