【更新】中国製餃子から農薬系成分「メタミドホス」検出、中毒患者発生
2008年01月31日 08:00
すでに多くのメディアで報道されているように、1月30日【JT(2914)】は同社が中国から輸入して販売している冷凍餃子「手作り餃子」を食べた人計10人が、昨年12月から今年にかけて食中毒症状を起こし、一人は一時意識不明の重態に陥っていたことが明らかになった。
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今件について1月30日夜開かれた関係者による記者会見については[産経新聞の11投稿に及ぶ記事によるレポート]が詳しいが、これと[JTのプレスリリース]などを統合すると
・中国の河北省「天洋食品」が製造し、東京の「ジェイティフーズ」が商社「双日食料」を経由して輸入。生協やスーパーなどで販売。
・「天洋食品」側では今件について「ありえない」と真っ向から否定。
・混入されていたものは有機リン系殺虫剤成分「メタミドホス」
・梱包されていた袋に穴が開けられた形跡はなく、工場で製造して梱包された中国国内において成分が混入したもよう。
・サンプル品には異常はない。
・昨年末からにおいなどの問題報告はあった。しかしその時点で農薬検査など科学物質チェックはしていなかった。「少し認識が甘かった」。
公開された「回収対象食品」。一覧は上記JTのプレスリリースにあるので、心当たりのある人はチェックを。
など、関係者側の認識の甘さが浮かび上がっている。またJT以外でも同じ「天洋食品」において製造した食品について、安全確保の観点から[加ト吉(2873)][プレスリリース])、【江崎グリコ(2206)】(【プレスリリース】)、【味の素(2802)】([関連記事])【マルハ(1334)】([プレスリリース、PDF])などでも商品の回収を告知するなど、影響は広範囲に広まりつつある。【厚生労働省】、【農林水産省】など関連各省庁でも警告を発している。
●不明な点が山盛り状態
上記産経新聞に掲載されていたJTなどによる記者会見のレポートを読めば分かるように、販売側でもまだ確認できていない点が多い。さらに製造元では現時点で関与を否定(フジテレビの取材)、中国政府側もあまり乗り気ではないことから([中国当局、ようやく「調査開始」と声明 毒餃子])、事態の進展には時間がかかるものと思われる。
厚生労働省などの資料によれば、混入していた「メタミドホス」(【参考:国立医薬品食品衛生研究所】)は日本では使用を禁止されているが、中国では農作物への農薬として広く利用されている。
気になるのは症状が発生した件数。上記厚生労働省の資料によると、これまで1年間で1231トンあまりもの同種餃子が輸入され流通しているとのデータがあるが、今回のような「強い症状」が発生したと報告されたのは10人のみ。今後増えることも予想されるが、それでもあまりにも少なすぎる。仮に製造工程で食材などにそれほど強力なもの(検査の結果、梱包された袋からも検出されたという)が混入したとすれば、もっと大規模に、そして一斉に発生してもおかしくない(例えば学校給食や老人ホーム、病院での配食における食中毒発生事例を思い出してほしい)。
食材についていた該当物質が製造過程で取り払われきれずに残ってしまったというありがちなパターンより、何らかの形で特定少数の商品に対し、意図的に混入された、という可能性も否定できなくはない。どちらにしても今後の調査結果を待たねばならないだろう。
なお【フジテレビ食品研究所による残留農薬データベース】によると(下部の「農薬名の全文検索」から「メタミドホス」と入力して検索)、過去5年強で「メタミドホス」関連の残留農薬違反事例は30件以上報告されている。うちフィリピン・ブラジルが過去1件ずつで、残りはすべて中国経由のものである。
データベースから検索。「メタミドホス」関連はほぼすべて中国経由
国内で利用している場合があるから、という事情はあるのだろう。とはいえ、それが口に含まれると強い毒性の物質であることや、輸出先では使用禁止扱いなことは認識しているはず。にも関わらずこのような事例が後を絶たず、今回は「食中毒」という言葉を使うことすら語弊があるような問題が発生した以上、関連各社には厳正な対処をしてほしいものである。
また、一人一人、そして企業も食品衛生に関する問題や、「チャイナフリー」「チャイナリスク」についてあらためて考える時期に来ているのだろう。
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