初の適用なるか・三洋電機の監理ポスト入りで注目される特設注意市場

2008年01月01日 19:00

株式イメージすでにご存知の方も多いだろうが、【三洋電機(6764)】は2007年12月25日、過去の決算を大幅に修正し、一部期間において不法配当状態だったことを明らかにした(【発表リリース、PDF】)。同日東京証券取引所は同銘柄を上場廃止の可能性がある銘柄として投資家に注意をうながすために設けられた「監理ポスト」入りにする処置を行なっている(【発表リリース】)。ここでにわかに注目されているのが、昨年11月1日からスタートした新制度による市場「特設注意市場」である。

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「特設注意市場」とは先に【東証、問題企業専用「特設注意市場」新設や流通株数制限の緩和提示】【東証、「特設注意市場」正式に制度化】で説明しているように、一言で表現すれば「上場廃止を決断するほど重いペナルティは必要ではないけれど、監理ポストから通常市場に復帰では処分が軽すぎる」銘柄が移行される市場。

これまで問題行動を起こしてきた企業に対しては、東証側では「上場廃止」以外は注意勧告などの軽い処分しか課すことができず、上場廃止処分がなかなか抜くことが出来ない「伝家の宝刀」的な扱いをされるところがあった(いわば「オール オア ナッシング」)。この状況が少なからぬ企業に「投資家と市場を軽んじると見られても仕方のない」行為をさせる大きな要因とも指摘されていた。

上場廃止までの流れと「特設注意市場」との関係。
上場廃止までの流れと「特設注意市場」との関係。

そこで「上場廃止」と「通常市場復帰」の間に「特設注意市場」という中間層にあたる処遇を用意することで、各上場企業への処分の柔軟化が図られることになった。

この「特設注意市場」に割り当てられると、1年経過ごとに内部管理体制確認書の提出が求めれ、その内容に問題がなければ指定は解除され一部・二部・マザーズに戻れる。が、3回(3年)経過しても問題解決が見られない場合には上場廃止が決定されることになる。つまり「体制を立て直すためのタイムリミットは3年、しかも元の市場に戻れるチャンスは年一回のみ」ということ。

今回問題視されている三洋電機の決算訂正では、関係会社の株式評価損を再計算しなおすなどしたところ、単独決算は軒並み赤字修正。2003年3月期から2004年9月中間期までは配当の原資が不足していたにも関わらず配当を支払う(計280億円ほど)という不当配当状態であったことを明らかにした(商法上は配当原資が無ければ配当を出してはいけないことになっている)。

■特設注意市場の概要
・「上場廃止」と「上場維持」の中間
・「上場廃止」の執行猶予のようなもの
・取引上は他の市場同様
・東証の監視体制強化
・年に1度精査、合格すれば復帰
・3回精査にパスしなければ上場廃止
・「問題企業」のレッテル

今件について調査を進めてきた証券取引等監視委員会も12月25日、今件について特に2005年9月期には29.9%も自己資本を割り増しして報告したことを重視し、金融商品取引法に基づき830万円の課徴金を科すよう金融庁に勧告を行なっている(【発表リリース】)。しかし「(不適切な会計処理ではあるが)意図的な損失隠しではない」ことなどが、先に同様に監理ポスト行きとなった日興コーディアルグループの場合と類似しており、三洋電機も上場廃止はまぬがれるのではないかとする見方が強い。

ただし、日興の時にはまだ姿かたちもなかった「特設注意市場」の制度が、今回はすでに施行されている。内部管理体制に不備があると東証から認識されれば、この制度が適用される可能性は低くない。

仮に三洋電機が「特設注意市場」に指定されたとしても、東証の発表リリースを見る限りでは、売買上は通常の上場銘柄と同等に扱われる。東証側が求めた場合には直ちに照会事項について正確に報告する義務があるくらい。それに加えて先に説明した通り「年一度の通常復帰チェック」と「三年でチェックをクリアできなければ上場廃止というタイムリミット」が課せらせる。

ただし各証券会社は「特設注意市場」入りした銘柄を他の銘柄と同等に扱うかどうかは微妙なところ。信用取引における掛け率を低くするかもしれない。また、投資家の投資判断にも影響を与えるだろう。なにより該当する企業自身、「問題企業」のレッテルを貼られていることになるのだから、不名誉極まりないことになる。

三洋電機が初の「特設注意市場」指定銘柄となるか否か。それは正月明け以降に行なわれる東証側の精査判断次第。もし実際に指定されるとなれば、三洋電機自身はもちろん、東証にも、各証券会社にも、そしてそれぞれの投資家にとっても初めての出来事になるだけに、注目が集まるに違いない。


(最終更新:2013/08/18)

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