原油高で8割の企業が「収益圧迫」、3割が雇用調整の可能性と回答
2008年01月14日 19:00
厚生労働省は2007年12月28日、ハローワーク(公共職業安定所)において実施した、原油をはじめとする資源価格の高騰による雇用への影響に関する調査結果を発表した。それによると原油価格の高騰によって中小企業の8割以上が収益を圧迫されており、それが従業員の雇用や給与にも影響を及ぼし始めていることが明らかになった。もっとも比率が高い運輸業では、実に95.3%の企業が「何らかの形で収益を圧迫されている」と答えている(【発表リリース、PDF】)。
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今調査は2007年12月にハローワーク管内における従業員数300人未満の中小企業の中から、製造業や運輸業、卸売・小売業を中心に2784社を対象に行なわれたもの。
原油価格などの高騰が収益に影響を与えているかどうかについてたずねたところ、「大きく圧迫している」と回答した企業は実に4割近くに登っている。「やや圧迫している」の4割強をあわせると、実に9割強が「何らかの形で圧迫している」と答えている。
原油などの資源価格高騰が収益に与える影響
企業の規模別による違いは特に見られない。一方業種別では、他の業種の「大きく圧迫している」が3割前後であるのに対し、運輸業では7割近くを占めているように、とりわけ運輸業の危機感が強い。今アンケートがサービス業など製造・運輸・卸売・小売以外の業種を対象にしていないとはいえ、日本の企業の多数を占める業種であることに違いは無く、多くの企業が原油高に苦しんでいる様子が分かる(【最新の厚生労働省の資料(PDF)】によれば、2006年の時点で「製造業」「運輸業」「卸売・小売業」をあわせた雇用者数は2364万人、全雇用者数の43.5%を占める)。
これら原油高などの資源価格の高騰に対してどのように対応しているかたずねたところ、人件費以外の経費削減と答えた企業が7割に達していた。次いで商品やサービスへの価格対応が3割強にのぼっている。また、雇用調整・賃金調整と回答した企業も1割を超えた。
原油高などの資源価格の高騰への対応策
誤差として無視できない範囲の数字について見てみると、
・企業規模が大きくなるほど経費削減の割合が増え、人件費調整が少なくなる
・運輸業では特に人件費以外の経費削減や内部留保の切り崩しが大きく、商品やサービスへの価格転嫁が困難な状況にある
などの傾向が把握できる。
今後の雇用・賃金調整の見込みに対しては、70.6%の企業が「考えていない」と回答しているものの、22.1%が「可能性は低いがやらざるを得ない状況となることもありうる」、5.9%が「予定はないがそのような状況に追い込まれる可能性は高い」と答えている。「実施する予定」の1.4%とあわせると、7.3%が「原油価格などの資源高で将来雇用・賃金調整を行なう、あるいはその可能性が高い」、表現を変えれば29.4%が「将来雇用・賃金調整を行なう、あるいはその可能性がありうる」ということになる。
経済や業種、経営の状況によって賃金や雇用の調整をしなければならないのは企業の常であるので、仕方ない面はある。しかしすでに現時点で人数のやりくりが非常に難しい状況にある小規模企業で、「雇用・賃金調整を実施している」割合、さらに最後の切り札ともいえる「内部留保の切り崩し」の割合の双方が高いことから、小規模企業では原油などの資源高によって「ギリギリの状況に追い込まれていること」が分かる。このまま原油高をはじめとする資源高が続けば、多くの、特に小規模企業において賃金の調整や雇用削減など人件費の更なる削減をせざるを得ない状況になるものと思われる。
特に運輸業では原油高の影響が直接反映されることもあり、事態はさらに厳しくなる可能性が高い。運輸業への雇用・賃金調整は、同業態の効率や安全性・確実性の低下を導き、他の多くの業態にも影響を与えることもありえるだろう。
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