【更新】テラメント問題続報 当人曰く「訂正報告書を出すつもりはない」

2008年01月28日 06:30

株式イメージ先に【トヨタやNTT、ソニー、フジテレビがテラメントに買収された日】でお伝えした、【トヨタ(7203)】など日本の大企業の株式を51%取得したという内容の虚偽記載の(疑いが持たれている)大量保有報告書が1月25日夕方に届けられた問題で、届出を行なったテラメント社の山口滋代表取締役が日本経済新聞社のインタビューに答え、「訂正報告書を出すつもりはない」と回答していることが明らかになった([日経新聞、該当記事の一部])。

スポンサードリンク

「訂正報告書を出すつもりはない」

今件は1月25日の夕方16時12分、神奈川県川崎市麻生区にあるテラメント株式会社が【トヨタ(7203)】【フジテレビ(4676)】など大手6社の株式を20兆円強の取得金額で51%保有したという内容の大量保有報告書を提出したもの。5%ルールや浮動株数、放送法の問題などから「ありえない」内容であったが、発表当初から財務諸表など企業の開示情報を閲覧できる電子システム「EDINET」(金融商品取引法に基づく有価証券報告書等の開示書類に関する電子開示システム)で不特定多数の人に閲覧が可能なため、問題視された。

システム上事前に監督庁側から内容の精査は出来ず、内容に偽りがあっても「公的機関のサイトから発信された」ものであるため、事は深刻。しかも掲載から2日経過した27日の時点でもいまだに掲載されている。これは掲載データを削除する法的根拠が現在のところ見つからないため。金融庁側では「虚偽記載と認められれば、訂正命令を含め厳正に対処します」とコメントしているが、現在訂正命令も削除も見られないことから、「認めるだけの根拠が揃っていない」と推測できる。

問題の大量保有報告書を提出したテラメントの山口滋代表取締役だが、連絡が取れなくなることもなく、1月26日には日本経済新聞のインタビューに答えている。記事によれば日経新聞に対し今件の大量保有報告書について「訂正報告書を出すつもりはない」と述べたという。また、購入注文についてはすでに「リーマン(ブラザーズ)の担当者に伝えた」、取得資金は「分からない」と答えているとのこと。ちなみに山口氏本人は「今は仕事がない」ため、日雇い派遣労働に従事しているということである。

誤りであることを実証する手立てを検証する

27日においても訂正命令が出ていないことについてちまたでは「土日だから」という意見の他に、「51%が虚実であるという証拠を揃えられないから」とする話もある。要は「ウソだと分かっていてもそれを実証するだけの具体的証拠がないから、グレーゾーン状態」であり、「グレーゾーンである以上、訂正命令は出せない」とするものだ。

果たして本当にそうなのか。NTT(日本電信電話)を例にとって考えてみる。大量保有報告書によれば、テラメントが「取得した」と主張しているNTT株式についてのデータは次の通り(検証に必要な部分のみ抽出、四季報最新号併用)。

■日本電信電話

[保有株券等の数]
株券又は投資証券等……8,015,000株
 合計……8,015,000株

[株券等保有割合]
発行済株式等総数(平成19年11月19日現在)……15,715,024株(51%)

[当該株券等の発行者の発行する株券等に関する最近60日間の取得又は処分の状況]
19/11/12:株券、8,015,000、100%、取得単価500000円

[保有株券等の取得資金]
自己資金額……0千円
借入金額計……4,008,000,000千円
 取得資金合計……4,008,000,000千円
[借入金の内訳]
名称(支店名)……山口 滋
業種……個人
代表者氏名……山口滋
金額……4,008,000,000千円

[主要株主]
財務大臣……530.7万株(33.7%)
自社(自己株口)……192万1株(12.2%)

[株式比率]
外国……22.8%、浮動株……15.2%、特定株……59.8%

[2007年11月12日における市場取引状況]
始値……50.4万円、終値……50.0万円、出来高……50万株


テラメント(山口氏)のNTT株式に対する行動をざっとまとめると「法人格のテラメントが山口氏個人から4兆円あまりを借り受け、それを用いて1日で、株券の現物にて51%に相当する1570万株相当を取得した」ということになる。

こんな莫迦げた話は、「真実でないことを証明しろ」といわれたらNTTの株主名簿を確認すれば一発。「ほふりの問題もある。名簿書き換えが済んでいないかもしれない」といった反論もあるかもしれないが、それなら別の手で簡単に説明できる。

