年中行事の実施度に見る現在の「寂しんぼう」社会
2008年01月21日 06:30
MDBネットサーベイは1月18日、年中行事に関する調査結果の一部を公開した。それによると昨年2007年に行なった「年中行事」について、「正月に雑煮を食べた」人が9割近くに登ったのに対し、「土用の丑の日に鰻(うなぎ)を食べた」人は5割強でしかないことが明らかになった。毎年対象となる時期にはマスコミや世間一般で話題に登る年中行事でも、実際に自分が行なっているかどうかについては千差万別であることが分かる(【発表リリース】)。
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今調査は2008年1月11日から15日の間にインターネット経由で20歳以上の男女に対して行なわれたもので、有効回答数は506票。男女比、年齢構成比は非公開。取得件数がやや少なめなので、世間の実情とは多少のぶれが生じている可能性がある。
同調査では日本国内で行なわれている、季節それぞれの年中行事について古今東西和洋折衷を問わずピックアップされ、それらについて2007年に実施したかどうかを問われている。おせち料理を食べたり端午の節句を祝うなど日本特有のものもあれば、ハロウィンの行事など海外での行事に近いこと、バレンタインチョコレートを贈った・もらったなど日本で変化して普及している(海外では男女問わず贈り物をする。チョコに限定されない)。
多種多様な行事がリストアップされた中で、もっとも支持を集めた(=去年実施した割合が多い)上位は、「正月に雑煮を食べた」だった。
実施状況(上位五位)
ひな祭りなら女の子がいないとほとんど関係のない行事となるし、七五三はその年の子どもがいなければ自分には何の関係も無くなる。それら「対象が限定される」年中行事は別にしても、正月の雑煮やクリスマスケーキ、正月の初詣など年末年始のイベントが軒並み上位を占めているのが分かる。これはアンケートの取得時期が1月中旬で「今年の分を実施してからまだ日が浅い」こと、あるいはつい先日実施したからよく覚えている(クリスマス)のがもっとも大きな要因だろう。
もちろん年の区切りとなる年末年始のビッグイベントの中で、参加・実施しやすい(例えば一人でも実行できる、など)「お雑煮を食べる」「クリスマスケーキを食べる」「初詣に行く」はいまだに多くの人に愛され、習慣化されているのも事実。
一方、「お雑煮」については選択肢の中に「おせち料理を食べる」が無いため、「お雑煮」にすべて含まれてしまっているものと思われる。いわば「元旦に食べる正月の特別な料理」というニュアンスもあるに違いない。また同じ正月モノの料理でも「おとそ」「七草がゆ」「鏡開き」が上位に入らなかったのは、お雑煮と比べるとハードルが高かったからなのだろう。
・西洋風は若年層、純和風は高齢層
・条件が必要な行事は実施者が少ない
(「一人で可能」なものは好まれる)
年中行事に対し「年中行事って結構面倒じゃない? パスパス」「何それ、聞いたことないよ」という若年層は相当数いると思われる。特に古来からの日本の伝統的なイベント(例えば節分にやいかがし(柊の枝にイワシの頭を刺して戸口に挟む魔よけの飾り)を用意する、端午の節句に菖蒲湯に入る、など)については核家族化の進行もあって、教わっていない人も多いと推測される。あるいは教わったとしてもそれを「古臭いもの」として自分ではやりたくないと判断してしまうのだろう。
その推測がある程度裏付けられるのが、上位五位における年齢階層別の実施率。
上位五位における年齢階層別実施率
お雑煮は多少の差があれどもほぼすべての年齢層で8割以上の人が実施している。しかし「お花見」では60代以上が7割を超えているのに対し20~30代では5割程度しかない。「若年層の実施率が低い」傾向はお花見以外にも「土用の丑の日」でも顕著である。
他方、半ば西洋のイベントの一つ「クリスマスケーキを食べる」では「老高若低」の傾向が逆転する。40代の83.8%を筆頭に20~40代の実施率は8割前後を占めるが、50代・60代以上は6割前後でしかない。一概に二分化するのは多少危険な気もするが、大きく分けると「西洋風のイベントは若年層から中堅」「日本古風のイベントは高齢層」で多数実施されている傾向がある。
意外だったのは「バレンタインデー関係」「母の日・父の日」など、世間一般で大きく取り上げられるタイプのイベントですら、上位五位に入っていなかったということ。知名度を考えると「土用の丑の日」よりも上位に入っておかしくない。
これにはある仮説が成り立つ。両イベントに共通しているのは「相手が必要なこと」。一人暮らしの場合にはバレンタインデーも父の日・母の日も、それこそ「でもそんなの関係ねぇー」で終わってしまうことになる。むしろ「バレンタインデーにチョコレートを'食べた'」という選択肢を追加すれば、かなりの得票を集めるのではないだろうか。
「個人の時代」「個性の時代」といわれて久しいが、年中行事が廃れつつあるのも「一人一人が他人との関係において、薄っぺらいつながりしか持たなくなった」ことが原因かもしれない。そのような対人関係を持つ人にとっては、相手を必要とする行事をする機会も必要も無くなるからだ。
一人で設問にある年中行事すべてをこなせ、という無茶をいうつもりはさらさらない。ただ、生活にメリハリをつけるという観点においても、年中行事をすることでプラスになることは多い。気軽にできること、例えばこれからなら端午の節句にしょうぶ湯に入るなどをしてみてはいかがだろうか。
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