【更新】水産庁が海藻からバイオエタノール製造技術を研究開発・5年間で技術確立へ

2008年01月15日 06:30

バイオエタノールイメージ[読売新聞]が伝えるところによると水産庁は海藻からバイオエタノールを作る技術の開発に2008年度から着手する。すでに2008年度の政府予算で6000万円の研究費用を確保、今後5年間で技術を確立する計画。

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すでに当サイトでも何度か伝えているように、ガソリンに混ぜてガソリンそのものの消費量を減らす目的で利用されている、植物の主成分セルロース(植物細胞や繊維)を原材料とするバイオエタノールが「原油節約」と「環境保全」にプラスとなるとして注目を集めている。バイオエタノールは現在のところ、とうもろこしなどの穀物から作られているが、今度は需要が急増したとうもろこしなどの穀物の価格が上昇し、バイオエタノールのコスト高や食料自身の高騰を導いてしまっている。そこで、穀物(農地)よりも生産できる場所が多い海藻(海中)を原料にしてバイオエタノールを量産できれば、食物と「取り合い」をすることがなくなるのではないかと期待されている。

今回決定された[2008年度水産庁予算(PDF)]によれば、「水産業振興型技術開発事業」という題目で、該当項目として「海藻からバイオエタノールを生産するために必要となる技術(アルギン酸などから単糖=エタノールに分解する技術など)を開発」などが目に留まる。他の項目と合わせて予算は1億800万円とあり、この項目での予算割当ては昨年度の1億2500万円から逆に減っているのが不可解ではあるが、バイオエタノールそのものへの研究予算割当ては今年から始まっているので、あくまでも「他の項目とあわせて」ということなのだろう。なお海藻は普段食べ慣れているわかめや昆布などではなく、【「海藻からバイオエタノールを400万トン/年生産」水産振興会構想発表・2013年から実証事業開始】などで伝えているような、成長が早く燃料作成に適している海藻を使う方針。恐らくは「ホンダワラ」などを用いるものと思われる。

これら水産庁の研究も、2002年に閣議決定されたバイオマス関連のエネルギー開発普及計画と戦略「バイオマス・ニッポン総合戦略」の一環として行なわれることになる(【参考リリースページ、農林水産省】【利用活用促進ページ】【環境省発表リリース、2002年】)。

海藻を量産してバイオエタノールに利用するという研究はすでに【「海藻からバイオエタノールを400万トン/年生産」水産振興会構想発表・2013年から実証事業開始】で農林水産省所轄の財団法人が、【海藻(かいそう)でバイオ燃料問題が一挙に解決!? 東京海洋大や三菱総合研究所などが計画】にあるように三菱総合研究所や東京海洋大学などが推し進めている。また海外でも国際石油資本のロイヤル・ダッチ・シェル(Royal Dutch Shell)が2007年12月に藻からバイオ燃料を製造する試験プラントをハワイに建設する計画を発表している([発表リリース])。

食料品であるとうもろこしではなく、食用で無い(そして繁殖力の強い)ホンダワラなどの海藻をバイオエタノールの原材料に使うことで、コスト高や食料の高騰に拍車をかけないようにする、そして何より「食べ物を燃料に使うのは倫理的にどうなのか」という疑問を解消する手助けになることだろう。

また「とうもろこしも海藻も、何のエネルギーも使わずに成長するわけではない。量産するにはそれなりに肥料などを使う。結局は肥料やエネルギーのたらいまわし・浪費につながるのでは」という意見もあるが、こちらも対象となる海藻が「二酸化炭素と水から炭水化物を合成する」光合成をメインとして成長するのであれば、とうもろこしよりも新たなエネルギーを消費せずに済む計算となる。

国土面積が狭い一方、四方を海に囲まれた日本としては、陸上よりも海上・海中の恵みを利用した資源開発の方が利にかなっている。レアメタルやメタンハイドレート、東シナ海のガス田などともあわせ、もっと海の資源に目を向け、研究を推し進めてほしいものである。

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