育児援助 大企業ほど充実し 満足・理解は小規模企業に。そして一番の問題は……
2007年11月20日 12:05
【オールアバウトジャパン(2454)】などは11月19日、育児をしながら働く主婦に関する調査結果を発表した。それによると、育児補助制度は一般的に大企業ほど充実しているものの、周囲の理解を得られていたり、制度そのものに満足している割合は小規模企業ほど大きい傾向にあることが明らかになった。レポートでは在宅勤務の利用率や同僚の理解の割合が小規模企業ほど高いからではないかと分析している(【発表リリース、PDF】)。
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今データは6歳以下の子どもを持つ既婚就業女性1068人からのインターネット調査による回答を元に集計したもので、調査期間は10月25日から26日。就業形態は正社員59.6%、契約・派遣社員13.3%、パート・アルバイト19.3%、育児休暇中7.8%。
●時短はあるが経済的補助や事務所内保育がほしい
現在勤めている会社の育児補助制度について、「現行存在している制度」「利用している制度」「あればいいなと思う制度」それぞれについてたずねたところ、「存在制度」では「短時間勤務」がもっとも多い結果となった。
「現在存在している制度」「利用している制度」「ほしい制度」
「短時間勤務」以外では「1年以上の育児休業制度」「子どもが病気の際の看護休暇(遊休)」などが制度として整備されている結果が出ているが、一方で「利用している制度」では「特に無い」が46.7%と最多を占めているのが気になる。制度そのものが導入されていない人はもちろん、制度があっても使っていない・使いづらい状況があるのだろうか。
小企業:小回りを活かし在宅勤務
全般:制度を利用しきれてない現状
また、今後導入してほしい制度としては、「育児サービス利用料の補助」「事務所内保育所」「在宅勤務」などが上位を占めている。これらはいずれも「子どもを他に預ける」ことに関連する事案であり(「在宅勤務」の場合は、これが選べれば子どもを他に預けなくとも済む)、現状では託児所自身の不足や、費用が高いことが原因と思われる。
企業の規模毎の整備状況では、一般的に大企業ほど各種育児補助制度が整っている場合が多い。ただし、唯一別の傾向を見せているのが「在宅勤務」。なぜか「在宅勤務」に限り、企業の規模が小さいほど導入されている傾向が強い。就業規則や該当しない他の社員とのしがらみ、各種既定規則に縛られず、小回りの効く対応が「在宅勤務」を可能とさせているのだろう(実際「在宅勤務」を就業規則上定義するのは非常に面倒)。
さらに企業規模別「今後導入してほしい制度」では、企業規模の拡大と共に「在宅勤務」「事務所内保育所」を望む声が大きくなる。また、規模に関わらず「育児サービス利用料の補助」のニーズは高い。
企業規模別「今後導入してほしい制度」
「短時間勤務」「1年以上の育児休暇」が企業規模と共にニーズが低くなるのは、すでに導入されているから。また、「フレックス制」が小規模企業で意外に要望が少ないのは、その分「在宅勤務」で時間が確保されているからだと思われる。
●周囲の理解や満足度は意外にも……
各種制度は大規模企業の方が整っていて、唯一小企業が誇れるのは「在宅勤務」。ただしどの企業もあまり制度が有効活用されていないというのが「制度面」から見た育児補助制度の現状。では育児をする就業主婦当人から見た満足度や、周囲からの「仕事と育児の両立」に対する理解の度合といったメンタル面における状況はどうだろうか。
全体的には「満足」「理解されている」が半数を超えているという結果が出ている。
■仕事と育児の両立について周囲から理解は得られているか
・とても理解されている……21.4%
・ある程度理解を得られている……55.0%
・どちらともいえない……15.3%
・あまり周囲の理解は得られていない……6.8%
・周囲の理解は得られていない……1.5%
(肯定派:否定派=76.4:8.3)
■サポート体制に満足しているか
・とても満足している……12.1%
・ある程度満足している……44.4%
・どちらともいえない……21.2%
・あまり満足していない……13.6%
・満足していない……8.8%
(肯定派:否定派=56.5:22.4)
両方とも肯定派が半数を超えているが、「理解は得られている」と周囲の人たちからの「気持ち」を嬉しく思う半面、制度そのものにはやや不満があるようすが見受けられる。
企業規模別に「理解」「満足」について分析すると、両者とも傾向として「大企業ほど少なくなる」傾向にあることが分かる。下記グラフは満足度について
企業規模別補助体制の満足度
1000人以上を超えるような超大企業になると制度の整備状況も完璧に近いものになることから、制度面での満足度も再び増加する結果が出ているが(一番のネックとなる「在宅勤務」ができなくとも他の制度で十分カバーできる)、1000人規模に至るまでは企業の規模と共に満足度が減っていく傾向にある。
周囲からの理解も似たようなもので、1000人以上の超大企業は別として、1000人規模の大企業までは規模が大きくなるほど周囲の理解は得られていない、と当人が感じる割合が増えてくる。中途半端な制度の整備と、社員教育がマイナスに働いているのかもしれない。
●一番の問題はやはり……
「子どもと共にいる時間をどれだけ増やせるか」に、育児補助制度のポイントの1つがあることはこれまでの項目からも明らか。しかし現代では子どもを背負ったままオフィスワークなど不可能に近く、時短や在宅勤務が出来なければ、親族や保育園に預けるしか選択肢が無い。
同調査によれば預け先にかかる費用は一か月一人当たり3~5万円の層がもっとも多く、2万円~5万円にまで層を拡大すると6割強に達する。仕事を続けたい・続けなければならない事情があるにせよ、子どもを預けるのには経済的に大きな負担となっていることが分かる。
預け先にかかる費用(毎月一人あたり)
先に【少子化問題は経済問題!? 子育てで資金面に不安を持つ人が約7割】や【専業主婦の9割が「また働きたい」・最大の理由は「家計を助けたいから」】でも取り上げたが、今調査結果でも育児上の問題として周囲の理解や制度もさることながら、金銭面が大きな影響を持っていることが分かる。整備してほしい制度として、在宅勤務と共に「育児サービス利用料の補助」や(安上がりな)「事務所内保育所」を挙げる声が大きいのも納得がいくというもの。
少子化対策が叫ばれる中、「それでは何をすべきか、何を行なえば対策となるのか」についてさまざまな意見が寄せられ、論議が交わされている。今調査結果から導き出されるであろう対策「周囲の理解」「制度の充実」「金銭的な補助」の3点も、意見の一つに過ぎない。
政府も【内閣府、公式サイト上で少子化対策意見を募集開始】にあるような形で行動を起こしているし、企業もこのようなニーズをビジネスチャンスとばかりに【子ども一時預かりや相談受付開始・ローソンが子育て応援店舗で新サービスを提供】など、新サービスの提供を模索している。
例えば企業なら「助成制度など負担がかかるだけだ」というマイナス志向に走るのではなく、積極的な制度導入を行なった上でアピールをし、企業イメージの向上に活かすという考え方がある。また、社員のモチベーション・ロイヤリティ・定着率向上にもつながる。自治体や政府も補助金制度や奨励・表彰制度を積極的に設けるべきで、実現すればさらに企業の制度導入を容易にするだろう。
子どもの育児問題は子どもや就業主婦自身だけの問題ではない。周辺地域や就業先企業、もっとおおざっぱ・大げさに表現すれば、地域や地方自治体、国レベルで考える必要性を持っている。「子は国の宝」という言葉が単なる宣伝文句やハリボテ的な言い回しではなく、一人一人すべての人にとって自分自身にも関わってくる問題として、真剣に考えねばならない時が来ているのかもしれない。
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