相場傾向転換のきざし? バフェット氏が次々に「買い出動」

2007年12月27日 12:00

株式イメージ世界最大規模の投資会社バークシャー・ハサウェイの最高経営責任者にして逆張り・バリュー・長期投資家として名を知られ、世界の資産家ランキングでは毎年のようにマイクロソフトのビル・ゲイツ氏と共に上位にランクインされる、オマハの賢者ことウォーレン・バフェット(Warren Edward Buffett)が、相次いで「買い出動」をしていたことが明らかになった。

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バフェット氏は「手堅い経営基盤を持つ企業が経営基盤に影響を及ぼさない要因で大いに値を下げ、非常にお買い得な株価に下落した時にまとめ買いし、値が正常値に戻るのをひたすら待ち、過熱感が感じられる時に売り抜ける」という、要素でまとめれば「逆張り」「バリュー」「長期」な投資家として知られている。同氏のような投資スタンスの投資家の行動は市場動向を指し示す一つの指針として、対象企業やセクターと共に多くの投資家の注目を集めているのは周知の事実。

実際氏の動向は他の著名投資家と共に、その噂話も含めて多大な影響を与えている。【バフェット氏が住宅金融大手の一部を買収の可能性との報・しかし真相は……】にもあるように一時期は住宅金融会社の大手を買収するのではないかとの噂も出て、その噂が市場が大きく動く騒ぎを引き起こしたほど。また先日から中国に対する投資を縮小する【バフェット氏、ペトロチャイナの全保有株を売却(ロイター)】などの話が報じられている(もっとも後者の場合、売却後も株価は上昇し、バフェット氏自身も「売るのは早過ぎたかも」とコメントしている)。

1:公共ジャンク債を21億ドル分お買い上げ

バフェット氏の「買い出動」はここ数日の間に立て続けに報じられた。まずは『WSJ-バークシャー、旧TXUの高利回り債を購入』などにも報じられているように、公益企業(電力会社)のジャンク債(「チャラ」になる可能性が高い代わりに利回りが高い)を、あわせて21ドル分購入した。利回りは実質で11.2%(11億ドル分)と11.8%(10億ドル分)。

これが報じられると類似のジャンク債が高騰したが、「今回の債券投資が投資不適格債市場への投資を支持することを意味するわけではない」「これは独特。バークシャーはほかのジャンク債は購入していないし、当面その予定もない」と説明。元々投資スタンスの上で公共設備系企業を好み(他の企業で代替できず独占が可能になるから)、たまたま良い条件の債券があったので購入したまでであることを強調している。

2:非上場大型工業グループ会社を45億ドル+αで完全買収

続いて先日報じられたのは、やはり設備系企業の【マーモン・グループ(Marmon Group)】の買収(【発表リリース】)。マーモン社は配管やケーブルなど建設業系の素材を中心にさまざまな工業製品を手がけ、125もの事業部門と2万1500人もの従業員をかかえている。取引先はアメリカ以外にイギリスやヨーロッパ、中国など全世界に及び、2006年の売上はグループ全体で70億ドルにものぼるという巨大企業。この企業の株主、シカゴのプリツカー一族(Pritzker)からバフェット氏は60%をまず45億ドルで取得。そして残り40%はマーモン社の業績に応じて金額を換えつつ5年~6年の時間をかけて段階的に取得する。要は最終的に「マーモン社を完全にバフェット氏の傘下におさめる」ということ。

この買収には色々と逸話があるようで、元の株主のプリツカー家では資産支配権の一族内紛が起きていて資産整理を進めていたという話や、バフェット氏はこの買収話を「聞いてから2週間も経たずに決定した」などが伝えられている。

マーモン社の業務内容、そして収益体質の良さ(2006年の営業利益は7.94億ドル。売上・利益共に年々増加傾向にある)など、そして「買うならその企業そのものを買収する考えで」(今回は実際に買収したわけだが)も、バフェット氏の投資スタンスが忠実に守られていることになる。


現在450億ドル(……といっても(21億+45億)ドルはすでに使われたわけだが)を超える手持ち「現金」があるバフェット氏の投資スタンスからすれば、同氏が「売り」傾向を強めていれば「過熱気味」、「買い」傾向を強めていれば「良い銘柄がお買い得価格の水準にある」(いずれも長期的投資スタンスならば、という前提があるが)と見ることもできる。それだけに、同氏の「買い出動」が相次いだのは注目に値する。

公共ジャンク債の買いつけは、ややバフェット氏の投資傾向とずれているような気がするが、マーモン社の買収は非上場企業とはいえ、氏のスタンスにベストマッチングした案件といえる。

上場企業での買付でないために、「上場企業の株式が氏の投資スタンスにおいて『お買い得にある』と見る」のはまだ早計。あるいは両件とも市場動向とはさほど関係の無い、「たまたまお買い得な案件」だった可能性もある。とはいえ、同氏が「買い出動」をしたのは事実であり、その報自身が市場に与えるプラスの影響は無いとは言えない。

アメリカ市場に限ればサブプライムローン問題や、その後にやってくると噂されているカードローン問題などが解決したとは言いがたく、来年も慎重な投資判断が必要なことに違いはない。しかし一筋の光明が見えてきたような気分にだけはさせられたのも、また事実といえよう。


(最終更新:2013/08/29)

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