スタグフレーション突入の兆しか? 「物価大幅上昇」「収入は減少」という意識調査結果

2008年01月17日 08:00

株式イメージ日本銀行は1月16日、2007年12月に実施した「生活意識に関するアンケート調査」の結果を発表した。それによると消費者の9割近くが「1年後に物価が上がる」と予想しており、9月に実施した前回調査の7割強から大幅に増加したことが明らかになった。さらに物価上昇率の予想は平均で+7.3%で、これも前回調査の+4.6%から大きく上がっている。国民生活においても物価の上昇がリアルに感じられ、今後も物価が上がることに歯止めがかからないと考えている層が増えているのが分かる(【発表リリース、PDF】)。

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今調査は2007年11月9日から12月6日の間、全国満20歳以上の個人4000人に対して郵送調査法によって行われたもので、有効回答数は2303。男女構成比は48.8対51.2、年齢構成比は50代が19.8%、60代が19.1%、40代が16.5%など。地域別では関東が32.2%、近畿が15.4%など。

当調査結果では景況感や暮らし向き、消費意識、物価に対する実感、日本経済の成長力などが発表されている。ここでは物価について焦点をあて、見てみることにする。

現在の物価が1年前と比べてどのように変化したかと思っているかという問いには、「かなり」「少し」を合わせて8割近くの78.6%の人が「上がった」と回答している。

「現在の物価は1年前と比べて」
「現在の物価は1年前と比べて」

前回調査の2007年9月からわずか3か月しか経過していないが、その間に「かなり上がった」層が11.8%、「少し上がった」層が6.8%、合わせて18.6%と2割近くも増加している。これは誤差の範囲を超えており、明らかにこの3か月間で「物価が上昇した」と実感している人が増えている証しといえよう。

具体的な物価上昇率については、前回調査では平均値が+4.3%・中央値が+3.0%だったのに対し、今回調査では平均値が+6.3%・中央値が+5.0%とこちらも大幅に増加している。物価上昇率も大きく増えていると肌身を持って感じているようだ。

さらに「1年後の物価は」、つまり今後物価が上がるかどうかについてたずねたところ、こちらも前回調査から大きく「上がる」と答えている人が増えているのが分かる。実に9割近くが「上がる」と回答。前回の7割強から2割近くの増加を見せている。

「1年後の物価は現在と比べて」
「1年後の物価は現在と比べて」

前回調査では「かなり」「少し」をあわせると71.7%が「上がる」と回答。それに対し今回は86.3%にまで増加。特に、「少し」層すら減り「かなり上がる」層が3倍以上に増加しており、今後物価が相当に上がるのではと心配している人が増えているのが分かる。

予想される物価上昇率も、前回は平均で+4.6%・中央値+3.0%なのに対し、今回調査では+7.3%・中央値+5.0%とこちらも2倍近くに上昇。「かなり上がる」層の増加を反映している。ちなみに「5年後の物価予想」も似たような結果が出ている(86.6%が「上がる」、平均値は年+6.0%の上昇)。

物価が上がればそれに比して収入も増えないと懐具合は寂しくなり、生活も苦しくなるのは自然の理。しかしながら収入については「1年前と比べて増えた」人はわずか7.7%に過ぎず、「変わらない」が47.0%、逆に「減った」という人が45.0%に達している。

収入について(1年前と現在、1年後と現在のそれぞれの比較展望)
収入について(1年前と現在、1年後と現在のそれぞれの比較展望)

1年後についてもほぼ同比率の回答が出ており、物価が1割弱上昇するにも関わらず収入は変わらないか、あるいは減ると考えている人が大多数を占めていることが分かる。

「物価は上がる、収入は増えないどころか減るかもしれない」となれば、「景気が悪化していくのではないか」と考える人が増加するのも当然のことで、景況感についても「1年前」「現在」「1年後」それぞれについて、前回よりも大幅に悪化している。

「1年前」「現在」「1年後」それぞれの景況感
「1年前」「現在」「1年後」それぞれの景況感

特に「現在の水準」において「どちらかといえば」も含めた「悪い」と回答した層が前回の54.6%から64.1%と1割近く増加、「1年後」では「悪くなる」のみにおいて29.6%から46.4%と16.8%と1割強も増加しており、一段の景気悪化を懸念している国民の声が聞こえてきそうな結果が出ている。


原材料費の高騰で身近な耐久材・消費財が次々に値上げする一方、手取り賃金は上がる気配が見られないどころか中小企業では低下する傾向すら見受けられる。このような状況では景気の先行きに明るさを見出すこと自身困難といえる。そのような実情を背景にした国民の心境が、今回の調査結果からは明確な数字として浮かび上がっているのが分かる。

通常の経済状態においては物価が上昇すれば賃金も上がり、貨幣価値が下落するというインフレーションが起きうる(物価上昇率に賃金上昇率が追いつかず、庶民の懐具合は悪くなる)。しかし昨今においては物価が上昇しているにも関わらず賃金は上がるどころか低下し、景気が後退するという、「インフレーション」+「スタグネーション(stagnation、沈滞)」の造語「スタグフレーション」という状況に陥っている可能性が高い。日本においては過去、1970年代の石油ショックによって石油価格が高騰したのをきっかけにスタグフレーション状態となり、経済悪化・生活の困窮化が顕著なものとなった。単なるインフレと違い、為替や金利政策にあまり効果はなく、対策は非常に難しい。

経済状況を「適切に」把握した上で、「適切な」政治・経済判断が求められるものと思われる。

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