防衛省の「ガンダム」を見てきました

2007年11月07日 14:15

「ガンダム」こと「先進個人装備システム」イメージ防衛省が開催する「平成19年度研究発表会~防衛技術シンポジウム2007~」において、展示品目中に「陸上装備」カテゴリーとして「ガンダムの実現に向けて(先進個人装備システム)」という表記が行なわれていたのはすでに【防衛省技術研究本部、陸上装備として「ガンダム」の実現を模索】でお伝えした通り。同記事の読者からの反響が大きかったこともあり、早速実業のお仕事ではお休みをいただいて、東京新宿のホテルグランド市ヶ谷まで取材を敢行した。まずは話題の自称「ガンダム」について。

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おさらいをしておくと、「平成19年度研究発表会~防衛技術シンポジウム2007~」とは防衛省が現在開発している数々の兵装や技術に関するお披露目の場。一般公開の展示品のブース以外に、各種講演会も開催されている。今回話題になったのは、展示セッションにおける陸上装備項目中に「ガンダムの実現に向けて」という言葉が踊っていたため。

展示セッション部分に「ガンダムの実現に向けて」の表記(赤丸は当方で追加)
展示セッション部分に「ガンダムの実現に向けて」の表記(赤丸は当方で追加)

一時は「日本でも人型戦闘兵器の本格開発を始めたのか」と大騒ぎになったが、実際には『毎日新聞などで報じられているように』『機動戦士ガンダム』では、登場人物が人型の戦闘用ロボット(モビルスーツ)に入って戦ったことから『わかりやすい』と、紹介資料に『ガンダム』と記載した」とのこと。大きさから考えれば「ガンダム」というよりボトムズかパトレイバー、あるいはSF-3Dあたりのパワードスーツの方が適切な気もするのだが、以前の記事で指摘したように「一般の認知度」という観点ではやはり「ガンダム」なのだろう。

さてその陸上自衛隊(陸自)の「ガンダム」こと「先進個人装備システム」だが、略称をASCS(Advanced Soldier Combat System)と呼び、HMDや身体装着型コンピュータなどの電子・情報器材と防弾装具などを統合化。各種戦場情報を隊員や指揮所において視覚的に共有することで、隊員の戦闘能力を飛躍的に向上することができるというシロモノ。

「ガンダム地上に立つ」……ではなく「先進個人装備システム市ヶ谷に立つ」
「ガンダム地上に立つ」……ではなく「先進個人装備システム市ヶ谷に立つ」

展示場ではマネキンに装備させたシステムが2セット、隊員が装備しているものが1セット、インターバルを置いて会場の人に実際に装着させてその着心地を確かめるものが1セット用意されていた。隊員が装備しているものは実際にエアガンに照準機などを備え付けさせて、射撃の実際などのデモンストレーションを実施。装備した隊員がどのように銃を構えて撃つのか、またモニタ上に映し出されているのかを実践していた。

しゃがんだ姿勢で構える「先進個人装備」を装備する隊員。右側に転がっているのは「携帯型ロボット」(後述)
しゃがんだ姿勢で構える「先進個人装備」を装備する隊員。右側に転がっているのは「携帯型ロボット」(後述)
「視界機能を拡張するシステム」版を用いて、このように情報が確認できるという事例。モニタにカメラ越しの視界を映し出していた。赤外線による視界分析が可能とのこと。
「視界機能を拡張するシステム」版を用いて、このように情報が確認できるという事例。モニタにカメラ越しの視界を映し出していた。赤外線による視界分析が可能とのこと。

「マネキンに2セット」とあるが実はこの2セット、微妙に異なる別々の装備が展示されていた。一方は赤外線などを用いて肉眼では見えにくい状況下でも容易に視界を確認できるシステム用のカメラなど。こちらは隊員が実際にデモにも用いており、会場の人も装備することが出来たタイプ。もう一方はとりわけ「次世代近接戦闘情報共有システム」という名前で、市街戦などにおいて多数の隊員間での同時伝送が可能なものを装備していた。

左側が「次世代近接戦闘情報共有システム」、右側が「視界機能を拡張するシステム」の頭部。微妙にカメラが違うのがお分かりいただけるだろうか。
左側が「次世代近接戦闘情報共有システム」、右側が「視界機能を拡張するシステム」の頭部。微妙にカメラが違うのがお分かりいただけるだろうか。

同席していた技官の話によると、現在この「視界機能を拡張するシステム」と「情報を共有するシステム」は別々に開発を進めており、必然的に出来上がってくるものも別々のものになっているという。しかし将来的にはこれらを統合して一つの装備にし、最終的な「ガンダム」こと「先進個人装備システム」にする計画があるとのこと。

先の毎日新聞の記事にもあるように、昨年度の展示会でも公開されたもので、突然降って沸いたものではないようだ。つまり長年の研究の過程にある装備であるが、たまたま今回「ガンダム」という名前で分かりやすく解説したため、大きく話題となっただけの話。俗っぽく表現すると「釣られた」ということになるのだろうか(笑)。

1セットは会場のお客さんが試しに装備することも出来た。写真ではFテレビのスタッフがつけていた様子。多少きつかったようで「苦しい」ともがいていた。
1セットは会場のお客さんが試しに装備することも出来た。写真ではFテレビのスタッフがつけていた様子。多少きつかったようで「苦しい」ともがいていた。
デモンストレーション用に装備している隊員(左)と一般客が装備した(右)様子。近未来の陸自はこのような装備をすることになるのだろうか。
デモンストレーション用に装備している隊員(左)と一般客が装備した(右)様子。近未来の陸自はこのような装備をすることになるのだろうか。
「視界機能を拡張するシステム」向けの小銃につけるカメラ・アタッチメント。照準機より大きい、かな。
「視界機能を拡張するシステム」向けの小銃につけるカメラ・アタッチメント。照準機より大きい、かな。

せめてデモ用の「先進個人装備システム」を白と赤と青でカラーリングしてくれれば多少は「分かってくれている」と思えたのだが、さすがにそれを求めるのは難しいようだ。

なお今回取材におもむいた「展示セッション」では「先進個人装備システム」だけでなく、先の「ファンネル」みたいだといわれている「弾道ミサイル防衛用誘導弾主要構成要素(DACS:Divert and Attitude Control System)など各種新装備・研究中の装備も展示されていた。一通り写真などを撮影し、取材をしてあるのでこれらは追って紹介することにしよう。

※追加


リクエストがあったので一点追加。「ガンダム」のデモ隊員が携帯していた銃

リクエストがあったので一点追加。「ガンダム」のデモ隊員が携帯していた銃


(最終更新:2013/08/29)

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