万引犯6割が「分かっているけど」身勝手な気持ちで繰り返す・青森県の場合……だけ?

2008年01月08日 12:00

時節イメージ【デーリー東北新聞社】が伝えるところによると、青森県警生活安全企画課が1月6日までにまとめたデータで「窃盗(万引)容疑で摘発」された男女の6割以上が「過去にも万引の経験がある」と答えていたことが明らかになった。元記事では「身勝手で軽い気持ちから犯罪を繰り返す実態」と説明している。

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万引き初犯は4割足らず、残りは常習犯!?

【青森県警】のサイトから該当するデータを見つけ出せなかったので(未成年者のデータは【生活安全部の項目で見つけられたが】)元記事に頼るしかないのだが、それによると青森県で2007年1月から10月末までにおける県内摘発者は993人。うち88人(少年31人、成人57人)を対象に聞き取り調査をしたところ、次のような結果が出た。

■過去に万引きをした回数

・ゼロ(初犯)……39.8%
・1回……20.5%
・2回……15.9%
・3回……6.8%
・4回以上……17.0%

■動機

・支払がもったいない……38.6%
・どうしてもほしい……35.2%
・困窮で払えない……18.1%

※他に約90%が「万引きは絶対にやってはいけないこと」と認識している


「ゼロ」の初犯をのぞけば、実に6割以上の人が万引き行為を繰り返していることになる。調査数が88人なので全体の実態と比べると差異が生じている可能性は否定できないが、大きなぶれが生じているとも思いにくい。また、摘発者全体の993人のうち、半数近くが50歳以上という統計データも出ている。そしておそらくこの傾向は、多少の違いはあれど青森県だけでなく、全国に共通したものだろう。

ニュース番組の小特集やドキュメンタリー番組でよく伝えられる万引き犯とお店との攻防戦では、そのほとんどが戦後の貧困さから来る行為のようなものではなく、スリルを楽しんだり支払が面倒くさかったりなど、ゲーム感覚で行なわれているという実情が伝えられている。また、本屋を経営する個人商店のブログやウェブサイトでも、そのような行為のレポートを何度と無く目に留める。

これらを「ほんの一部の話」「フィクション」と思っている人もいるかもしれない。しかし実際にこのような警察のデータを元にした現実を突きつけられると、きっと驚きを隠せないに違いない。

年齢で二分化される傾向と対応と

子どもの場合はまさに「ゲーム感覚」「お金を払うのが面倒くさい」、大人(特に中高齢者)の場合は行為自身に病みつきになってしまう(これもまた「ゲーム感覚」というのだろう)が主な理由。どちらにしても「してはいけないこと」と分かっているのに繰り返すのは、非常にたちの悪い話。前者の子どもの場合はしっかりとした「教育」が必要不可欠であるし、後者の高齢者の場合は状況によっては心理学方面での「治療」が求められる。

万引き犯、
子どもには教育、
大人には治療が必要。

「ゲーム感覚」「お金を払うのが面倒くさい」の場合は「リスクが低い」(つかまりにくいだろうし、つかまっても軽いペナルティで許してもらえると踏んでいる)点、そして「万引き」という言葉自体が、実際には刑法上の窃盗罪に該当するにも関わらず軽犯罪程度のものと誤認させているところが大きい。

元記事にもあるように2005年5月には刑法改正が行なわれ、万引き行為(窃盗罪)に対し「一か月以上十年以下の懲役」の刑罰に「一万円以上五十万円以下の罰金」が加えられている。つまりペナルティの裁量範囲が広がったわけだ。さらに店員などから逃走する際に無理やり逃げようとしたり、けがをさせた場合には強盗(主に事後強盗罪となる)となり、「五年以上二十年以下の懲役または禁固」が科せられる。

「自分がどんなにほしいと思っても、人のものを盗んではいけない」「他人に無用な迷惑をかけてはいけない」などは道徳倫理上で基本中の基本。だが、万引きに手を染めた、繰り返している人のほとんどは、それすらしっかりと習得していないということなのだろう。今件のような場合の子どもへの「教育」は心の治療のようなものであるし、高齢者への「治療」は精神・心理的な方面での再教育という意味合いもある。突き詰めるところ、同じものといえるのかもしれない。

【警察庁の最新データ(PDF)】によると万引き犯の検挙数は未成年では減少、高齢者では急増している。少子化・高齢化が一因なのだろうが、同時にカウンセリングなどの体制作りも急務とされることだろう。

この言い回し、そろそろ止めませんか?

また、「万引き」という言葉そのものが大きな誤解を招いているのも事実。言葉自体は江戸自体から存在していたようで、タイミングの「間」や商品を間引くという意味での「間引き」が時代と共に表現が変わり「万引き」になったらしい。由緒正しい(?)言い回しではあるが、今では「万引き行為はさほど悪いことではないんだ」と思わせる理由にもなり、悪弊極まりない言葉になってしまっているのも事実。

「万引き」という表現が
万引き行為を助長する。
ならばまず大人が、
その表現を止めてみよう。

せめて報道などでは「万引き」という言い回しを使うのを止め、すべて「窃盗」「泥棒」と言い改めるようにしてみてはどうだろうか。多少の混乱はあるかもしれない。しかし、行為の実態を周知するにはむしろこの表現の方が適切。長い目で見れば万引き行為そのものの減少に寄与するに違いない。

それとも「万引き」という言い回しの方が面白おかしく番組を作れるので、表現を止めるのは敬遠しているのだろうか。考え方を変えれば、そのような報道こそが「万引き」という犯罪行為を助長している一因にもなっているというのに……。

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