【更新】「20%だが配当・譲渡益損益通算」「少額配当は10%継続」など・財務省が新証券税制案提示
2007年12月01日 12:00
日経新聞は11月30日、財務省が自民党税制調査会会合で提示した金融一体課税案を明らかにした。2008年度末で終了する予定の証券税制優遇措置に代わる証券税制のたたき台ともなる案で、注目を集めている。骨子としては「税率20%に変更するが損益通算可能とする」「少額配当は10%継続」などが挙げられる。
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「証券税制優遇措置」とは株価低迷を是正するために2003年に導入されたもので、従来20%である株式の譲渡益・配当益税率が10%に半減されているというもの。現状では譲渡益は2008年末、配当は2008年度末に廃止が決定している。現在アメリカのサブプライムローンなどに端を発する金融信用不安で株価が不安定な状況にあるため、市場に影響を与える可能性を考慮し、再延長・恒久化を求める声が高まっている。
今回提示された新証券税制の財務省案概要は次の通り。2008年(配当は「度」)末に終了する現行証券税制に代わる税制のため、2009年(配当は「度」)からスタートすることを前提としている。
・税率は20%に引き上げ。2009年から譲渡損益と配当の(損)益を通算可能とする(事前申告が必要。2010年からは特定口座での通算が可能)
・年間配当所得が一定額以内(10万円前後を想定)ならば「少額配当」として10%適用を受けることができる。ただしこの場合は譲渡損益との損益通算は不可能。
・2008年中までに取得した株式の譲渡損益は10%を引き続き適用する(2年程度の適用を想定)
例えば2010年の1年間で損切りなどをして10万円の損をして、一方で配当を5万円受け取っていた場合、損益通算を選択していれば「-10万円+5万円=-5万円(<0)」となり、収益を上げていないことになるので、この年の譲渡・配当損益に関する税金はゼロとなる。要は売買で損をした場合、配当にかかる税金を安くすることができるという計算。
この案に対し11月30日に開催された自民党の税制調査会では「たたき台とはするが実現の方向性はわからない」とし、さらに政府や与党内で調整が必要との意見が出ている([参考:日経新聞])。一方で同日渡辺喜美金融担当相は証券税制優遇措置について「昨今のジェットコースターのような市場の状況を見ると、軽減税率を維持する方向が正しい」と述べ、今までどおり現行税制の延長を強く主張している。
また、【「廃止は当然、むしろ税率をもっと上げるべきだ」と主張して止まない】野党民主党側では、「配当税率は10%維持・恒久化」「譲渡益は20%に戻す」との案を打ち出している。各調査機関からは「現行証券税制が撤廃されることが確定したら施行前に売り抜ける」「株式投資を敬遠する」「経済へは確実に大きな損失を与えることになる」との予想データが出ている。また「金持ち優遇措置だから廃止すべき」という意見もあるが、実測データから「むしろ中堅層が恩恵を受けている」「国際的に見ても現行ですら税率は高い」などの事実が反証の形で提示されている。
証券税制に関する論議については、駆け込み需要ならぬ駆け込み売却の動きが始まることが予想される2008年後半まで、各派の駆け引きが活発化することだろう。個人投資家諸氏においては、耳をすまして注意深く見守る必要があるに違いない。
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