米民間旅客機に対空ミサイル回避装置を試験搭載

2008年01月06日 12:00

航空機イメージ【USA TODAY】が伝えるところによると米国土安全保障省(the Department of Homeland Security)は1月4日まで、スティンガーのような地上発射携帯式地対空ミサイルによる攻撃から旅客機を守るため、今春にも一部の民間旅客機に対しミサイルの回避装置を搭載し、性能や維持費などを調べる実証試験を行なうと決めた。

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今実験は旅客会社の協力を得て行なわれるもので、計3機のボーイング767-200型機に対して装備が行なわれる。航路はニューヨークのジョン.F.ケネディ国際空港・ロサンゼルス・サンフランシスコの各空港間になるとのこと。装備は機体下部に取り付けられるミサイル探知用センサーと、ミサイルの誘導装置をまどわせる赤外線レーザーなどから構成される。

安価で(闇市場では1本数百ドルで手に入るという)、それゆえに一部組織が用いる可能性が高いとされている地上発射携帯式地対空ミサイルの大部分は、赤外線追尾型の誘導装置を持っている。これは周囲の熱源を調べ、もっとも熱の高いところに向かうようミサイル本体を誘導するもの。大熱量を吐き出す飛行機のエンジン部分は格好の的となる。ましてや旅客機は、貨物機同様に飛行速度が遅く、命中率も高くなる。

今回の試験では維持費の計測以外に、装備にどれほどの効果があるかもチェックされる。もちろん実際にミサイルを「試射」しての実験は行なわれない。また、今回の実験には2900万ドル(約32億円)の予算が計上されたが、装備そのものは1セット/機あたり50~100万ドルで設置できるという(維持費は別)。非常に高額には違いなく、連邦政府がこの金額を負担するのかどうかでも議論を呼びそうだ。

アメリカ国内では幸いにも実際に装備が作動するような事態は発生していないが、2002年にはアフリカのケニアでイスラエルの定期旅客機が2発の地上発射携帯式地対空ミサイルに狙われた経歴がある(この時は幸いにも命中しなかった)。これを元にイスラエルでは、赤外線追尾装置をまどわす「フレア」などの導入を一部旅客機に実装している。

人命が関わっていることやアメリカ独自の事情を考えると、ある程度の経費がかかるのも仕方がないのだろう。とはいえ、1本数百万円の対空ミサイルで初期装備に数億円、維持費にも似たような金額を「敵」に負担させていると考えれば、「経済的に効率よく損失を与えている」という観点で作戦は成功したともいえる。シャクな話だが、これもまた近代兵器が流通している現代におけるリスク負担というところなのだろう。


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【対空ミサイルをそらす装置「フレア」をイスラエル航空が導入】

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