「『お金持ち優遇』という言葉が正しいか確認してほしい」証券税制で東証社長コメント
2007年12月02日 12:00
東京証券取引所が11月30日に発表した、11月27日に行なわれた東証社長斉藤惇氏による記者会見議事録によると、昨今論議が活発化している証券税制の改正について斉藤氏は「お金持ち優遇という言葉使われているが、使う人がしっかりと確認する必要がある」と語り、現行の証券税制優遇措置の撤廃を促進している政派に対し、けん制するコメントを行なっていたことが明らかになった(【発表リリース、PDF】)。
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今議事録は東証で定期的に行なわれている記者会見のもので、今回発表されたのは11月27日の分。主に【東証、正式に「売買単位を最終的に100株に集約」を発表】で報じた、東証など国内証券取引所における売買単位を最終的に100株に統一する方策に関するコメントが行なわれている。
問題の証券税制に関する言及はリリース中後半部分。詳しくは原文に目を通してほしいが、概略は次の通りとなる。
・データを検証すると株式を運用するのは年俸500~700万円の中堅サラリーマン※
・「金利が低いので企業は助かっているが投資家や預貯金者は参っており、リスクがあっても投信や株式でまかなわねばならない」「配当は二重、三重に税金を取られている」このような状況で、現状の証券税制が「一部を優遇する税制」「金持ち優遇」なのか、再確認してほしい。
・株式やGDPなどの指数をみても、日本はここ20年で世界でもっとも成長の無い、(相対的に)豊かさに欠ける国になっている。これらを考慮すると「優遇という言葉すらどうかと思」わざるを得ない。
(株式時価総額で見てもバブル期の600兆円以上から今やそこから約100兆円くらい減った状態。しかしアメリカでは1400兆円前後増えている。つまりそれだけ個人の財布が潤い、企業価値も上がり、国民の可処分所得も増えている、と言及している)
※【貯蓄額 1000万以下過半数 貯蓄ナシは わずか2%】にもあるが、平均年収は563.8万円・中央値は458万円。
株価が(特に今世紀に入ってから)低迷しているのは、「ライブドア事件」に代表されるような、上場企業の相次ぐ不正により投資家が不当に投資資金を吸い上げられてしまい「複利の力」を存分に活かせなかったのも大きな原因の一つ。そしてそれらの不祥事には東証自身にも「管理責任」という大きな責任がある。だから「日本の市場が低迷してるから国が豊かにならない」という東証の主張には「非難できる立場か」とツッコミが入っても仕方ないといえる。
また時価総額がアメリカと比べて云々という部分については「各時系列における」為替レートと合わせて計算しなおす必要があるため一概には言い切れない(【東証の7月発表のリリース】によると、6月時点で東証の時価総額は4.8兆ドル、NYSE Euronextは30.8兆ドル。単純計算で約6倍。NYSE単独でも約15兆ドル強あるので約3倍)。
しかし、言及している人が誰であろうと、株価が堅調に推移すれば時価総額も上がり、個人のふところに入るお金も増えて企業価値や国民の可処分所得も上がる、という主張には一理ある。そして「現行証券税制を金持ち優遇などとして廃止を頑なに主張している人たちには、感情論に捕らわれることなく現状を各種データと共に冷静に判断しなおしてほしい」という意見に同意できる人は多かろう。
実際に株式売買を取り扱う取引所の長の発言、意向がどこまで税制論議に影響を与えるのかは不明だが、関係各所は十分に吟味した上で再考してほしい。
なお斉藤社長は同席で株式のイブニング・セッション(夜間取引)についても言及している。その中で「絶対にやらないというわけではない」としたものの「コストもかかるし注文もスカスカ。経営者の立場からすると現段階ですぐに現物の夜間取引をするつものはない。将来先物だけでなく本当に現物株式でニーズが出てきた時には考えるかもしれないが、今はまだ早い」と述べ、事実上棚上げ状態であることを明らかにした。SBI連合によるPTSでの夜間取引が大盛況となり、システムがパンクするくらいの取引が行われない限り(笑)、東証自らが乗り出して夜間取引を行なうことはなさそうだ。
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