信用評価損率が算出来で30%超・「投げ売り」増加中

2008年01月23日 06:30

株式イメージ【松井証券(8628)】が毎営業日に発表している信用取組によると、昨今の株式相場の急落を受け、信用取引で株式を購入している「信用買い方」の信用評価損益率は1月22日でマイナス30.410%に達し、連日で算出をはじめた2002年7月以降最悪の数字を更新した。これまでは1月16日分のマイナス29.122%だった(【メルマガ発行スタンド(まぐまぐ)】)。

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松井証券では2002年7月17日約定分から、信用取引に関する残高や評価損益率などを当日公開している。今データは松井証券に口座を開き専用ツールで閲覧するか、誰でも無料で購読できるメールマガジン「松井証券マーケットプレゼンス」で確認できる(【サービス開始リリース、PDF】)。対象データは松井証券の顧客に関するもののみだが、2002年の段階で信用取引順位は東証正会員123社中、株数ベースで2位、金額ベースで8位と大きな割合を占めており、各種信用取引に関する同社発表データは、相場全体の様相を確認するのには役立つ指標となる。

「信用評価損益率」とは、個人投資家などが信用取引を使って株式を購入した場合における、その株式の含み損益を表す。要は「借金をして買った株の評価損益」。マイナスなら含み損、プラスなら含み益という具合。信用取引では一般に半年間で売り方も買い方も取引を精算する必要があるため、損切りラインの設定も現物取引と比べるとシビアな場合が多く、通常はマイナス10%を超えると「損切り」、つまり損失確定売りが増えるといわれている。

昨年までは2007年8月17日(俗にいう「サブプライムローン・ショック」)のマイナス23.1%が最悪の数字だった。ところが1月16日分指標でこの値を更新しマイナス29.122%をつけ、市場の現状を如実に表す指標のひとつとして話題になった。

昨日から今日にかけて東京株式市場は他の世界各国市場と共に急落。これにより信用買い方はさらに厳しい状況に置かれている。1月22日のデータは配信されたメールマガジンによれば

信用残(億円)/評価損益率(%)

売り残……127.24/6.634
買い残……2,310.69/-30.410

※倍率 18.160倍


となり、初めてマイナス30%の大台を突破した。簡単にまとめると「平均で信用売り方は6.634%の含み利益、信用買い方は-30.410%の含み損を抱えている」ということになる。あくまでもこれは松井証券の顧客のみの統計データだが、恐らくは市場全体もさほど変わりはないだろう。

・株価下落
  ↓
・担保減……
(1)更なる担保減を回避→売却
(2)追証払えず→証券会社が強制売
  ↓(←付け入る空売層)
・さらなる株価下落
  ↓
・担保減……
(以下略)

一般に信用取引においては、担保(現金や保有株式の評価額)の3倍までのやり取りが出来る。逆に、委託保証金率が約3割(証券会社によって異なる。松井証券の場合は25%)を切ると「追証(追加で入金し担保を積み増す)」必要が生じ、それが出来なければ持ち株を強制的に売却させられてしまう。

株式市場が低迷すると担保としている株式の評価額が下がり、利用できる信用保証額上限が減ってしまう。従って市場下落は信用取引による買い方にしてみれば、「含み損の拡大」だけでなく「信用保証額上限の下落、追証のリスク増大」にもつながることになる。

先日からの急落における売り注文の中には、通常の現物売りや投機筋の空売りの他に、どうみても「追証(追加保証金)を払えずに証券会社に売らされたな」と思えるような売りや、これ以上の下落による担保減を避けるため、泣く泣く損切り覚悟で投売りしたと思われるものが多数見受けられた。これらの「投売り」がさらに相場の下落、そしてさらなる投売りを誘うわけで、今はスパイラル状態にあると言ってもよい。

「3割」という大台を超えた評価損を抱えている信用買い組の投資家達が、今後どのような行動をとるのかが注目されるところである。逆にいえばこれらがポジションを整理し(あるいはさせられ)信用売買の取り組みが改善されるまで、投売りと相場下落の連鎖は続くのかもしれない。


■関連記事:
【信用評価損率が算出来で計測史上最悪の値に・今後急速に「投売り」増加か】

(最終更新:2013/08/16)

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