サウジが世界最大の政府系ファンド設立か
2007年12月23日 19:00
イギリスの経済誌フィナンシャル・タイムズ(FT)は12月22日、世界最大の産油国であるサウジアラビアが、政府系ファンド(SWF:Sovereign Wealth Funds)の設立を計画していると報じた。この計画が現実のものとなれば、最近欧米金融機関への増資で顔を出しているアラブ首長国連邦(UAE)のアブダビ投資庁の規模9000億ドルを超えたSWFとなる可能性がある(【該当記事】)。FTでは「もしサウジのSWFが設立されれば他のSWFにとって恐ろしいほどのライバルになると共に、金融信用不安で救いを求めている欧米各国の企業にとっては渡りに船の存在となるかもしれない」とコメントしている。
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今回のサウジアラビアのSWF設立の話は、昨今の(サブプライムローン関係で大きな痛手を負った)欧米系金融機関に対する相次ぐSWFによる増資の中で噂として流れているという。例えばシティグループが11月にアブダビ投資庁から75億ドル、12月10日にはUBSがシンガポールの政府系ファンドGICと「某中東の投資家」から130億スイスフラン、12月19日にはモルガン・スタンレーが中国の国有投資会社「中国投資有限責任公司」から50億ドルの増資を引き受けてもらっているが、これらの増資話の中にはいずれもちらほらとサウジの影が見え隠れしていたとのこと。特にUBSの増資に関して現れた「某中東の投資家」は、サウジアラビアの王室一族らしい、と後に報じられている(UBSはノーコメントを貫いている)。
サウジアラビアの公的資金の運用はこれまでにも中央銀行のサウジアラビア通貨庁(SAMA:Saudi Arabian Monetary Agency)が行なってきた。しかしこのSAMAはこれまで周辺湾岸地域のSWFなどが行なう投資活動とは性格が異なり、保守的な投資活動をメインとしてきた。例えばアメリカの国債などのようなリスクが比較的低い金融商品での運用がメインだったという。しかし今回の報道のようにSWFを設立するとなれば、例えばアブダビ投資庁のようにリスクがあるものの利回りも高い、積極的な運用先に資金投入を行う可能性が出てくる。
SAMAの貸借対照表は基本的に公開されているが、石油から得られた利益の相当部分は中央銀行や王族の「金庫」の中に納まる傾向がある。当然、各王族が行う投資活動についても実態はほとんど分かっていない。
正式な発表は一切なされていないので詳細は不明だが、今後サウジアラビアがアブダビ投資庁以上の規模のSWFを設立して積極的な海外への投資をはじめるとなれば、サブプラ問題で頭を抱える欧米金融機関にとっては救世主的な存在になるかもしれない(さらに各王族が「個人的に」投資する傾向も変化が生じてくるだろう)。
また、当然「投資をする」=「発言力を強める」ことに他ならない。結果として世界規模の金融市場における、中東諸国の発言力・パワーバランスもこれまでとは多少色合いが異なるものとなる可能性も秘めている。
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