原油高騰がもたらしたもの・北海道産の石炭が再注目を集める

2007年12月16日 12:00

石炭イメージ需要急増と投機筋の暗躍で原油価格が1バレルあたり3桁ドルに迫り、灯油やガソリン代だけでなく運送コストや包装費用などにも影響を及ぼし、電力など各種サービスや一般商品の価格高騰に拍車をかけているのは、すでに日常生活上実感していることだろう。常日頃いかに原油に頼った生活をしてきたのかと痛いほど再認識するのだが、それと同時に「これまで採算が取れなかった手法が、比較対象の原油が高騰したことで割に合うようになった」ものがいくつか登場している。太陽電池の開発が最たる例だが、【北海道新聞】によると北海道産の石炭もその「恩恵」を受けつつあるのだという。

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使い道は製鉄や電力・99%以上を輸入に頼る現状

石炭といえばかつては主要エネルギーの一つとして国内でも大量に採掘されていた。1961年には年間5541万トンもの採掘が行なわれピークを記録したが、それ以降は石油に主要エネルギーの座を譲り渡したことや、外国産の石炭の方が割安ということで国内産の採掘量は激減。現在では年間消費量1億7708万トン(2005年)のうち99%以上が輸入品(主な輸入元はオーストラリア・インドネシア・中国)で、国内採掘量は125万トンに過ぎない(2005年)(【関連資料:NEDO石炭事業部】)。

日本国内の石炭供給量の変移
日本国内の石炭供給量の変移(【資源エネルギー庁から抜粋】)
石炭の輸入量と輸入元
石炭の輸入量と輸入元(2007年データ、【独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構から抜粋】)

あたりを見回しても石炭ストーブを使っている家などどこにもない、と思われるかもしれない。実は、輸入された石炭は鉄鋼の製鉄時や火力発電の発電時に使われる。「鉄景気」と呼ばれるほどの昨今の鉄鋼需要の急増から鉄鋼関係への石炭需要も増えているが、第二次石油ショック以降石油火力発電の代替資源として注目を集め、ここ数年では鉄鋼業以上に電力業者が多くの石炭を使う傾向にある。いわば電気や鉄製品に姿形を変えて、石炭は日常生活に深く浸透しているといえる。

つまり「エネルギー消費構造が変わっても、石炭の需要は多い。しかし採掘コストの問題上、国内に多くの石炭が埋もれているにも関わらず、海外産のものを用いていた」というのがこれまでの状況。【北海道電力(9509)】ではこれまで地域対策として、海外産より割高ながら北海道産の石炭を年間50万トンほど購入し、火力発電に用いてきた。

原油高がすべてをひっくり返した

しかし原油価格の高騰がすべての状況を変えてしまった。

元記事に詳細が記載されているが、原油価格の上昇で、重油を燃やして得られる熱量と同じだけの熱量を北海道産の石炭で得ようとすると、半分の価格で済む。つまりコスト比では重油の2倍の割安感が北海道産の石炭にはある。輸入される石炭も世界的な資源不足や輸送料の高騰(ここにも原油高が大きな要因)から、3年前の2倍ほどに急騰し、当用買い(スポット:在庫がなくなる毎に購入を行なう、小口買い)なら海外産より北海道産の方が安い現象も起きている。

石炭価格の比較(資源エネルギー庁)。国内原料炭は1991年で生産終了のためそれ以降は価格表記なし。国内一般炭は2003年以降は価格非公開
石炭価格の比較(資源エネルギー庁)。国内原料炭は1991年で生産終了のためそれ以降は価格表記なし。国内一般炭は2003年以降は価格非公開

コスト面で割安となった石炭に、北海道電力では急きょ道内の購入先7社に増産を要請し、当面の間は年間100万トン(これまでの2倍)の購入を決めたという。他にも【Jパワー(9513)】【日本製紙(3893)】なども「割安ならば」という前提があるが、積極的な利用の姿勢を見せている。

ほとんど露天掘り(※)で採掘を続けている北海道内の炭鉱では、上記の電力会社や製鉄、製紙会社以外にも、セメント会社や製糖会社からも「割安になった」石炭への引き合いが相次ぎ、思わぬ活況が続いているという。ただし、急に注文が増えても量産体制をすぐに拡充することは難しく、増産が追いつかないのではとする声もある。


かつては「黒いダイヤ」という呼び名でもてはやされた石炭。未だに燃焼時の二酸化炭素排出量の大きさ(石油742g-CO2/kWhに対し石炭は975とやや大きめ……【北海道電力資料、PDFより】)など、問題点も少なくない。とはいえ原油高という外部的要因でにわかに注目を集めた今、国内に埋もれる「お宝」を放置したままにするのはあまりにももったいない。コスト削減や環境対策などに費用を投じても、お釣りがくるであろう今こそ、開発を推し進める時期なのかもしれない。

※露天掘り……炭鉱を掘らずに地表から渦を巻くように地下めがけて採掘する方法。昔はコストの問題から坑道掘りがほとんどで露天掘りはあまり用いられなかったが、最近では重機の性能向上や坑道の安全性確保の費用などから、多用されるようになった。

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