【更新】金融商品取引法施行後「説明が長すぎる」過半数を超える

2007年12月04日 19:30

日経新聞の調査によると、9月末に開始から二か月が経った金融商品取引法施行によって厳密化された、金融機関による金融商品のリスクに関する説明を「説明の長さ」の観点からどう思うかというアンケートの結果、「長すぎる」と感じている人が過半数の52%にのぼることが明らかになった。説明が以前より長くなったと感じられることに対して(契約の性質上正しいかどうかは別として)手続きに煩雑さを感じている人が多いことがうかがえる([発表ページ])。

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今調査は日経新聞読者を対象に11月25日から28日のあいだ、インターネット経由で行なわれたもの。金融商品取引法施行以降にネット取引を含めて金融機関でリスクのある金融商品を購入したか、あるいは購入の相談をした1323人に問い合わせをして、692人から有効回答を得た。年齢・性別属性などは非公開。

金融商品取引法の意図は「購入者が情報不足による不利益をこうむらないように」

金融商品取引法の施行により、金融商品の販売に際してはこれまで以上に懇切丁寧な説明が販売側に求められるようになった。法施行以前は商品の内容もよく理解できずに買い手が購入してしまい、あるいは逆に販売元が損失の可能性など十分な説明・相手への理解の確認もせずに販売を行った後に、買い手が大きな損失を受け、販売元に「こうなるとは聞いていなかった」とクレームをつけるパターンが後を絶たず、購入時の「販売側の説明不足」と「買い手側の理解不足」が問題視されていた。

改正施行後の金融商品取引法では、「買い手が商品内容を十分に理解していなければ販売側は売ってはいけない」「買い手が(説明不足などによる)不当な損失を受けてはいけない」を原則としている。細かいルールに従い販売元は手持ちの金融商品に対して詳細な説明を行い、相手の十分な理解を確認した上で購入を勧め、同意を得て初めて販売が出来ることになる。

「説明が長すぎる」過半数に達する

今回行なわれた調査は「金融機関の金融商品取引法への対応の評価」という問いだが、言い換えれば「金融商品の説明が詳細に及ぶようになったことについてどう思うか」というもの。その問いに対する回答は、過半数が「説明が長すぎる」というものだった。

■「金融機関の金融商品取引法への対応の評価」
(「金融商品の説明が詳細に及ぶようになったことについてどう思うか」)

・説明が細かく説明時間が長すぎる……52%
・説明が適切で分かりやすい……30%
・説明がなお不足で分かりにくい……18%


長短は別として「分かりにくい」と答えた人が7割もいるのは、金融商品そのものが元々分かりにくいのが多いこともあり、ある意味仕方ないのかもしれない。

「説明が足りない」が
18%しかいないのは
ある意味金融商品取引法の
思惑通りかもしれない

「長すぎる」という意見の中には「説明が形式的」「待ち時間が長い」「夫婦で別々の投信を買おうと思ったら同じ説明を二度聞かされた。購入までに三時間半かかってしまった」など、法律上「仕方なく長くせざるを得ない」部分に対し、販売側も買い手側も戸惑っているようすがうかがえる。

その他に「オススメの商品を聞いても答えてくれなくなった」「リスクなどへの説明ばかりで自信をもった商品提供がされなくなった」など、形式ばった説明ばかりで枠組みから外れない販売側の対応に不満の声をもらす買い手側の意見も多い。

「説明が長すぎて面倒だから」「聞いているうちにイヤになって」買い手が購入をあきらめたら販売側の大きな機会損失となるが、それでも「説明不足で思いもよらない商品をつかまされてしまう」という購入側の損失可能性は避けられる。金融商品取引法の主旨そのものが「説明・理解不足による購入側の意図せざる損失を避ける」のが最大目的なのだから、「説明不足」が18%しかいなかったのは、ある意味思惑通りに法の効力が発揮されていると解釈しても良いだろう。

「長すぎる」の原因は二点「不慣れ」と「ルールのあいまいさ」

とはいえ販売側も購入側も過半数が「長すぎる」と不満をもらし、フレキシブルな対応がほとんどなされなくなったのは、やはり問題といわざるを得ない。郵便事業会社をはじめ各金融機関の投資信託販売成績も、金融商品取引法施行以来急速に落ち込みを見せているという。これも「説明不足よりは説明過多」とばかりにみっちりと説明を行なうため、購入までのプロセスに時間がかかって対顧客回転数が落ちてしまうことや、購入意欲を無くしてしまう買い手側が増えているのが原因。

問題としては「新法施行からまだ日が浅く、販売側が適切な手法に慣れていない」というのが一点。過不足無い説明の量がどのくらいなのかを見極められるまでは「足りないよりは多く」(足りない場合は法令違反になるが、多い場合は単に営業成績が悪化するだけに留まる)ということから、今しばらくはこのような状態が続くのだろう(あるいはこの長さが「そもそもあるべき姿」で、買い手が慣れていない、という場合もある)。

もう一つの問題点は、肝心の法施行を行い監督している金融庁側が、法律そのものの解釈について「自分たち現場で考えなさい」とばかりに明確なガイドラインを示していないことにある。大まかな枠組みは法律で施行したが、具体的に法に触れるかどうかは事実上丸投げしていると言われても仕方の無い内容になっている。

基本は一つ
「お客様のために」

事実パブリックコメント(実際に監督庁に質問を投げかけ、その質問の回答を公開して皆に知らしめるというもの)では「独自の判断で」「その時に応じて」という主旨の言葉ばかりが並んでいる。要は「その項目・範囲・パターンについては自分で考えて判断しなさい(その結果、金融庁側で「法に触れている」と判断して取り締まりを受けても文句はいわないように)」ということ。

しかし法に基づいて商売をしている以上、よもやトライアンドエラーで法律違反を繰り返すわけにもいかない。これでは施行された直後においては、おっかなびっくりどころか萎縮してしまい、決まっていること以外は何もできなくなっても仕方が無い。

今後「金融商品取引法」をベースに、金融庁をはじめとした行政側も、金融商品を販売する金融機関も、それぞれ一人一人に対して本当の・ベストの意味で「購入者のことを考えて」「利用者のためになるような」サービスの提供とルールの遵守・指導が必要になるのだろう。そして購入者側も単に説明に流されるだけでなく、「自分のお金」という意識を持ち、積極的に学ぼうという姿勢が求められるに違いない。

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