【更新】最大で1兆6500億円・サブプラ問題解消基金に日本のメガバンへ協力要請
2007年12月13日 08:00
[読売新聞]などが伝えるところによると、サブプライムローンの焦げ付き問題の対策として、アメリカの主要金融機関などが計画している「機関投資家救済基金(SuperSIV)」について、【三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)】【みずほフィナンシャルグループ(8411)】【三井住友フィナンシャルグループ(8316)】の日本国内の3メガバンクが(シティグループなどから)資金協力を要請されていることが12月12日までに明らかになった。同記事では「各行50億ドル(5500億円)規模の可能性もある」と報じている。それぞれの銀行の現地法人などを通じて意向が伝えられたとの事。
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●買い手の無い金融商品をまとめ買いする基金への融資要請
先に【UBSの損失発表で見えたもの~サブプライムローン損失の底知れぬ奥深さ】でも説明したように、サブプラムローンを(小刻み、どれがどのくらい含まれているのか半ば分からない形で)含んでいる証券化商品市場では、リスクの大きさや換金性・商品そのものの価値の問題などからほとんど買い手が現れない状態。これが関連金融商品の値(評価額)を下げ、市場を混乱させる要因となっている。今回設立する機関投資家救済資金(SuperSIV)は、これら価格が下落するがままに陥っている証券化商品の買取を行い、同市場の正常化を図ろうとするもの(表現は悪いが「何が入っているのか分からずに人気が出ず、売れ残って買い手がつかない福袋をまとめ買いする基金」というところか)。
いずれの銀行からも正式な発表は無いので詳細は不明だが、元記事によると3メガバンクに要請された内容は、証券の買い取りの補助ではなく「融資」などの形での協力。3行では必要額などが固まり次第具体的な検討に入るようだが、サブプライムローン問題で受けた損失はアメリカの金融機関が受けたそれと比べると少ないため、要請に応じるかどうか、応じたとしてもどれだけの額について応じるかは不明とのこと。
●当事国の金融機関が次々と抜け、目減りする基金
元記事ではこの基金について「最大1000億ドル(11兆円)」が出資されると伝えているが、これは先月23日の時点での話(【ウォールストリートジャーナル】)。しかもこの時点ですでに1000億ドルではなく、「750億ドルから1000億ドル」という範囲だった。しかしこの後いくつかの金融機関が不参加を表明し、先週にはその見通しが「500億ドル」に下方修正されている(【同上】)。
そして先日にはその規模がついて「300億ドル」になるようだとの最新情報が報じられた(【ロイター】)。しかもその額でさえ「運がよければ」というコメント付きのレベル。さらに先日新しくCEOに就任したシティグループのビクラム・バンディット氏は徹底的なコストカットを宣言しており、この基金への協力姿勢を変える可能もささやかれている。これが噂どおりなら、さらに基金の総額は下方修正されるだろう。
つまり、現時点ですでにアメリカの金融機関が出資する総額の半分に当たる額の出資を、日本の金融機関に対して要請していることになる。
●要請への直接参加の必要はありや無しや
影響が全世界に広がっているとはいえ、元々はアメリカ国内の住宅ローンの証券化・金融商品の焦げ付きを、「当事国自身の関連金融機関ですらしり込みしているのに」他国の金融機関が融資の形で協力する必要があるのかどうか。疑問視する意見も多い。同様のアプローチはヨーロッパに対しても行なわれたようだが、関心は薄い。[産経新聞]が伝えるところでは、基金への直接の融資・出資を見送り、融資枠の設定や信用補完などで協力する案が有力になっているという。
経済が国際化している、という前提があればこそ協力要請の意義もあるが、まずは自国内の金融機関が全面的に協力することが必要になるだろう。さもなくば「アメリカは半ば自国内の失態による損失を自国で処理しようとせず、他国の財布を当て込んでいる」と見られても否定できないことになる。
かつてあるアメリカ有力紙の経済コラムにおいて、サブプライムローン問題が語られた際「サブプラサブプラ耳が痛くなるが、自分たちはサブプライム層ではないから関係無い」と主張する内容のものがあった。また、実はサブプライムローンそのもの以外の問題が色々と生じているのに、「サブプライムローン問題」の印象が大きすぎて他の問題が見えなくなっているという指摘もある。
基金について日本やヨーロッパに要請をする前に、まずは当事国のアメリカ自身に、今一度自国経済を振り返ってもらう必要があるのだろう。
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