日本人は『セカンドライフ』にテーマパークのような「体験」を求めている

2007年11月10日 12:00

『セカンドライフ』イメージ野村総合研究所は11月9日、多人数同時参加型ネッワークコミュニケーションツール【セカンドライフ(Second Life)】の利用状態についてアメリカと日本で行なった調査結果を発表した。それによると日米の間で『セカンドライフ』に求めるものや利用スタイルに違いがあることが明らかになった。日本においては「体験を重視する」傾向があるという(【発表リリース】)。

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今調査はアメリカでは10月11日から15日、日本では9月11日から12日、インターネット経由で『セカンドライフ』の利用者に対して行なわれたもので、回答者数はアメリカが317人・日本が1000人。調査対象の年齢や男女比など詳細については公開されていない。なお日本の「1000人」については事前に10万人ほどに対して『セカンドライフ』の利用経験などに関する調査を行い、「利用している・したことがある」と回答した2.4%の中から選ばれている。

実際に『セカンドライフ』を利用した感想は賛否両論

まずは「実際に『セカンドライフ』を利用してみた感想」(日本人に対して)。「今後も継続して利用したい」と答えた人は27.1%に留まった。リピーター率は3割に満たないことになる。斬新的なオンラインゲームとしてこの割合が多いか少ないかは微妙なところだ。

実際に『セカンドライフ』を利用した感想。
実際に『セカンドライフ』を利用した感想。

「面白い」と答えた人は全体の半数、「面白くない」は3割強、「微妙」が2割弱という結果となっている。ただ、「面白い」と答えた人の約半数しか実際のリピーターにつながっていないのは気になるところ。それなりに『セカンドライフ』に魅力を感じてはいるが、そのインパクトが弱いこと、あるいは継続的に利用するほどハードルは低くないと思われたということだろうか。

アメリカは積極的な活用、日本は「体験」を求める

続いて日米双方に『セカンドライフ』を利用してみて感じた魅力についてたずねて見た。すると、日米双方における「求めている」ものの違いが明確に映し出される結果となった。

『セカンドライフ』を利用した上で感じた魅力
『セカンドライフ』を利用した上で感じた魅力

アメリカでは「自分のアバターを作って着飾る」「テキストチャットを楽しむ」「モノ(オブジェクトやスクリプト)を作る」ことにとりわけ魅力を感じているのに対し、日本では「企業の島や建物を見る」「自分のアバターを作って着飾る」「イベントやテーマパークなどで遊ぶ」などが上がっている。

アメリカでは「能動的」「利用者」
日本では「受動的」「見学者」

これらのことからアメリカでは『セカンドライフ』を「創造や所有、コミュニケーションなどの場」として活用しているのに対し、日本では「既存の状況で得られる体験に魅力を感じている」ことが分かる。言い換えれば、「アメリカでは能動的な、日本では受動的な使い方」となる。もっと分かりやすく例えると「アメリカでは利用者、日本では見学者の立場で『セカンドライフ』を楽しんでいる」ということになるのだろう。

リリースでは言及されていないが、アメリカと比べて日本が各項目において「魅力を感じる」割合が半分前後しかないのも気になるところ。『セカンドライフ』の特徴となる各ポイント、さらには『セカンドライフ』そのものの魅力が日本人の回答者には今ひとつピンと来ず、結果として「面白くなかった派」+「どちらともいえない派」の半数ほどの意見につながったのだろう。

ただし、日本人において各項目の最高賛同割合が4割にも達していないのに、先にもあるように「面白い、と感じた人が約半数いた」という結果が出ていることから、今調査項目以外に「日本人が『セカンドライフ』を面白いと思うポイント」がある可能性も否定できない。

やはり日本人は『セカンドライフ』に慣れていない、のか?

最後に日本人プレイヤーで『セカンドライフ』を面白いと回答した人に対し、どのポイントでそのように思ったか、「企業の土地や建物など『受動型・提供型』コンテンツの観点」でたずねてみた。するとやはり「自分で何かをする」のではなく「何か学べる、経験を得られるものがそこにある」から面白いとする回答がほとんどだった。

『セカンドライフ』が面白いと思った理由
『セカンドライフ』が面白いと思った理由

上位を占めていた選択肢は「役に立つ情報があるから」「人が多く、にぎわっているから」「楽しい仕掛けがある」。雰囲気を楽しんだりゲーム内のシステムを経験するのではなく、そこで何か新しい情報や経験を得ることを、もっと端的にまとめれば「情報や経験を得たい、提供して欲しい」という日本人プレイヤーのニーズがうかがえる。


本家アメリカでも一時期の熱狂ぶりが醒めて沈静化しつつある『セカンドライフ』熱だが、日本ではあれだけ事前に騒がれたにも関わらず、一般への浸透率はかんばしくない。ビジュアル的に日本人向けでないことや利用準備のハードルの高さなど、システム構造上の問題もある。今回の調査からは「日本人が『セカンドライフ』に求めているもの」が十分に用意されていないことが容易に想像できる。

日米の「感じた魅力」を比較すると、アメリカでは『セカンドライフ』を、誰もが自由に材料・道具を使って好きなものが作れる日曜大工コーナーのように考えているのに対し、日本では色々なイベントやアトラクションで楽しませてくれるテーマパークのように考えている節がある。いざ実際にアクセスしてみると、アトラクションの中身が企業の宣伝ばかりでは、興ざめしてしまってリピート率が高くならないのも合点がいく。

日本人の定着率や普及率を高めるには、アメリカのユーザーのように「創造性の観点からの楽しさ」を啓蒙するのも一つの手。しかし日本のプレイヤー全体のプレイ性向から考えると、不特定多数にそれを求めるのは難しい。もし『セカンドライフ』を普及させたいと思うのなら、普及させたい側が「魅力ある体験ができる」場を積極的に提供し、魅力を盛り上げる必要があるに違いない。

それが出来なければ「『セカンドライフ』は素晴らしいサービスだが、日本人のニーズにはマッチしませんでした」ということになるのだろう。

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