【更新】穀物価格急騰でアメリカ農家の収入は過去最高に
2007年12月24日 12:00
[日経新聞]が伝えるところによるとアメリカ農家の2007年における収入が、2004年の記録を更新して過去最高になる見通しとなった。アメリカ農務省では企業における利益に相当する2007年の農家収入が前年比48%プラスの875億ドル(約9兆8900億円)になると予想した。この収益の伸びは「バイオエタノール生産による穀物の価格高騰」「新興国の需要増大」「投機筋の大規模介入」による穀物の価格高が原因。特にバイオエタノールの燃料になるとうもろこしの作付け面積・生産量急増が直接的にも間接的にも大きく貢献した。
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今件について直接アメリカ農務省の資料を見つけ出すことはできなかったが、該当する報告書を翻訳したレポートが【畜産情報ネットワーク】内の[週報「海外駐在員情報」]に見つけることができた。【米国農務省、2007年の農業経営所得を史上最高と予測】が該当する記事で、概要をまとめると次のようになる。
・政府の補助金も含む農業経営所得は875億ドル。2004年の859億ドルを上回り史上最高。主要農畜産物の価格高騰が原因。連邦政府の直接補助金支払額は121億ドル(前年比23.4%マイナス)にまで減少。
・生産額も過去最高。畜産部門も最高額に。オーストラリアの干ばつやヨーロッパの生産低下、ドル安、アジア諸国の所得増でアメリカ産の乳製品輸出が増えているため。
・飼料費などの経費も増加。穀物飼料の他、燃料費も増加。
・2008年度は今年度をさらに上回る結果を予想。
販売商品にあたる穀物の一部を飼料として用いる関係で経費が高くついてしまう面もあるが、それを補ってなお多額の利益が、バイオエタノール政策などによってアメリカの農家にもたらされたことが分かる。
新興国の需要増加は別にしても、穀物を用いたバイオエタノールの生産拡大はアメリカの農業(農家)保護政策が少なからず影響している。バイオエタノールの量産で需要が増え価格がつり上がれば、農家のふところは温かくなり、そのような政策を実施した政府を支持する、というもの。このような考え方から「とうもろこしを原材料にしたバイオエタノール政策は選挙対策に過ぎない」とする意見もあるほど。
さらにとうもろこしなど穀物に対する需要が、これまでの「食料品」「飼料」という観点ですら新興国の需要拡大で増加しているのに、「バイオエタノールの材料」(あるいはとうもろこしを材料として用いるために他の穀物の生産量が減るという懸念)が加わり、ますます増加。そして需要拡大に目をつけ、あるいはサブプライムローン問題で金融商品が下落して投資先を失ったヘッジファンドなどによる投機資金が一挙に穀物などの商品先物に殺到したため、急激に穀物価格は上昇している。これらの要因から穀物の価格が上がり、ますますアメリカ農家のふところは肥えることになる。
行きすぎた進化はかえって環境の変化に弱いというのが生物進化の常である。今後市場動向の変動や政策の変化で穀物価格の傾向が変わり、状況が変化した時、いわば「バブル状態」にあるアメリカ農家はスムースに変化に対応できるだろうか。アリとキリギリスの話ではないが、その変化への備えをしているかどうか、はなはだ不安ではある。
また、これだけ穀物相場が上昇しているのなら、日本の農家ももう少し恩恵を受けてもよさそうな気もするのだが……。
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