「夫が喫煙」=「妻の肺がんリスク2倍」
2007年12月13日 08:00
厚生労働省研究班は12月12日、夫の喫煙とたばこを吸わない女性の肺がんとの関連を調べた調査結果の論文を発表した。それによると自分自身がたばこを吸わない女性でも、喫煙者を夫に持った場合、夫がたばこを吸わない場合と比較して「肺腺がん」というがんになる可能性が約2倍高い結果が出たことが明らかになった。今調査結果は約2万8000組の夫婦を対象にした統計結果で、これほど大規模な調査による「たばこの受動喫煙とがんの関連」を調べたものはほとんど前例がないことから、注目を集めている(【発表リリースページ】)。
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今調査は調査開始時に40~69歳で、妻がたばこを吸わない2万8000組ほどの夫婦を対象にしたもの。その後13年間ほどの追跡調査を行い、その期間内で109人の女性に肺がんの発生を確認。これを元に夫の喫煙状況でたばこを吸わない女性の肺がんリスクがどのように変化するかを統計学的に調べた。ちなみに受動喫煙とは本人がたばこを吸っていないのに周囲の喫煙者のたばこから発せられる煙により「たばこを吸っている」状態になってしまうこと。直接禁煙(能動喫煙)より煙による各種リスクが高いとされている。
調査の結果、肺がん全体では統計学的に有意な差は見られなかった。つまり夫がたばこを吸っていようがいまいが妻の肺がん発生率には影響ナシということになる。しかし109人の肺がん発生女性のうち約8割を占めた肺腺がんについて、夫が喫煙していないグループに比べると喫煙しているグループの発生率が約2倍高いことが明らかになった。
さらに肺腺がんについて調べると、夫の喫煙本数が多いほど、そして受動喫煙の機会が多いほどリスクが高いことが分かった。具体的には受動喫煙がないグループと比べて一日20本未満で1.7倍、20本以上では2.2倍、肺腺がんにかかる確率が高かった。
夫からの受動喫煙がなければ
肺腺がんにはならなかった
これらのデータを元に検証を進めたところ、今回の調査結果では肺腺がんのうち37%は夫からの受動喫煙がなければ起こらなかった(夫からの受動喫煙で肺腺がんが発症した)と推定できるということが導き出された。
禁煙女性の肺腺がんへの夫の喫煙状態の影響
さらに家庭内以外、例えば職場などでも受動喫煙の機会があると、肺腺がんにかかる確率がさらに上昇することが確認できた。統計学的に明らかな有意というレベルかどうか微妙なところだが、職場のみ・夫からのみと比べ、職場かつ夫から受動喫煙を受けた女性の肺腺がんリスクはさらに高いことが分かる。
喫煙女性の職場・夫からの受動喫煙と肺腺がんリスク比
研究所ではこれらの結果について「受動喫煙では、いったん空気中にひろがったたばこの煙(副流煙)に含まれる有害物質を呼吸とともに鼻から吸いこむことになるので、喫煙者がフィルターを通して口から直接吸う(主流煙)よりも小さい、肺の奥まで届く物質を吸い込むことになるのではないか(だからがんのリスクが高まる)」とコメントした上で「今調査では夫と同じ部屋で過ごしている時間、夫以外の同居者の喫煙、また、家庭以外での受動喫煙についての詳しい状況については聞いていないので、実際どの程度受動喫煙にさらされていたのかは、正確には把握出来ていない。しかし、たばこを吸わない女性の主な受動喫煙の場は、家庭における夫の喫煙であるものと思われる」「現時点で肺がんの予防に最も有効なのは喫煙をしないことだが、他人のたばこの煙を吸う機会もできるだけ避けるのが望ましい」と説明している。
一方今件を報道した一部報道機関に対して【JT(2914)】は 、今調査結果は肺腺がんに限ったデータであり、すべてのがんには当てはまらない。今件で受動喫煙とがんの発生の関連性が統制的に実証されたとはいえない」とコメントしているという。
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(最終更新:2013/08/18)
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