本屋は「その場で手に入る」ネット通販は「検索で便利」~ネットと実店舗で異なる「本屋」の便利さ

2007年11月03日 12:00

書籍イメージ【エルゴ・ブレインズ(4309)】は11月1日、書籍に関する調査結果を発表した。それによると、実店舗の本屋での購入動機とインターネット上の通販を利用した購入動機とでは、その理由が大きく異なることが明らかになった(【発表リリース、PDF】)。

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今調査は10月24日から10月29日にネット経由で行われ、サンプル数は1613人。男女比は4対6。年齢構成比は30代がもっとも多く32.9%、次いで20代の30.8%、40代の18.9%など。サンプル数は十分だが、インターネット経由による調査なので「ネットをほとんど使わない(≒ネット通販を利用しない)本好きな層」の意見が反映されていないことを念頭においてデータを見る必要がある。

今調査では先の【本屋はやはり重要です~79%が書店での書籍購入頻度は「月に1回以上」】にもあるように実店舗の本屋の必要性が依然として高いことや、インターネット通販を利用した「ネット上の本屋」では一回あたりの購入金額が高いなどのデータが明らかにされている。今回は実店舗の本屋とネット通販における「購入理由」をよく見てみることにする。

実店舗は「衝動買い」、ネット通販は「便利」「ものぐさでもOK」がメリット

実店舗の書店で本を購入する理由についてたずねたところ、「その場で手に入るから」と答えた人がもっとも多く86.7%を占めている。いわゆる「衝動買い」が出来、その場で続きを読めるのが最大のメリットということになる。

実店舗の書店で本を購入する理由
実店舗の書店で本を購入する理由

第三位の理由の「送料が要らない」は言葉通り「現金な」回答だが、トップの「その場で手に入るから」第二位「実際に読んでみないと不安だから」は「本・書籍の特性」を反映した結果といえる。

文字さえ読めれば誰でも利用でき、ちょっとした時間でも堪能ができるというきわめてハードルが低い「読書」によって、人は自分のさまざまな欲求を満たすことができる。「今すぐに」という衝動的欲求を充足するには、言い換えれば「今その場で続きを読みたい!」「これからちょっと時間が取れるからその時に読み進めたい」という思いを満たすには「本・書籍」は「三日後に届きます」ではなく「今この場で」手に入らねばならないわけだ。

一方インターネット通販で本を購入する理由については、「検索が便利だから」がトップの66.0%。次いで「郵送してもらえるから」「時間の節約になるから」が上位を占めた。

インターネット通販で本を購入する理由
インターネット通販で本を購入する理由

大きな本屋になれば検索用端末を使うこともできるが、データの更新があいまいだったり検索できても場所が分からない場合が多い。操作方法が複雑で素人には使いにくいこともある。店員さんもなかなか見つからないし、声をかけるのが苦手という人も多いだろう。ネット通販でなら、探したい本も検索一発で見つけられるし、わざわざ本屋まで足を運ばなくとも郵送してもらえる。

「検索が便利だから」は「古本もすぐに見つかるから」と共通する意見といえ、「時間の節約になるから」は「郵送してもらえるから」「書店にいくのが面倒だから」とほぼ同じようなニュアンスといえる。実店舗派は「本屋にいくのが楽しいんじゃないか」「探すのが面白い」と反論もあるだろうが、物事に対する感想は人それぞれなので、こればかりは仕方が無い。

実店舗派とネット通販派の上層意見をまとめると次のようになる。これらはそれぞれの「本屋」の長所ともいえるだろう。

「ネット通販」は弱点を克服しつつある。では「実店舗」は?

両派の「長所」を一見すると、互いに相反する事柄のように見える。ネット通販では立ち読みはできない(できなかった)し、送料無料は難しい。すぐに手に入ることもままならない。一方実店舗では自宅で本をチェックするのは不可能。

■実店舗派
・その場で手に入る
・実際に読んでみないと不安
・送料が要らない
・衝動買いの想いをすぐに充足できる
■ネット通販派
・検索が便利
・時間の節約、面倒が無い

ところが最近では、「ネット通販派」は「実店舗派」の長所を取り組もうと努力を続け、その一部を成果として表しつつある。例えば「その場で手に入る」についてはデータ化したPDFファイルなどをオンライン販売する形態を提供したり、アマゾンジャンパンでは『お急ぎ便』として通常より早く(関東地域ならば場合によっては注文当日中に)配送するサービスを提供している。

「送料が要らない」についても先のアマゾンジャパンなら一定金額以上でまとめ買いすれば送料が無料になるし、一年間一定額を先払いすれば上記「お急ぎ便」が何度でも無料で使える『アマゾンプライム』制度も用意された。「実際に読んでみないと不安」など立ち読みが出来ない不安感の解消のため、アマゾンジャパンなどでは取り扱い書籍の一部をダイジェスト的に閲覧できるサービスを始めているし、書籍の立ち読みそのものをネット上で行なえるサービスも各出版社などから登場している。

これらのサービスの登場などからも分かるように、少なくとも「ネット通販派」は「実店舗派」を取り込もうと、さまざまなサービスの充実を図っているのが分かる。

一方「実店舗派」はといえば企業サイズの問題もあり大きなアクションを取れない理由から、自分の長所を伸ばし、弱点(逆に考えれば「ネット通販派」の長所)をなかなか克服できないでいる。「実店舗派」が「ネット通販派」の特徴を取り込むのは費用、アイディアなどさまざまな面で困難極まりないが、今後「ネット通販派」の攻勢の中で生き残るには、何らかの手立てが必要なのには違いない。

あるいはもうひとつ、「実店舗派」が躍進する方法があるとすれば、「短所を克服する」のではなく「長所をさらに伸ばす」ことだろう。例えば一部店舗で行なわれているように、ビル一つ丸ごと本屋にし、さまざまなイベントも開催し「書籍の遊園地」のような場を提供する。書籍を購入するという本来の目的だけでなく、その場・その空間にいること自身を「楽しい」と思わせる。そしてその「楽しさ」の中で「この本が欲しい」という「衝動買い」の想いを新たに起こさせ、本を手に取らせるというものだ。

大手企業にしか出来ない「業(わざ)」ではあるが、実店舗の本屋が生き残りを模索する中で生み出された、有効な方法の一つといえよう。

……あとは例えば、アマゾンジャパンの在庫データと実店舗の在庫データを完全にリンクさせた「検索案内サイト(端末)」を店内に常駐させ、お客にはこの端末で検索してもらい、「店舗内にあればその場ですぐに購入」「なければアマゾンジャパン経由で購入(してもらう・店舗側が手続きを取る)」という仕組みを提供する、とかいう発想もアリだろう。これなら実店舗のメリットを活かしつつ、弱点を「ネット通販」にカバーしてもらうことができると思うのだが、どうだろうか(「本屋で注文」は考慮外になってしまうが)。


(最終更新:2013/09/08)

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