三大肥満大国はアメリカ・メキシコ・イギリス
2007年11月21日 06:30
経済協力開発機構(OECD)は11月13日、加盟している国それぞれの医療実態を調べた【Health at a Glance 2007(図表で見る医療・2007年版)】を公開した。それによると日本は青年人口に対して肥満の度合を示す指数であるBMI値が30を超える「肥満体」の人の割合がもっとも少ないことが明らかになった。また、逆にもっとも多い国は順にアメリカ・メキシコ・イギリスであることも判明した。ある程度各国のイメージに合った結果といえよう【関連ページ(Overweight and obesity)】。
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OECDとは冷戦時代主に西側諸国によって構成された、経済活性化のための組織。冷戦終結後には東側諸国や新興工業国も加わり、現在では先進諸国を中心に35か国が加盟している(【参照:外務省内OECD説明ファイル、PDF】)。
今回発表された「図表で見る医療・2007年版」ではさまざまな観点から加盟諸国の医療・健康における実態が図表で明らかにされている。今回は太りすぎと肥満について焦点をあててみることにする。
BMIはBody Mass Indexの略称で、日本語では体重指数。計算式は簡単に「体重÷身長÷身長」。日本肥満学会ではBMIが22で平均的体格・体重、25以上を太り気味、18以下をやせ気味としている。ただこの値では内蔵肥満(体重や身長など体格面では現れにくい肥満)は反映されにくいため、あくまでも「参考指標」の一つとして定義されている。
さてOECDが別名「金持ちクラブ」と揶揄されることがあるように、OECD加盟国では大人だけでなく子どもでも太りすぎ・肥満率が上昇していることが懸念されている。肥満はそれ自身不健康なだけでなく、高コレステロール症、糖尿病、心臓疾患、ぜん息、関節炎、さらにはがんなどにも影響を及ぼしうる。アメリカ合衆国では特に肥満問題は深刻で、10人に3人が肥満体であり、肥満関連の医療費用が、喫煙や飲酒を上回っているという研究結果が出ている。
次はBMI値が30以上という「肥満」状態な人の割合を示したグラフ。
BMI値30以上の成人人口比率
上はアメリカの30%超から下は日本の3.0%まで、実に10倍以上の差が出ている。例えるのならアメリカ人は3人集めれば一人が肥満だが、日本人は33人集めてようやく一人肥満な人がいることになる。1クラス33人なら、日本の教室では肥満が一人、アメリカでは10人である。
肥満は現代病・ぜいたく病とも呼ばれるが、OECD加盟国のほとんどで年代を経るにつれ肥満の割合は増加している。下記は元グラフを横にしたもので多少見難いかもしれないが、各国毎の大体の同じ年数区切りにおける、肥満人口の増加傾向。一国内でグラフが下に行くほど年代が新しい。大体10年くらいでカウントしていると思えば良い。国によってはデータ不足で2本分しかデータがない場合もある。
肥満人口の年数経過における増減
最新のデータしかなく、このグラフに掲載されていない国もある(例えば最新データで肥満率第二位のメキシコは無い)。イギリスはこの25年で3倍以上、アメリカは2倍以上肥満率が増加していることが分かる。【イギリス、「ダイエット大臣」の設置など子どもへの肥満対策強化】【イギリスの「給食改革」で思わぬ波紋・親が勝手に油モノを子どもに買い与えることも】にもあるが、イギリスが肥満対策に躍起なのも理解できよう。
また、唯一スロバキアでは減少傾向にある。この原因は不明。レポートでも一切言及されていない。
肥満率著しいアメリカでは、肥満に関連する健康管理コストが1990年代後半ですら全体の5~7%を占めているといわれている(他国平均は2~3.5%)。さらにアメリカの場合、通常体重の人と肥満体との人の間では、健康管理費用で36%、薬物療法費用で77%もの差がある(もちろん肥満体の方がコスト高)との結果も出ている。同様の傾向が他国でも見られるようになるだろうが、肥満人口の増加と各医療費の増加には数年のタイムラグがあるとのこと。
肥満人口の男女差についてはほとんどの国で変わりがない。男女とも平等に肥満人口が増えている。ただ、国別の文化の違いからか、アメリカやメキシコ、イギリス、トルコでは女性の方が肥満人口の割合が大きく、逆にギリシアでは男性の方が大きい結果が出ている。特にメキシコの女性、ギリシアの男性の率はそれぞれの異性と比べて10%前後の差が出ているのが興味深い。
男女別肥満人口比率
BMI値はあくまでも肥満かどうかを確認する一指標に過ぎない。今回提示したグラフ・データもその一指標に基づいたものであるため、一概に各国の肥満状況を完璧に表したものとはいいがたい(例えばBMIに反映されにくい内蔵肥満の人が多い国の場合、データ上では「肥満人口が多い」とは出ないものの、実際には肥満体の人がたくさんいる、という可能性もある)。とはいえ、かなりの確証度はあると思ってよいだろう。
レポートではグラフ化していないものの、大人よりも子どもの方が肥満体の割合増加率が高いと警告している。ほとんどのOECD加盟国では子どもの肥満率が2ケタに達し、スペインでは2002年の段階で13・14歳の子どもの1/3、イギリスでは2004年時点で5~17歳の子どもの29%などの割合で肥満認定されているという。
一応今回の記事で「図表で見る医療・2007年版」に関する解説は終了させていただく。他にも興味深い項目が数多く見受けられるのだが、そう遠くないうちに【OECDの日本支局サイト】あたりで完全日本語訳が掲載されることだろう。その際には改めて解説を加えることがあるかもしれない。
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