食生活のかたよりがもたらす現実!? 子どもも大人も肥満傾向強まる

2007年11月04日 12:00

肥満イメージ政府は10月30日の閣議で2007年度版の「食育白書」を決定した。2005年に志向された食育基本法に基づく白書で、今年で2回目となる。食べ物や栄養など「食」に関する総合的な知識を身につけることを目的とする「食育」に関する白書だが、それによると小学高学年から中学生と、中堅層以上の男性で肥満傾向が強まっていることが明らかになった(【発表リリースページ】)。

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子どもは男女共に中学生から肥満傾向が強まる・大人は30歳代で謎の傾向

1986年(昭和61年)以降5年単位で、6歳から14歳までの子どもの肥満比率(平均体重20%以上)を表したのが次のグラフ。

肥満の子どもの年次推移
肥満の子どもの年次推移

男女とも横軸は同じ%なので、全体的に男子より女子の方がやせ気味なのは一目で分かるだろう。それと共に、ここ10年の間に男女とも、小学校高学年から中学生(12~14歳)において肥満傾向が強まっているのが分かる。

「男性より女性がやせ気味」なのは成人でも同じで、20歳以上の2001年以降5年間に渡る各年齢層毎の「肥満者」の割合を表すと、やはり男性の方が割合が大きいのが分かる。

20歳以上の肥満者の割合
20歳以上の肥満者の割合

成人の場合は子どもと比べると多少傾向が複雑で、

■男性
・40歳以上で緩やかに肥満層が増えている
・30歳代の肥満減少率が著しい

■女性
・肥満率は横ばいかやや減少
・30代の肥満増加率が著しい


などの傾向が見て取れる。白書では具体的な説明が行なわれていないが、男女とも他の年齢層との違いが見られるのは「30歳代」であることは注目せざるを得ない。たまたま計測上の誤差にしては、偶然に過ぎるというものだ。何らかのつながりがあるに違いない。

先の「労働経済白書」にあるように、板ばさみにあって仕事量とストレスが過度に増加している男性30歳代が疲れから体重を減らしているというのは想像がつくのだが、女性の30歳代で肥満率が増える理由が分からない。もう少しデータの推移を見れば、傾向がはっきりするのかもしれない。

特に女性においては(ここではグラフを掲載しないが)謎の30歳代では「やせている率」も急上昇している。要は両極端化しているということだ。男性の肥満減少率の推定原因と無理やりこじつけると「疲れている独身女性は男性同様に体重を減らし、疲れている既婚(で専業)主婦は少しでも食事で主人をサポートしようと料理に腕を振るうので体重を増やしてしまう」ということになるのだろうか。年齢層別以外にそれぞれの回答者属性が分かれば、このあたりの謎も解けそうなのだが。

男性の二人に一人はメタボ属性・生活習慣病やメタボは増加中

体重・肥満絡みで欠かせない、生活習慣病やメタボリックシンドローム(メタボリック症候群)に関するデータも白書では掲載されている。それによると、1997年と2002年では糖尿病+その疑いがある人の合計は18%も増加している。

糖尿病患者数の推移(推定値)
糖尿病患者数の推移(推定値)

計測されたデータはあくまでも「糖尿病患者・糖尿病の可能性高し」「可能性あり」の人数であり、生活習慣の怠惰によって糖尿病へ傾いた人以外の患者・可能性のある人も含まれる。一概に「生活習慣、特に食生活の変化で糖尿病が増加した」とは断言できないが、5年間のうちに他の要因で増加した理由が見つからない以上、「増加分は」やはりとりわけ食生活の問題に起因する結果と推定できよう。

メタボリック症候群についてはその判定計算方法について異論が出されており、現状の基準で計測してよいのかどうか疑問視する向きもあるが、ここではとりあえず国の基準値による計測値での調査結果を掲載してみる。

20歳以上のメタボリック症候群の状況
20歳以上のメタボリック症候群の状況

2004年と2005年における変移は法則的なものは特になく、あえて言えば「女性は40歳代以外のすべての年齢層でメタボ傾向が強まっている」ということくらいだろう。それよりも「全般で男性は半数近く、女性は2割がメタボ候補・予備群」「男性は40歳代以降は過半数がメタボ属性(候補+予備群)」という現実の方がインパクトが強い。


白書では具体的な活動の事例を挙げた上で「近年、不適切な食生活や運動不足による成人の肥満者の割合が増加しているが、肥満を予防するためには子どもの頃から健康な生活習慣の重要性に対する関心と理解を深め、健全な食生活や運動習慣を身につけることが重要である」とし、子どものうちから「食育」を積極的に行なうことで健全な食生活習慣を身につけさせ、肥満傾向にある状況から脱するよう促している。

また増加する外食の割合が増加していることに対しては、各企業に「健康に配慮したメニュー」の提供や栄養成分表示を推進し、外食の面でも栄養分などに注意ができるような環境作りを進めている。

白書に提示したデータを見る限りでは、「食育」は子どもに限った話ではなく、家族全員に必要なことのようだ。家族で互いに協力しあい、推し進めていくのがよさそうである。

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