今年のベストセラー発表・「品格」「ホームレス」「ケータイ」など、時代を映し出すタイトルが上位を占める

2007年12月08日 19:00

書籍イメージ出版物商社大手のトーハンは12月4日、同社データによる2007年の年間ベストセラーを発表した。それによると総合ジャンルでもっとも売れたタイトルは坂東眞理子氏の『女性の品格 装いから生き方まで』だった。また『ホームレス中学生』や『鈍感力』など、時代を象徴するキーワードを含む、あるいはキーワードを生み出したタイトルが上位に多く見受けられる(発表ページ)。

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今回発表されたベストセラーは正確には2006年12月から2007年11月の1年間に集計されたもの。今年12月発売分のものは来年発表分に集計されることになる。早速、総合分野でトップ5と、主要分野でトップ3をピックアップしてみることにする。

■総合
1位……『女性の品格 装いから生き方まで』
2位……『ホームレス中学生』
3位……『鈍感力』
4位……『日本人のしきたり』
5位……『新・人間革命(17)』

■文芸
1位……『恋空 切ナイ恋物語(上)』『同(下)』
2位……『赤い糸(上)』『同(下)』
3位……『君空(‘koizora’another story)』

■ビジネス
1位……『「1日30分」を続けなさい! 人生勝利の勉強法55』
2位……『鏡の法則 人生のどんな問題も解決する魔法のルール』
3位……『できる人の勉強法』

■ゲーム関連書
1位……『ポケットモンスター ダイヤモンド・パール 公式全国大図鑑』
2位……『ポケットモンスター ダイヤモンド・パール 公式ぜんこく図鑑完成ガイド』
3位……『ポケットモンスターダイヤモンド ポケットモンスターパール パーフェクトクリアBook』


総合トップに立ったのは、女性の社会進出が当たり前となった今だからこそ、「女性らしい振る舞いが大切だ」とする、世の女性に「今の振る舞い」を問う一冊。売行きが良い、ということはそれだけ(タイトルのみでも)何となく自分自身のことが気になる女性が多いのだろう。内容そのものはもちろんだが、世間のニーズを的確にとらえた素晴らしい一冊。

第二位には「タイトルのみで驚かされる」という意味では間違いなくナンバーワンの一冊。内容も衝撃的だが、タイトル構成と表紙のデザインによる勝利。感動、というよりは色々と考えさせられる内容といえる。

第三位は前首相の小泉氏も、あるいはその思想の中の一つとしてとらえていたのではないかと思われる「鈍感力」をテーマにしたもの。複雑で情報過多な現在社会において、ある意味「鈍感」とも受け取れる能力(スルーする力、考えを斜めにスライドする思考方法)がないと、パンクしてしまう。杓子定規に生きていくだけでは息苦しい世の中、欠かせない一冊かもしれない。

その他各種ジャンルを見てみると、それぞれ昨今の雑誌事情がおぼろげながらつかみ取れる。(ここでは掲載しないが)新書では幅をきかせているライトノベルより更にライトともいえる、携帯電話向け小説を書籍化したいわば「スーパーライトノベル」ことケータイノベルが文芸作品の上位を占めている。基本的に売上数で順位が決まることを考えると、(文章力がどうとかそもそも「文芸」とは何ぞやという議論が巻き上がってはいるが)売れていることには違いない。

ビジネス分野ではいつもの通り「三分間クッキング」のような「誰でも簡単にすぐさまできる魔法のような自己改革法」を求めるタイトルが上位についている。書かれてあることはどれも間違いのない、立派なことばかりではあるのだが、それを実践できるかどうかは読んだ人一人一人の心意気の問題。

ゲーム関連書では元ページで発表されているトップテンのほとんどを「ポケモン」関連書が占めた。他のタイトルそのものが売れていないのか、攻略本のニーズが減っているのかはともかく、これは少々特異な状況であるといわざるを得ない。ゲームメーカーによっては「攻略本の版権料分まで含めて採算を計算している」ところもあり、ソフトだけでなく攻略本も売れないとなると、ゲームのコスト計算がますます難しいものとなってしまう。あまりにもありがちな言い回しで出来れば使いたくないのだが、ゲーム(とその攻略本)の世界でも「二極化」がさらに進んでいるということなのだろうか。

インターネット通販の普及で書籍の販売スタイルが変わり、携帯電話の普及で「文学」「文芸」の概念が多様化しようとしている昨今。紙媒体の書籍におけるランキングも、本、いや「文字列の集合体から成る文章」を取り巻く世界も、過去の流れかたとは比べ物にならないくらいのスピードで変化しているのかもしれない。

……ちなみに、これらのランクキングはあくまでも「セールス」上のもの。実際に手にとって読んだ人の評価ランキングとはまた別なので念のため。読んだ上での感想を知りたい人は、書籍関係のサイトかアマゾンジャパン、楽天書店などをご参照のこと。

(最終更新:2013/09/08)

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