【更新】仏ソシエテ銀行巨額損失問題続報
2008年01月27日 12:00
先に【仏大手銀行のディーラー、先物不正取引で過去最大規模の7700億円の損失を銀行に与える】で報じた、フランスの銀行【ソシエテ・ジェネラル】のディーラーが引き起こした巨額損失の件について、さらなる問題が噴出している。トレーダー当人の顔写真や詳細なプロフィールが早期に公開されたのはともかく、損失が「公開」されたのは実際のところ「損失が確認されてから一週間経過したのち」であることなど、情報公開の遅さに関係筋から不満の声が上がっているという。
スポンサードリンク
損失問題が公開された直後から、各メディアでは当人のトレーダーJerome Kerviel氏の顔写真、恐らく社内保存用のプロフィールなど詳細なデータが公開されている。その当人はといえば解雇された後弁護士に保護されていたが、[日経新聞]によれば1月26日にはフランス・パリの警察当局に身柄を拘束された。現在は当局の金融捜査班に移送されたという。
またJerome Kerviel氏が自分の不正を明らかにした19日の時点では、彼の損失は49億ユーロではなく15億ユーロ(2350億円)に過ぎなかったということが「ライバル銀行の関係者」からの話として伝えられている。ソシエテ・ジェネラル銀行は危険なポジションを維持するよりは、損失を確定すべきであると判断し、ポジション整理を実施(俗に言う「損切り」)。結果として34億ユーロもの損失を上乗せすることになった。
一方でソシエテ・ジェネラル銀行そのものの情報公開への姿勢に関係者からは不満の声が続出している。事実開示は24日だったものの、不正行為の確認が出来たのは19日の段階だったという。当銀行の法人担当のトップJean-Pierre Mustier氏によれば、Jerome Kerviel氏が保有していたのはイギリス、ドイツ、そしてユーロSTOXX株価先物のポジションで、総額500億ユーロ(7.91兆円、ソシエテ・ジェネラル銀行の市場価値以上)にも登っていたとのこと。そしてこのポジションは翌週の21日から解消され23日には損切りをし終え、24日の情報公開・損失額発表に至っている([Pressure grows for SocGen answers (Financial Times)])。
[Anger mounts at timing of SocGen’s revelation]によれば、この情報開示でもっとも怒りをあらわにしたのは他ならぬフランスのニコラ・サルコジ大統領だという。何しろ世界の指導者が集まるダボス会議で「フランスはヨーロッパのリーダーたる地位を確保するようになった」と主張しようとしていたのに、金融面で規制がしっかりと守られていないことを露呈してしまい、思いっきりケチがついた形になった(フランス首相も今件について会議で「リスク管理を強化する必要がある」と言及せざるを得ない羽目になった)。
しかし大統領の不満も、当のソシエテ・ジェネラルの株を購入した投資家に比べたら大したものではないのかもしれない。どこの国であろうと「株式公開企業は経営に重要な影響を与えうる(=株価に変動を及ぼす)情報は速やかに市場に伝えねばならない」という原則があるが、今回はその原則に反したことになりかねないからだ。
ソシエテ・ジェネラルの株価動向(Finacial Timesより)
同行の株価動向を見てみると、月曜日以降はヨーロッパ市場全体の流れを受けて急落。水曜日には持ち直したものの、木曜日の損失発表を受けて一時売買停止が行なわれ、その後リバウンドを経て下落基調にある。果たして月曜以降の市場全体の急落が、他の要因によるものなのか、それともソシエテ・ジェネラルによるポジション整理が一つの原因になったのかは定かではないが、問題視する意見も多い。
すでに当局は単にトレーダーJerome Kerviel氏本人の不正取引だけでなく、同銀行株の売買でインサイダー取引がなかったかどうかへの調査を開始している。さらに投資家たちからは「果たして今件の問題で生じた損失は本当に49億ユーロだけなのか。最終的にはもっと多いのではないか」という声が高まっている。
関連記事によるとJerome Kerviel氏は隠ぺい工作のためか、二、三日でポジションを入れ替えるトレーディング方法を用いていたという。「銀行側が強制的に損切りをしなくとも結局彼自身が同じような損失を被ったのではないか」と暗に銀行側では弁明しているが、その行為が正しかったのかどうかは、情報公開のタイミングとあわせ、今後取り調べの中で明らかにされることだろう。
■関連記事:
【ソシエテ・ジェネラル銀行の49億ユーロ不正取引は過去最高の取引損失額か】
(最終更新:2013/08/16)
スポンサードリンク
ツイート