最近メガな食品が流行るワケ

2007年11月13日 12:10

メガマックイメージ以前からコンビニ弁当のキャンペーンでも時折行なわれていたが(テレビ番組の「でぶや」とのタイアップなど)、[マクドナルド(2702)] の「メガマック」で火が点いた、食品業界の「メガ食品ブーム」。そのマクドナルドが「メガマック」で業績を大幅に伸ばしたこともあり(【マクドナルド、2007年3月度の月間売り上げを史上最高額達成と発表】)、猫も杓子もメガメガ連呼。メタボだ特定健診だのと肥満傾向への注意が叫ばれる一方で、ある意味真っ向から反対の立場を貫きかねないこれらの「メガ食品」たちが、なぜ流行り、そして企業が注目しているのか。その答えを模索している特集がNHKで放送されていた。よい機会なので「なぜ健康ブームの今、メガ食品が流行るのか」を考えてみたい。

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相次ぎ登場メガ食品。ファミマもメガ弁当を投入へ

まず事例として挙げられていたのが、やはり「メガマック」。すでに2000万食分を売り上げ、概算で「日本人の6人に1人が食べている」ことになる。同様に[ゼンショー(7550)]の牛肉3倍が盛られた牛丼のスペシャルバージョン「メガ牛丼」(【通常の3倍の牛肉! すき家がメガ牛丼販売開始・カロリーなんと1286Kcal】)も、当初の予想の2倍の売り上げをあげているとのこと。

当サイトではほとんど取り上げていないが、カップめんや焼きそばにも相次いで「大盛り」「特盛り」「二倍盛り」の商品が発売されている。機会があればインスタント麺のコーナーに目をむけてみよう。通常サイズの商品の方が少ないかもしれない。

メガハンバーグ弁当
メガハンバーグ弁当

放送内で特にピックアップされたのがコンビニ大手の[ファミリーマート(8028)]。まずは【メガハンバーグ弁当】。画面一杯にその弁当の様子が映し出され、カロリー表記「1184キロカロリー」が字幕で描かれる。「魅惑のハイカロリー」というキャッチコピーが偽り無く聞こえてくる。

コンビニの客層の多数を占める層に受けるのは……

これら「メガ食品」のブームがなぜ起きているのか。それは「売上拡大を狙う企業の販売戦略」にある。具体的には消費を引っ張る若年男性層のニーズにマッチしているのが「ボリュームたっぷりなメガ食品」だったというわけだ。

あっさり弁当イメージファミリーマートでは【高質高単価弁当「匠ごはん」リリース】にもあるように、商品政策軸のひとつである「ジェネレーションマーケティング」の一環として、2003年から40代~50代の社内・取引先の部長・役員を集め、“おやじの、おやじによる、おやじのための”商品開発チーム『おやじプロジェクト』による「チームおやじ」を結成し、商品開発を行なってきた。主に開発されたのは「健康志向のお弁当」。

ところが「チームおやじ」が開発した数々の健康志向弁当(20種類ほど)、中高年だけでなくOLにも好評だったものの、売上を伸ばすことはできなかった。要は「受けは良いけど数がさばけない」。

なぜ売上が伸ばせないのか。それは、コンビニの来場客の半数が20~30代の男性だったからだという。こってり感・ボリュームを求めるこの客層で客の半分が占められている以上、残り半分の中でさらに細分化された層に向けて商品を開発するより、半数(20~30代男性)に向けて開発した方が効率が良いのは当たり前の話。

ちなみに最近のコンビニのほとんどにおいてはレジにPOSシステムが導入され、レジ打ちをする時にお客の属性(見た目の年齢や性別など)が入力される。どの年齢層・性別の人がどんな商品を買ったかがデータとして蓄積され、今後の企業全体の商品開発・展開や個別店舗、地域ごとのマーケティングリサーチ用データとして活用されるわけだ。

「お弁当一つだけじゃ足りない!」

ファミリーマート調べで、面白いデータが提示される。お客のお弁当の買い方だが、7割がお弁当以外に他の食べ物(惣菜など)を足してレジに持っていくのだという。

■弁当の買い方
・お弁当だけ……13%
・お弁当+飲み物……10%
・お弁当+他の食べ物……70%


つまり、お弁当単体では7割の人が「量が足りない」と感じていることになる。

インタビューに答えていたファミリーマート商品本部の山内弘久氏の言によれば、「20~30代の男性を取り込むために『これ一つ食べれば満腹』というお弁当を作りたかった」とのこと。結果として生まれたのが「メガハンバーグ弁当」。

目論見は大いにあたり、メガ弁当シリーズの「メガハンバーグ弁当」は発売直後から売上一位を記録した。これで「メガ」シリーズが客のニーズとハートを捕らえたことを確証したファミリーマートでは、続いて【11月9日のリリースにもあるように】メガの三連星とでもいうべきか「メガペペロンチーノ」「メガチキン南蛮」「メガまん」の相次ぐ投入を決定。基本は「肉」「ジャンキー(インパクトのある)な味」。

メガな食品は若年層以外にも

本来若年層をターゲットにして開発された「メガ弁当」だが、意外にも中高年層にもウケが良いとのこと。メガシリーズを買った人の4人に1人は40~50代なのだという。かの「チームおやじ」スタッフ自身も食べて感想にいわく、「量は多いがたまにはこれくらいはいいのかな」。元々ボリューム感にインパクトがあることや、イベント的に過度の充実感を味わう観点からすれば、つい手にとってしまうのだろう。

先の山内氏によれば「メガ系の食品のニーズは確実にあった。一過性のブームではここまで販売数は伸びない。メガ食品を開発することで、今まで確保できなかった需要を取れたということはプラスオン(上乗せ)の売上につながるのではないか」と喜びの声をあげている。


■メガ食品が流行る理由
・20~30代男性の食欲
・適度な食事量の満足感
・中食による節約志向

要は「世の中に健康志向・健康ブームが存在するのは確かだが、客層の多くを占める20~30代の男性にはむしろ反健康ともいうべき『ボリューム感たっぷり』なものの方がウケが良い」ということに、コンビニやファーストフード店が気が付いたということだろう。

ところが「大盛が大好きなら焼き肉などの食べ放題も今まで以上に人気が出るだろう」と思いきや、実は【9月度の外食産業の売り上げは前年同月比でプラス6.4%・客足、客単価共にプラスへ】にもあるように、中華や焼き肉店の売上は落ちる一方。「大盛で食べたい」という単純な考え方だけではなさそうだ。

思い返してみれば「食べ放題」の店での食事は食欲的な満足感は得られるものの、金銭的なお得感があるかといえば多少疑わしいところがある。腹いっぱい食べても支払う金額は通常の食事一食分の数倍に達してしまうこともしばしば。他方、ファーストフードやコンビニのお弁当ならば、食べ切りで通常の食事の額プラスα程度の出費で済む。お得感も大きい。また、量の調整もつきやすい(1人前では少々物足りないからといって、毎日お昼に焼き肉食べ放題の店に行く人は、おそらくいるまい)。

メガ食品のブームの背景には、「食品の消費を引っ張る20~30代の男性の『通常サイズよりたくさん食べたい』というニーズ」に加え、「たくさん食べたいけど無駄使いはしたくない」という消費者の賢さを起因としているに違いない。

そしてさらに理由を加えるならば、食事における節約モードの一つ「中食」のブームがプラスするというところだろうか。

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