10月の新設住宅戸数、前年同月比35.0%減・底打ち感あり?
2007年12月01日 12:00
国土交通省は11月30日、2007年10月における新設住宅戸数のデータを発表した。それによると10月の新設住宅戸数は前年の同月比で35.0%減の7万6920戸に留まり、4か月連続して減少したことが明らかになった。ただし先月比では6月以来はじめての増加となり、底打ち感が見受けられる。下落傾向が緩和されたように見えることについて国土交通省では「現場の混乱については収まってきていると見え、回復の方向に向かっていくことを期待している」と記者会見上で説明している(【発表リリース、PDF】)。
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具体的な内訳は持家が8.0%、貸家は40.2%、分譲住宅は50.2%の減少。とりわけ分譲住宅のうちマンションは71.1%と先月同様非常に大きな減少率を見せた。
改正建築基準法の施行は、くだんの「姉歯建設設計事務所による耐震強度偽装事件」をきっかけに全国で多数発覚した耐震偽装の再発を防ぐためのもの。住宅を着工するのに必要な建築確認の審査を厳しくして審査期間も延長。さらに検査機関以外に専門家も確認するなど、複数のプロセスを経るようにした。
事件を教訓として安全な住宅を市民に提供するという意図に間違いはなく、業界そのものの改善や住宅を供給される市民にとってプラスとなることは間違いない。しかし行政側の準備不足(特に「大臣認定プログラム」や審査担当者絶対数の不足)が目立ち今回の混乱、そして結果としての新設住宅戸数の減少をもたらしているのは否定できない。そして現在においても新ルールに基づいた「大臣認定プログラム」が販売されていないなど、事態の収拾は済んでいない。
新設住宅戸数の変遷(2007年10月分まで)
グラフや各種データを見る限り、激減した8月分からほぼ横ばいに推移していたデータも10月分から再び上昇をはじめており、先月発表分の9月で推定された「底打感」が裏づけられた形となった。誤差の範囲とも解釈できることや、「認定ソフト」の問題もあるためためもうしばらく状況の観察が必要だが、最悪の時期は脱したと見て良いのかもしれない。
また、着工床面積概要も同様の下落を示しているが、先月同様に住居用よりは非住居用の減少率が高い。先月とりわけ低かった工場の減少率は前年同月比5.6%のマイナスに留まっているが、店舗が47.7%、倉庫が67.4%のマイナスと、下落率が突出しているのが気になる。
「改正建築基準法」の施行
→行政の不手際などで
新築戸数が激減
→ようやく底打ちか?
国土交通省では同日、住宅着工に一か月ほど先行するといわれている建築確認件数も発表している(【発表リリース】)。これによると全体では交付数において5月が前年同月比で6.5%マイナスだったのに対し6月は9.7%、7月に入ると大きく下がり39.4%、8月には24.5%そして9月には27.5%それぞれマイナスを記録しているが、10月には11.1%のマイナスと若干回復の兆しを見せている。このデータを見ても、「底打ち感」の予兆を感じることはできる。
国土交通省から今回発表されたデータは、先月同様改正建築基準法施行の影響の大きさ、そしてその影響による住宅不況の底打ち感を推定できるものとして注目されている。【改正建築基準法で影響を受ける周辺業界たち】でも触れたように、建設業そのものだけでなく周辺業界への影響も深刻化の一途をたどっている。底打ち感が本物であれば、これら周辺業界の状況もじきに改善の方向に進むものと思われる。
今回の改正建築基準法施行は特に行政側の不手際の多さから、「日本版サブプライムローン問題になるのでは」とまで懸念されている。同じようなミスを繰り返さないために行政側への問題提議も必要だが、まずは一刻も早い状況そのものの改善を望みたいところだ。
(最終更新:2013/08/18)
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