理研が脳老化の記憶障害に関係するたんぱく質を解明

2007年11月18日 12:00

医学イメージ理化学研究所は11月16日、脳の老化に伴う記憶障害を引き起こす原因となるたんぱく質が、アルツハイマー病の発祥にも関与する「過剰リン酸化タウタンパク質」であることを突き止めたと発表した。このたんぱく質は特定の酵素で通常の状態に戻すことができるため、アルツハイマー病などの治療につながりうるとして期待がもたれている(【発表リリース】)。

スポンサードリンク

アルツハイマー病は老化に伴って脳の一部(嗅内野)に「神経原繊維変化」と呼ばれる過剰リン酸化タウたんぱく質の凝集体が形作られ、これが他の部分にまで広がって発症するもの。症状としては記銘力の低下、記憶の低下、被害妄想、徘徊行為などが挙げられる。

理研ではタウたんぱく質を脳内に蓄積しやすいモデルマウス「タウマウス」を用いて、記憶機能テストを実施。すると普通のマウスと比べて老化に伴った記憶力の低下(記憶テストの成績の悪化)が見られた。対象となる「タウマウス」では神経細胞同士を結びつける構造「シナプス」が減少していることが確認され、またそれが神経細胞数自身の減少によるものでないことも明らかになった。つまりリン酸化したタウたんぱく質が、シナプスの減少を引き起こし、それが記憶力の低下を引き起こしていることを示唆しているという。

要は「歳の経過と共に蓄積して増える過剰リン酸化タウたんぱく質が記憶力の妨げになる(かもしれない)」ということをマウス実験で確かめたということ。肝心なのはこの「過剰リン酸化タウたんぱく質」は、「過剰なリン酸化」状態を防ぐ「リン酸化阻害酵素」を用いることで普通の状態に戻せる点にある。つまり「過剰リン酸化タウたんぱく質が記憶障害、さらにはアルツハイマー病の原因であるのなら、過剰リン酸化タウたんぱく質を抑える酵素を投与すればアルツハイマー病の症状を抑えることができるかもしれない」というもの。

現状ではまだマウス実験の段階で、具体的に「何をどのようにどうやって投与すれば症状が改善されうるのか」は一切判明していない。しかし治療方法のきっかけとなる「過剰リン酸化タウたんぱく質と記憶力の低下」が明らかにされたことで、今後この分野の研究の進展に期待してもよいだろう。

Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...

スポンサードリンク



 


 
(C)JGNN||このサイトについて|サイトマップ|お問い合わせ