高温赤外線でアスベストを溶解! はがさずに無害化できる技術開発さる
2008年01月24日 08:00
産業技術総合研究所は1月23日、建物の断熱材などに使われ現在では健康被害などの社会問題を引き起こしているアスベストについて、壁からはがし落とさずにその場で無害化できる技術の開発に成功したと発表した。赤外線を使った加熱装置を使い溶かして無害化する(【発表リリース】)。
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アスベストは1960年後半頃から安価で丈夫な断熱材として多くの建物に利用された。しかしアスベストから発生する細かい繊維を人間が吸収すると、長期間の時を経て中皮腫や肺がんなどの原因となるとし、現在では厳しい制限が設けられている。
利用当時の甘い基準でアスベスト建材が使われた建物では改修工事が逐次行なわれているが、その処理にはアスベストを吸わないよう防じん着とマスクで完全装備した作業員が、飛散したアスベストを外部に漏らさぬようビニールシートなどで目張りをした部屋内で、手作業などではがしていくという、非常に大掛かりな処理が必要となる。さらにその後厳重に二重梱包され特別管理産業廃棄物として「管理型」の産業廃棄物最終処分場に埋め立て処分される。高いコストと高度な技術、さらには「その場でははがすだけ、他の場所で処理をする」という複数工程が必要。
これら一連の作業を行える企業は限られ、作業の順番待ちで緊急性の要する建物でも処理が追いつかなかったり、不法撤去作業・投棄も起きるなど、処理の面でも社会問題化している。
今回開発された技術では、2004年に発表している高温を実現化できる簡便な赤外線加熱装置のアイディアを元に、ハロゲンランプを元にだ円型の赤外線反射鏡を用いた加熱装置を開発。1500度以上の(1600度の融点を持つロックウールが溶けたことから少なくとも1600度以上と思われる)光を照射して対象を溶かすことで、アスベストの直接の問題となる繊維状の形態を溶かして「だま」のような形にすることに成功した。
今回の技術で「溶けた」アスベスト
さらに吹き付け実験の際、アスベストの下の層にあるコンクリートには損傷がなかったことから、「コンクリートに影響を与えず吹きつけられているアスベストのみを焼いて無害化できる」と期待されている。
技術の概念図(上)と高温溶解中の動画(下)。動画はリリースページから参照できる。
今回の実験は小規模で焼付け面積も小さなもの。今後大面積の処理ができるように装置を大型化することで、作業コストの大幅な削減や作業時の安全性向上など、処理コストを大幅に減らすと共に作業の簡易化も図れる。つまり別の場所にわざわざ運ぶことなく、その場でアスベストを無力化処理できるだけでなく、生のアスベストの状態のままはがす必要も無く、はがす際に生じる細かい繊維に関する備えも簡便化可能というわけだ。
一部報道によると研究所側では既存のアスベスト処理企業の意見も求めながら1~2年後には試作機を製作し、3~4年後には実用化したいとしている。
いわば高度経済成長期における「負の遺産」の代表格として話題に登ることの多いアスベスト。今回の技術が実用化されれば、処理もより安全で安価でスピーディーなものとなり、作業も大いに進展することだろう。
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