そもそも11月12日には市場で50万株しか取引されていない。仮に山口氏のテラメントがすべて買い集めたとしても50万株(3.2%)しか取得できない(引渡し日を考えるともう少し事は複雑になるが、この際無視しておく)。つまり801万5000株-50万株で、751万5000株(47.7%)は公開市場以外で買い集める必要がある。

公開市場で取引されている株数は15.2%だから、残りは84.8%。この84.8%を持つ特定株主、あるいは外国人株主などから47.7%を買わないと51%は確保できない計算。

さて。

84.8%のうち、財務大臣は530.7万株(33.7%) 、自社(自己株口)は192.1万株(12.2%)を所有している。この二つを差し引くと、38.9%になる。これは47.7%よりも小さい。つまりNTT(と金融庁)としては、財務大臣(財務省)と自社の財務部門に「保有している全株について、テラメントに売ってないよね?」と確認すれば良い。確認ができれば、仮に残りの特定・外国人株主がテラメントに対して株式を売却していたとしても、51%には到達せず、テラメントが提出していた大量保有報告書は虚偽であることが実証できる。

・11月12日の市場出来高は3.2%。よって

    51.0%-3.2%=47.8%

 を市場以外から買い集めねばならない。
・市場で取引されている株数は15.2%。よって特定、外国人株主は84.8%(最大)。
・特定株主のうち財務大臣が33.7%、自社株が12.2%。足して45.9%。
・財務大臣と自社株について売却の事実が無いことが確認できれば、

    84.8%-45.9%=38.9%<47.8%

 だから、残りの特定、外国人株主からすべて株式を買い集めても、51.0%には達しない。
・よって「51.0%取得した」とするNTT株式への大量保有報告書が虚偽であることを証明するには、財務大臣と自社株の売却の事実が無いことを確認すれば良い(終)。


自社株の管理部門と財務大臣(財務省)への確認など、土日に担当官を呼び出してチェックさせれば土日でも可能のはず。確認が取れ次第即時金融庁長官名なり財務大臣名なりで虚偽記載と認めたこと、訂正命令、そして厳正な処罰を行なうことの通達を出せば良い。


世間一般にはこれを「釣られた」というのだろう。実証している当人(不破)自身も、半ば馬鹿馬鹿しくなった、あるいは大人気ないのは否定できない。とはいえ、常識の斜め上を行くような思考の持ち主は世の中に存在する。彼らによって生じた問題に対しては、彼らの考えを認識した上で、常識や通常のルールを飛び越えた対応をしなければならないのも事実。

そもそも山口氏本人がテラメントに貸し付けたとする20兆円超の資金はどこからねん出したのか、日経の記事では「リーマン(ブラザーズ)の担当者に伝えた」と日経側で付け加えているが、後に「(ブラザーズ)」ではなくて「(サラ)リーマン」であると説明するためあえて「リーマンの~」とコメントしたのではないかなど、ツッコミどころはダース単位で存在する。ちなみに「注文をしておいて取得できると思ったので報告書を出したが、貸し付ける資金が調達できなかったので注文が通らなかった、ごめんなさい」という話は通用しない。すでに過去において取得(注文)したという内容の報告であるからだ。

今件が山口氏・テラメント自身の意図によるものなのか、それとも(よくある話だが)会社や氏はダミーでしかなくその裏に真の計画者がいるのかは、今のところ分からない。どちらにせよ前回の記事でも一部指摘したように、テラメントが資本金1000円の小規模な会社であること、設立した2007年11月直後から「買付をした」と報告書にあることなどから、テラメントが今件のために設立された会社である可能性は低くない。

今件についてはこちらも繰り返しになるが、金融庁も敏速な対応を見せており、一両日中に事態の進展が見られる可能性は高い。今後の進展が待たれるところだ。


……とここまで執筆して月曜日にアップロードしようとしたところ、27日(日曜)の段階で金融庁から訂正命令が出された。せっかくなのでこの記事もあわせ、日付は28日月曜とするが、早速この時点で掲載すると共に、訂正命令についてお知らせすることにする。


(最終更新:2013/08/14)

Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...

スポンサードリンク



 


 
(C)JGNN||このサイトについて|サイトマップ|お問い合わせ