がんの致死率、日本はやや低め・ただし喫煙率と密接な関係あり
2007年11月19日 06:30
経済協力開発機構(OECD)は11月13日、加盟している国それぞれの医療実態を調べた【Health at a Glance 2007(図表で見る医療・2007年版)】を公開した。それによると日本はOECD加盟国内において「がんによる致死率」は低めの部類に入ることが明らかになった。また、各国において喫煙率と肺がんによる致死率には密接な関係があることもデータから判明した。
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OECDとは冷戦時代主に西側諸国によって構成された、経済活性化のための組織。冷戦終結後には東側諸国や新興工業国も加わり、現在では先進諸国を中心に35か国が加盟している(【参照:外務省内OECD説明ファイル、PDF】)。
今回発表された「図表で見る医療・2007年版」ではさまざまな観点から加盟諸国の医療・健康における実態が図表で明らかにされている。今回はがんによる致死率について焦点をあててみることにする。
●がんの致死率は男性が女性の2倍前後
次のグラフはOECD加盟国における人口10万人あたりのがんによる致死率。
国別人口10万人あたりのがんによる致死率
見方で注意してほしいのは、男女別で棒グラフが重なっていること。濃い赤は女性、ピンクは男性だが、例えば日本の場合208人が男性で99人が女性となる。「全体が208人でそのうち女性が99人、残りが男性」ではない。すべての国でピンク色の棒グラフが長いことから、男性の方が値が高いことが分かる。
また、国別傾向を見るとデンマークをのぞいた北欧諸国やスイス、そして日本で低く、スロバキアやポーランドで高いこと、デンマークでは特に男女の差異無く高めであることが分かる。この違いは各国の喫煙事情やがんに対する早期検診治療、効果的な治療体制の整備の度合が大きく作用していると思われる。
●肺がんはがんの要。喫煙率とも密接な関係
各種のがんの中でも「肺がん」はもっとも多いがんの種類(男女を問わず)として数え上げられている。そして「肺がん」と密接な関係があるのが「たばこの喫煙」。
国別人口10万人あたりの肺がんによる致死率
がんによる致死率も高い
肺がんによる率が高い国(グラフでは下の方に列挙されている国)には東欧諸国、オランダやギリシア、韓国などが挙げられるが、これらの国では伝統的に喫煙率が高い(たばこ消費量が多い)国でも知られている(たばこの消費量は【別項目】で語られている)。逆にたばこの消費量がもっとも少ないスウェーデンでは、肺がんによる率も低い結果が出ている。
このデータからだけでは因果関係は実証できないが、少なくとも深い相関関係が「たばこ喫煙」と「がん、特に肺がん(による致死)率の高さ」が国を問わずに存在することは確かなようだ。
レポートでは他にも男性特有の前立腺がん、女性特有の乳がんについてもデータを提示しているが、全体的にがんによる致死率は1980年以降ほとんどのOECD加盟国において減少しつつあると評価している。
しかしながら他の原因、例えば心臓疾患などと比べると減少率が穏やかなため、結果としてがんが他の病気と比べて致死率が高くなってしまっているとも説明している。残念なことに、ギリシア・ハンガリー・ポーランド・スペインの4か国は1980年から2004年の間に、ガンによる致死率が増加している(その原因については語られていない)。
日本:発症してからの医療体制の整備で
致死率が低い
北欧諸国においてがんの致死率が低いのは、別項目で詳しく語られているが一言でまとめると「がんをはじめとする医療体制が整っていて、早期発見ができるシステムが構築されている」からである。例えば【50歳から69歳における2005年での乳がん検査率のグラフ】を見ればお分かりの通り、ノルウェーでは98%、フィンランドで87.7%、スウェーデンでも83.6%の女性が検査を受けている。OECD平均では54.7%、日本は最下位の4.1%に過ぎない。北欧諸国が「福祉国家」と呼ばれるだけのことをこなしているデータの一例といえよう。
一方日本では治療体制そのものが進んでいるためか、「5年間の生存率」はもっとも高い水準にある(【参照グラフ】)。これが日本における「がんによる致死率が低い」理由である。
たばこの消費量と肺がんの関係は別記事でお伝えすることにするが、少なくとも我々日本人にとっては定期的ながん検診を受け、検診率を高めた方がよさそうだ。
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