運動でナチュラルハイになれば「うつ」も吹き飛ぶ!?

2007年12月04日 08:00

運動イメージ【BBC NEWS】が伝えるところによると、運動などをしていることで起きる「ナチュラル・ハイ」状態が、人間の「うつ病」を解消できるかもしれないとして研究が進められているという。すでにイギリスでは「うつ病」状態にある人たちを救うため、運動を定期的に行なうことを勧めているボランティア団体もあるとのこと。

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記事によるとこれはアメリカのエール大学が「the journal Nature Medicine」に寄稿した論文で明らかにしたもの。「運動」と「気分が高揚し、うつ状態から改善する」に深い関係があることは以前から知られていたが、その理由はこれまで不明とされていた。

研究チームでは、抗うつ剤が影響を及ぼすとされる脳の海馬領域に焦点をあてた研究を行なった。さまざまな運動をしている間、この脳領域のどの遺伝子が活性化するかを調べ、それをVGF遺伝子と呼んだ。このVGF遺伝子は、神経細胞が増殖される時に用いられる化学物質と深い関係があることも分かった。

これらのことから、「うつ状態」を解消する際には単に細胞自身の化学物質における変化だけではなく、実際に脳細胞そのものの構造と細胞間のつながりの変化が求められられていることが分かったという。

運動をすると活性化する
脳内のVGF遺伝子が
抗うつ剤と同じような
働きをするらしい

「VGF遺伝子が用いられることで起きうる脳細胞の構造変化や細胞間のつながりの変化が、うつ状態の解消に役立つらしい。ならば、そのVGF遺伝子を化学的に合成して投入すれば、状態の改善につながるのではないか。もし改善が見られれば、運動=VFG遺伝子の活性化=うつ状態の改善」とチームは考えた。つまり、運動によって生じる脳内の「気分の高揚、うつ状態からの改善」に、化学的にスライドさせてしまおうというものだ。ラットに対する実験では、本物の抗うつ剤と同じような効用を示したという。

Policy at Mindの長であるMarcus Roberts氏は「最近心理治療においても、精神的な病に対する治療法として、運動を勧めることが多くなっています」と述べている。「心に傷を負い、病んでいる人たちに運動を勧めるという治療法は昔から行なわれてきました。そして多くの人が運動で状況が改善されたと伝えています」「野外での運動は落ち込んでいる心境を解消させると共に、達成感を呼び起こし、自尊心さえ高めさせてくれます。これが臨床心理学的にメンタルヘルスの上で役に立つことが(今回の実験で)改めて証明されたといえるでしょう」。

ストレスや痛みを感じたり、マラソンなどの激しい運動をしていると、脳内にエンドルフィンという物質が放出され、「苦しみで正常な状態を保てない」事態から逃れようという鎮痛薬的な自己防衛反応が働く。「ランナーズ・ハイ」などで知られるような「別世界に行ってしまったような」状態だ。針治療は脳に直結する神経を刺激させてエンドルフィンを放出させるとも言われているが、化学的に生成させるようなものはまだ開発されていない(モルヒネなどは似たような効用を示すが、まったくの別物)。元記事にはエンドルフィンに関する言及は一言もないが、恐らくはこれも大きく関係しているのだろう。

要は「運動をすることで生じる高揚感をもたらす脳内物質が、うつ状態を解消する役割を果たしている可能性が高い」ということ。だから「うつ状態に悩んでいる人は、まず外に出て長期的に運動をする習慣をつけましょう」と結論付けている。

人体の元々の仕組みとして存在する、運動することで脳内で生成される物質が状況の改善に役立つのなら、わざわざ外部から(副作用などにおびえながら)薬を服用する必要は無くなる。実際にはそう簡単に物事はうまく運ばないのだろうが(何しろ病状は千差万別だ)、やってみるだけの価値はあるだろう。

もっとも「うつ状態」の深度によっては、外に出ること自体が困難、という場合もあるので万能策ではないのだが……。

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